シュパーゲルの話(10)何故シュパーゲル? Spargelzeit -10- Warum Spargel?

シュパーゲルの話(9) Spargelzeit -9-からの続きです。

さて、いろいろ寄り道をしてきたこの項も一応のオチというか、落とし前をつけておこうと思います。まあ、前項の経済規模に関する統計データや、コロナ禍に於けるドイツの事業現場の苦境などの記事を読んでいると、シュパーゲル産業に関しては、まだまだ奥深い現実があり、ここで性急に結論付けてしまうのがいいとも思えません。そこは引き続きウォッチして「闇に光を当てていきたい」と思うのです。

少しだけ書いておくと・・・「コロナで国境を跨ぐ往来が遮断された」、「ドイツのシュパーゲルの収穫は(日に日に伸びてくるシュパーゲルに土をかぶせ続けて日光を遮断する必要がある」、「そんな重労働・肉体労働はドイツ人の若者はやりたがらない」、「で Spargelerntehelferと称して、短期の外国人労働者を受け入れてきた」、「主にはポーランドとルーマニア」、「その労働環境は劣悪・過酷・・・日本のナンチャラ研修生同様、それ以下」、「コロナ禍2年目の 2021年はポーランド人やルーマニア人が来なくなったので、ジョージア人がその穴を埋めている」・・・こんなニュースが散見されます。

ひでぇじゃんか?と言ってしまえばそうなのですが、では日本の外国人研修生・入管問題はどうなんだい?ということですよね。かつてドイツの経済成長を支えたトルコ人の Gastarbeiterの2世・3世問題もあるなかで、あの「春の国民食」ともいえるシュパーゲルにも、似たような Gastarbeiter問題が生じているのです。

え~っと・・・私に期待されている「オチ」はもうちょっと軽い・・・というか、笑えるやつというか・・・エッチなやつ?(笑)ではないかと自覚しておりまする(爆) まずは下の動画をご覧ください。ご心配なく!マタイ受難曲みたいに3時間もありません、3分くらいです(笑)内容も受難曲の対極にあります!ドイツ通の方ならご存知の方も多いかもしれませんね。そうでなくても、この軽く楽しいノリをまずは聴いてみて下さい。ドイツ語分からなくても問題ありません!

これは「Comedian Harmonists」という、戦前に実在し、大成功したコーラスグループ(コミックバンド?)を題材にした実話ベースの映画の一部です。私が単身赴任していた時期に封切られ、映画館で何度も見ましたが・・・涙無くしては観ることの出来ない映画です。6人のメンバーの内、半分がドイツ人、半分がユダヤ人で・・・日に日にナチスの圧力が強まっていき、最終的には解散させられるのですが、ドイツ人ながらユダヤ人娘に抱く恋心、逆に相手がユダヤ人と知って引いてしまう別のメンバー・・・ネタバレになるので、是非ご自身でご覧ください。

で、本題なのですが・・・この動画で歌われているのが「Veronika, der Lenz ist da(ヴェロニカ、春が来たよ!)」という曲。歌詞と、その単純な Google翻訳+大野の勝手な意訳を下に示しておきます。ドイツ語専門家の細かな誤訳の指摘は受け付けません、そこがツボじゃないんだワ、所詮(笑)デビューする前のオーディションのシーンから、成功して大勢の観客の前で歌うシーンがシームレスに描かれています。ちなみに「Lenz(レンツ)」というのは「春 Frühling」と同義語ですが、先に書いた英語での禁欲期間としての lentの語源となった単語で、単に季節としての春を超えて、「禁欲期間が明けて自由になった季節としての春」というニュアンスを含んでいると大野は解釈しています。

Veronika, Veronika, Veronika, der Lenz ist da
Veronika, der Lenz ist da
Die Mädchen singen tralala
Die ganze Welt ist wie verhext
Veronika, der Spargel wächst!
Ach du, Veronika, die Welt ist grün
D’rum lasst uns in die Wälder ziehen
Sogar der Großpapa sagt zu der Großmama
„Veronika, der Lenz ist da“

Mädchen lacht, Jüngling spricht
„Fräulein, wollen Sie oder nicht
Draußen ist Frühling“
Der Poet, Otto Licht
Hält es jetzt für seine Pflicht
Er schreibt dieses Gedicht

Veronika, der Lenz ist da
Die Mädchen singen tralala
Die ganze Welt ist wie verhext
Veronika, der Spargel wächst
Ach du, Veronika, die Welt ist grün
D’rum lasst uns in die Wälder ziehen
Der liebe alte Großpapa sagt zu der guten Großmama
„Veronika, der Lenz ist da-da-da
Da-da-da, da-da-da-da-da-da-da-da-da

ヴェロニカ、ヴェロニカ、ヴェロニカ、春が来たよ!
ヴェロニカ、春だよ!
女の子はトラララって歌うよ
世界中が魔法にかかったみたい
ヴェロニカ、シュパーゲルがニョキニョキと!
ああ、ヴェロニカ、世界は緑だ
それでは森の中に移動しましょう
おじいちゃんもおばあちゃんに言うんだ
「ヴェロニカ、春が来たよ!」

女の子は笑う、男の子は話す
「お嬢さん、いかが?外は春だよ」
詩人、オットー・リヒト
今それを彼の義務と考えています
彼はこの詩を書いています

ヴェロニカ、春が来たよ
女の子はトラララって歌うよ
世界中が魔法にかかったみたい
ヴェロニカ、シュパーゲルがニョキニョキと!
ああ、ヴェロニカ、世界は緑だ
それでは森の中に移動しましょう
親愛なるおじいちゃんは良いおばあちゃんに言います
「ヴェロニカ、春が来たんだ!
Da-da-da、da-da-da-da-da-da-da-da-da
ダダダ、ダダダダダダダダダダダダダ」

ポイントはと言えば・・・春が来て「ニョキニョキ」と育つシュパーゲルは、それこそ「人生の春」・「青春」のシンボルなんですね!ま、早い話が思春期の男の子のオ〇ン〇ンを体現しているのです。(ハーハー(笑))春が来て、地面の下から力強く「ニョキニョキ」と伸びてくる・・・そんなパワーをシュパーゲルは体現している・・・そんな気がします。上の動画のシーンでも、踊り子の女性がニヤッとしていますが、映画の中の他のシーンでも「Veronika, der Spargel wächst!」という歌詞が出る度に、コーラスグループの仲間、聴衆、ナチスの将校からさえも笑い声が漏れます。

もっと細かく書きたいのですが、それはもはや無粋というものでしょう(笑)筍との比較?・・・んんん、やっぱり形状が違いますよね(爆)あ、下の画像は本文とは無関係です(笑)これをお読みの淑女の皆様は、週刊文春の「淑女の雑誌から」というコラムを笑ってスルーできる「大姐御」と信じます(笑)

以上「それにしても何故この時期、ドイツ人はシュパーゲルにこれほど熱を上げるのでしょうか?」という疑問に対する私なりの答えとしては(順不同):
★ 暗く長い冬が終わった時にちょうど旬を迎える
★ 加えて、キリスト教世界の「禁欲期間」が解けるイースターの頃に旬を迎える
★ 6月 24日(ヨハネの日)で市場から消え、なた来年まで食べられない・・・という期間限定感が「季節に一度は食べておかなくては」という気分を煽る
★ 経済的にも、ドイツの農業経済の中でもはや無視・撤退できる規模を超え、国を挙げて成長ドライブを掛けるアイテムになっている
★ シュパーゲルは単なる野菜ではなく、春・青春・回春のパワーを体現するアイコンとしてのポジションがあるのでは?
ということで一旦の結論としておきます。

シュパーゲルの話・・・これにて一旦オチと致します。これ以上書き始めると、当局の目に留まってしまうかも(笑) お後がよろしいようで(笑)

関連記事

ページ上部へ戻る