地名の研究 Ortsnamenanalyse (11) 全国分布型

地名の研究 Ortsnamenanalyse (10)からの続きです

定量データを活用して、特徴的な地名suffixの分布を分類しています。ここまで地域的に偏りがある地名を採りあげてきましたが、最後に全国に均等に分布しているように見える地名を纏めます。

全国分布型

これまではなんらか地域に偏りが見られる地名を見てきましたが、最後にドイツ全土に見られる地名をチェックしておきます。ある意味で、これぞ「ドイツらしい」地名と言えるかと思います。

まず -bergですが、数が 418件(全国の地名合計 18,623件の 2.2%、suffixのランクでも 6番目と上位)と多いです。そして上位の3 PLZに集中している割合が 52%とマイルドな数字です。極端な偏りのある地名は上位3 PLZで 100%(3つの PLZにしか存在しない)というのもあるので、52%はあまり特定地域に集中していないという傾向が読み取れます。また各 PLZに含まれる地名の数で補正した乖離値も 1.2と、十分に小さい値です。

そしてカイ二乗値は 42であり、20台以下だと「均一・均等に分布していると言っても差し支えない」という領域に入りますが、そこにあと一息という数字です。

次に -burgですが、数が 230件(全国の地名合計 18,623件の 1.2%、suffixのランクでも 12番目と比較的上位)と -bergの半分程度ですが、上位3 PLZへの集中度は 46%、乖離値は 1.2と低く、カイ二乗値に至っては 34と、それこそ「統計学的に」均等と言い切ってもいいレベルにもう一息というレベルです。これぞ「典型的ドイツ的地名」と言えようかと思います。

カイ二乗値だけに着目すると -thalは 24であり、統計値的には全国に均等分布と言えることになります。しかし、これは明らかに一つ上の -talの変形と思われ、また数も 85件と少ないため、-thalと -talを合算してデータを計算したものを欄外に示してあります。するとカイ二乗値は 49まで上がってしまいますが、上位集中度や乖離値は -berg、-berg並で、合わせて「全国区的地名」と言えるでしょう。下の -bergの解説によれば -bergの対義語なので、-bergの数だけ -tal、-thalがあっても不思議ではありませんね。

地名 -bergについて

-berg

Bergとは、丘の上や丘の上にある場所を指します。また、それ以外では一般的に標高の高いところを指して、古高ドイツ語では perac、中高ドイツ語では percと呼ばれているが、それぞれの丘陵地には多数の地域固有の呼称が存在しています。Bergまたは -bergと呼ばれる場所は非常に古く、貴族の家系の名前の Bergのように、中世初期にまで遡るものもあります。これとは反対の意味で、タル(Thal)を持つ名前と丘の名前であるビュチェル(Büchel)、ビュヘル(Bühel)、ビュール(Bühl)、ビクル(Bichl)があります(後者もまた、水の上にそびえ立つ丘の意味で島の名前です)。

地名 -burgについて

-burg

多くの場合、-burgの地名は城という用語に由来します。

ドイツ語で「ブルグ」という言葉は、もともとは「城塞都市」や「騎士の城」を意味していました。旧北欧語では、ボーグは「丘(住居が建つ場所)」という意味にもなります。東低ドイツの入植地では、-burgが付いた地名もスラブの起源を持っている可能性もあります。 -boŕで終わるスラブの地名は、低地ドイツ語で -borch(高ドイツ語では -burgに対応)になる可能性があります。

地名の研究 Ortsnamenanalyse (12)に続きます

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