業績そのものは好調と見えます。売上高・営業利益ともここ数年では第2四半期の記録です。まあ、為替が為替なのでこのくらいは当然かもです。
これを受けて年間の見通しも上方修正しています。また更にこれを受けて株式市場もポジティブに反応して株価は一時 10%近く上昇しました。
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キヤノン株が9%超高、営業益予想の上方修正 第1四半期からの「挽回」好感
もう少し詳しく見てみましょう。下のグラフは売上高・営業利益の上方修正をしなかったとしたら「下期に必要となる売上高・営業利益はいくらになるのか?」という数字を単純計算で求め、2通りの視点でグラフ化したものです。
左ふたつは売上高ですが、上方修正をしなければ易々と達成しそうに見えます。一方、右ふたつの営業利益の方はまあこんなものかな・・・という感じで、少なくともグラフで見る限りは特段の上方修正が必要かどうかはわかりません。私ならこれはそのまま据え置いて、次回Q3に改めて考えるところですね。
さて、上ふたつは「上方修正した結果、下期に必要な売上高」を二つの視点で見たものです。まあ、これ自体はさほどの違和感を感じません。そもそも為替を 140円/$、155円/€で見ていたので、それを昨今の実態レートに置き換えるだけでこのくらいはやって当然!くらいに思います。
一方、こちらは「上方修正した結果、下期に必要な営業利益」を二つの視点で見たものです。これ、皆さんにはどう見えますか?ちょっと無理筋に見えはしませんが?まあ、キヤノンが「やる!」と言ってるんだからそれなりの自信はあるのでしょうが・・・これに反応して株価まで上げてしまったんだから「責任は重大」です。
実はキヤノンには「前科」があるのです!
1)2023年度Q2も営業利益を上方修正した。かなり無理ではないかと思われる高い目標に!
2)2023年度Q3になっても営業利益はほぼ無理筋の高い数値で据え置いた!
3)2023年度通年決算では私が予測した通り「大幅な未達」に終わった!
これだけではありません。2022年度も同じように「無理筋に見える営業利益見通し」に対して決算では「結果として」未達になっています。いや・・・違うんではないの?無理筋と分かったいながらで据え置いたんではないの?
1)2022年Q3決算での営業利益見通しは殆ど無理筋に見える
2)2022年度通年決算では「結果として」それに未達
今年度同じことをやったら、もう「結果として」未達になるという話ではなく「確信犯」であろうと思われます。前2回の場合はそれがどこまで株価に影響したのかは分かりませんが、今回は明らかに「一時は 10%近く株価は上昇した」と、株価に影響を与えたのですから責任は重大と思われます。
まだ細かいチェックはしていませんが、同社の決算説明会資料を読むと「下期の為替レートを前回見通しから円安方向に見直すことにより、年間では過去最高となる売上高4兆6,000億円を目指します。利益については、為替の追い風や売上荒利の改善の機をとらえて、事業構造改革を加速させますが、それを加味しても営業利益率10%以上の達成と、4期連続の増収増益を目指していきます」とあります。
また「前提となる年間の為替レートは、足元の相場や金融政策の動向などを総合的に勘案し、1ドル 154円、1ユーロ 165円を想定しています。足元では、為替が円高方向へ推移していますが、当面のドル円の変動については、先物予約でヘッジをしているため、損益への影響は限定的です。もし、それ以降も円高ドル安が続いたとしても、さらなるコストダウンや経費削減によって、為替の影響を極力吸収していきます」と為替の余裕を全部吐き出したということで、その上、勇ましく退路を断っています。
さて第3四半期と通年決算の説明資料にはどんな文言が並ぶのか?ちょっと・・・いや大いに・・・楽しみではあります(笑)