三十年前のドイツ(3):東西ドイツ国境の構造

東西ドイツ国境やベルリンの壁は、単なる金網のフェンスやコンクリートの壁だけで成り立っているほど単純なものではありません。その背後には何重にも逃亡者を阻止する仕掛けが張り巡らされていたのです。

下の動画はベルリンの壁の構造についての解説アニメですが、東西国境はコンクリートの壁が金網フェンスに変わるくらいで実質的には同じ仕組みなので、構造を理解する上で大変参考になります。ドイツ語ですが、アニメが分かり易いので感覚的に理解できると思います。

なおタイトルの Eingemauertというのは「囲い込まれた」という意味です。

東独の国境封鎖設備(GRENZSPERRANLAGE):所謂「東西の壁」の構造

これは当時、西独側で配布されていた注意喚起のビラです。この裏側に下記のような注意が書かれていました。

過去に東独との国境で起きた事件は、国境を訪れる人は余程の注意をしないと身の危険に晒されるということを物語っています。従って連邦国境警備隊及び国境税関は下記の注意を促すものであります。

  1. 東独の種々の国境封鎖設備、特に金網は、そのものが国境を形成している訳ではありません。それらの設備は実際の国境線の向こう側、すなわち東独領土上にあります。
  2. 正確な国境線は、国境標識によって示されています。これに加えて、連邦国境警備隊によって立てられた「止まれ、ここが国境!」という立て札があります。
  3. 国境近辺を訪れる人は、自分自身や同伴者が危険な目に遭わないように、国境線が正確にどこを通っているかを十分に注意して確認してください。
  4. 国境付近では、はっきりした道路を通行することを推奨します。そういうところでは国境線は特に明確に示されています。東独の国境封鎖設備は、数多くの展望台からよく見ることが出来ます。詳しくは国境警備隊、国境税関あるいは地元の人に問い合わせてください。
  5. 東独領では西独とは異なった法律が適用されています。また、東独側の国境警備機関は非常に厳しく国境を監視しています。警告にも関わらず(故意ではない場合、あるいはほんの僅かという場合も同様)国境を越える者は、それによる危険を承知していなければなりません。

ニーダーザクセン州発行による国境の解説パンフレット

1.実際の国境線(国境標石) 2.警告看板あるいは杭  3.東独の標識柱(約 1.8m、東独のエンブレム付き)  4.SM70自動散弾発射装置  5.金網柵  6.コンクリート製監視塔  7.司令塔機能のある監視塔  8.100m程の幅の無人地帯:木が刈られライトアップされている  9.重点監視地域では 3.2mのコンクリート塀となっている  10.防護帯  11.監視用トーチカ  12.監視用トーチカ  13.足跡の残る工夫のなされた無人地帯  14.軍用車両道路:コンクリート板が敷いてある  15.連絡用電線  16.自動車遮断用溝  17.軍用犬解放装置

しかし、こういう様々な物理的な脱走防止の仕掛けの他に、そもそも脱走は Republikflucht(共和国逃亡)という重罪で政治犯収容所に送られ10年規模の懲役刑となり、更に国境警備兵には Schießbefehl(逃亡犯を見つけたら銃撃せよという命令)が出されており、これに従わない警備兵は逆に重罪に問われるという仕組みまであったのです。

三十年前のドイツ(4):東西ドイツ国境の画像ーその1-に続きます。

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