誰も知らないドイツの町 Unbekannte deutsche Städte(63):★★★ノイツェレ Neuzelle -2-

★★★ノイツェレ Neuzelle -1- からの続きです

最終コーナーを左に曲がると、池(Klosterteich)が見え、左手奥にテレジエンイエローに塗られた修道院が見えますが、その手前左手に煉瓦造りのビール醸造所が見えます。

Klosterbrauerei Neuzelle そうそう、このレストランもそのままだ!

独語 Wikipediaによれば「ノイツェレにある醸造所である。そのルーツは 1589年に設立されたノイツェレ修道院の醸造所に遡る。主にシュヴァルツブロイ「シュヴァルツァー・アプト(Schwarzer Abt)」、ポーター、フルーツビールなどの下面発酵の特産品を生産している。

従業員46名(2019年)で、毎年約4万ヘクトリットルのビールを生産し、そのうち約5%が輸出されている。株主はヘルムート・フリッチェで、シュテファン・フリッチェとともに事業を経営している」とあります。

その歴史は 1416年に遡る。修道院の記録によると、農民は農民利子として年に 7 Mass(ホップを計る単位)のホップを修道院に支払わなければならなかった。これは、この早い時期にノイツェレでホップを使ったビールが醸造されていた証拠である。しかし、ノイツェレの修道士たちが商業的にビールを醸造することを認められたのは、1589年、皇帝ルドルフ 2世が彼らのビールを周辺地域で販売することを許可してからである。修道院と醸造所は 1817年に世俗化(Säkularisation(狭義には)ナポレオン時代に教会の財産(土地や資産)を国家が没収または使用することを指す)された。醸造所は 1892年の大火災で全焼し、1902年に再建された。

生臭坊主のドヤ顔がカワイイ(笑)

修道院の醸造所は 1948年に社会主義政権下で収用され、公有に移された。1968年、社名をノイツェレ醸造所(Brauerei Neuzelle)に変更。再統一後、醸造所は元の名前に戻され、1992年にKlosterbrauerei Neuzelle GmbHとして再び民営化された。

これは 1992年にここに来た際にレストランの売店で、当時そこで販売されていたビールを一種類ずつ買ってきた時のラベルです。共通の文言として「EO TEMPORE 1589」とあることから、修道士たちが神聖ローマ皇帝ルドルフ 2世によって商業生産を許された年を記念しているのでしょう。…himmlisch gutは「天にも昇る酔い心地」と言ったところでしょうか(笑)

左から「Pils」「Bock」、三番目は「Die unfiltrierte Bierrarität, natürich trüb(無濾過・薄濁りの希少なビール・・・今時は自然志向で結構流行りですが、40年前のこの頃は珍しかったのでしょうか?)」・・・

そして一番右のが主要な産品の「Schwarzer Abt(黒い修道院長)」という黒ビールのようですね。なんかブラックな生臭坊主をイメージさせますな(笑)

おや?しかし・・・左から3つまでは「Gebraut nach dem deutschen Reinheitsgebot von 1516(1516年のドイツビール純粋醸造令に則って醸造された)」とありますが、黒坊主には「Die Rarität aus Schwarzbier mit nachträglichem Invertzuckersirupzusatz(黒ビールに転化糖シロップを加えた希少品)なんて書いてあります!えっ?それって・・・ドイツビール純粋令に準拠していないってこと?他の3つは逆にそれを謳っているのに?

「その翌年(1993年)、下面発酵ビールに砂糖を加えるのは純粋令に反するとして、”Der schwarze Abt”(黒い修道院長)という製品をめぐって法的論争が起こった。糖分を含む “Der schwarze Abt “のレシピは、ブランデンブルク・ビール戦争を引き起こし、この黒ビールが広く知られるきっかけとなった。ブランデンブルク州政府と醸造所との間で、ビールという名称の許容性をめぐって争われた法的紛争は、13年にわたる訴訟の末、連邦行政裁判所によって醸造所側に有利な判決が下された」(独語 Wikipedia)とのことです。ほらほらぁ、でしょ?問題になるよね?でも、これで知名度を一気に上げたって・・・流石「黒坊主」やな(笑)

もう、一段掘り下げます。「ブランデンブルク・ビール戦争 Brandenburger Bierkrieg」って何さ?

ノイツェレ修道院の醸造所とブランデンブルク州政府との間で長く続いた法的紛争は、ブランデンブルク・ビール戦争として知られるようになった。争いの対象となったのは、伝統的に糖分(最大2%の転化糖シロップ)を添加して醸造され、したがってドイツ純粋令に違反する黒ビール「シュヴァルツァー・アプト」が、ドイツ国内で「ビール」として販売できるかどうかという問題だった。

1980年代の欧州司法裁判所の判決によれば、外国の醸造所も、純度法を遵守していない場合、すなわち麦芽、ホップ、酵母、水に加えて他の原料を含む場合は、「ビール」としてドイツで販売することができる。ただし、ドイツ国内で醸造されたビールについては、特別許可によって(定義されていない)「特別なビール」と認められない限り、この限りではない。このビール法が 1993年に新連邦州(旧東独のこと)でも施行された後、ノイツェル修道院の醸造所はそれに対応する申請書を提出したが、黒ビールに添加されたのは砂糖だけで、香辛料などは添加されていなかったため、却下された。

醸造所はこの判決を受け入れる用意がなく、一連の法的手続きが始まった。シュヴァルツァー・アプト」の表示から一時的に「ビール」という言葉が削除された後、醸造所は 2003年から再び「シュヴァルツビア」と表示するようになった。ライプツィヒの連邦行政裁判所への控訴を経て、2005年初めに最終審の判決が下され、ノイツェレ修道院の醸造所を支持する判決が下された。担当判事のハンス・ヨアヒム・ドリーハウスは、「シュヴァルツァー・アプトは特別なビールである。醸造され、”ビール “の名で販売されてもよい。引き続きご愛飲ください」(独語 Wikipedia)

もうひとつ、こちらのサイトには更にちょっと面白い情報もあります

ブランデンブルク・ビール戦争

この見出しは非常に危険なものに聞こえるが、そうではない。2015年に発売425周年を迎えたビールの話である。長年にわたって人気のあるビールとして君臨してきたが、1990年代に官僚主義の矢面に立たされた。

ブランデンブルク・ビール戦争は大まかに次のように説明できる: いわゆるドイツ純粋法が1987年にEUによって覆された後、ドイツのビール会社は、1516年から存在し、したがって世界で最も古い食品規制であるこの純粋法に従って醸造を続けることを誓約した。当時、ドイツのビールメーカーは風味を向上させるために、あらゆるものをビールに投入していたため、このような規制が必要になった。健康に有害な物質でさえも使用された。毒物さえも惜しまなかった。実に不名誉な章である。しかし、今日に至るまで、水、ホップ、大麦麦芽、酵母の 4つの原料しか使われていないと考える人が大多数である(え?そうだったの?

しかし、ドイツのビール法では、この規制は下面発酵ビール(ピルスナービールのように 9℃以下で醸造されるビール)にしか適用されない。上面発酵ビール(9℃以上で醸造される小麦ビール、アルト、シュヴァルツビエールやケルシュなど)には、大麦麦芽に加えて、小麦麦芽、でんぷん糖、転化糖、糖類で製造できるすべての着色料も使用できる(え?そうだったの?

問題となったのは、まさにこの転化糖であった。使用量が多すぎるという理由で、シュヴァルツァー・アプトはビールを名乗ることを許されなくなったのだ。法廷闘争は何年も続いたが、ライプツィヒの連邦行政裁判所が 13年に及ぶ訴訟の末、ついに終結した。

Von © 1971markus@wikipedia.de, CC BY-SA 4.0, ソースはこちら

シュヴァルツァー・アプトはビールを名乗ることを許された。これにはローマ法王の祝福もあった!ノイツェレ修道院のビール醸造所が発行する無料の電子書籍で、これ以上のことを読むことができる。

官僚主義の矢面に立たされたノイツェレ修道院(出典:Klosterbrauerei Neuzelle)

最後に、この道標にある「Bierbad」の謎を解いておきます。独語 Wikipediaには「1996年、ランドホテル・クンメロワー・ホーフとともに、ウェルネス・ビールとして販売されている「オリジナル・バーデビア」が誕生した」とあり地元ホテルと提携してビールを入浴剤とするようなアイデアや製品を開発したのだろうと想像されます・

醸造所のサイトでこの商品を検索すると「私たちの入浴ビール(Badebier・・・という名称のビール)はこれまで、刺激的で風味豊かな黒ビールとして主に愛用(飲用)されてきましたが、化粧品ともしてますます発展しているようです。しかも、化粧品分野における真のライフスタイル製品になりつつあるとのことです。入浴剤としてだけでなく、抜け毛対策のヘアケア製品としても。海外からの情報も増えています。ビールは美容製品として長い伝統を持っていますが、私たちでさえこの評判には驚いております」とあります。

誰も知らないような小さな村のビールに、実に奥深い物語があるもんですね!

★★★ノイツェレ Neuzelle -3- に続きます

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