- 2020-9-3
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購入したワインの入門書の中に、当時の特定ワイン産地(Bestimmtes Weinanbaugebiet)の全体像概観があります。ドイツに来る前は、なんとなく「茶色の瓶に入っているのがラインワイン、緑の瓶に入っているのがモーゼルワイン」とか「ドイツワイン=リースリング=甘い」程度の予備知識や先入観レベルだったので、それなりに目から鱗が落ちる思いでした。
Mosel-Saar-Ruwerとか Rheingauあたりは何となく知っていましたが、一覧表の最初に Ahrなんてのが出てきて面喰ったり、次の Badenは随分いろんな種類のブドウを栽培してるんだね!リースリングが主流でもないんだ!と感心してみたり、Rieslingが主流と思っていたら Müller-Thurgauってのがやたら目立つね・・・当時の自分のワイン知識なんてそんなもんでした(笑)
これを最近のデータと並べて比較してみたのが下の表で、2012年のデータソースはこちらの Wikipedia、2019年のデータはドイツ食品の普及に尽力されておられる森本さん(株式会社エルフェン社長)にドイツ統計局のデータから探してご提供頂きました。
ここから分かること:
1.全体で、1978年から 2019年の 41年間で 16%増えている。
2.増えた結果、約 103,000haとなったが、ドイツの国土面積 357,400km²(ha換算はこの 100倍)に比べると約 0.29%にしか過ぎない。
3.旧東独の Saale-Unstrutと Sachsenが加わったが、両者とも小さなエリアだったので、その寄与は 1%程度の増分と多くはない
4.作付面積を大きく増やしたのが Rheinhessen、Württemberg、次いで Rheinpfalz、Franken、増加率で見れば Franken、Württembergが伸びた。
5.逆に作付面積を大きく減らしたのが Mosel、面積は小さいながら減少率では Mittelrheinが高かった。
6.2012年から 2019年は全ての地域で微増で上向きに転じた。
ということで、1978年から 2012年の 34年間の時の流れの中で、何かドイツのワイン事情に変化が有ったように見えます。ビジネスマン視点からは、こういう変動が起こるには当然そうなるべきインセンティブが働いている筈と考えます。それって何だろう?
まずは経済振興のための公的補助金。かつて欧州で複写機のダンピング訴訟があり、日本の複写機メーカーは現地生産を迫られ、私が勤務していた会社はニーダーザクセン州リューネブルクに工場進出しました。当時、リューネブルクは繊維産業が衰退し、かつ東独との国境に近いため、産業振興・失業対策のために、そこに進出する企業に対して連邦政府や州政府から手厚い補助金が出ました。(ちなみに役員会にリューネブルクを提案し、そこに自ら手を挙げて赴任したのは、ハンブルクから帰国したばかりの私です(笑))こういう背景はどんな産業にでもあるでしょう。なにか補助金政策が絡んでいないか?
次に、ドイツワインの競争力・・・ワインとはいえ煎じ詰めれば農業生産物。他国のワインとの競合関係にあることは否めません。公的補助金とは別に、そこで生産することが他国・他地域のワインとの競争上、合理的な経済優位性があるのではないか?Moselではなく、Rheinhessenが競争上優位となるポイントというのは何なんだろう?
あるいは消費者の嗜好の変化?ワイン生産がローマ時代以来の文化的背景を持ちながらも、産業である以上は「売れるものを作る」のはある意味当然。それへの対応が Rheinhessen、Württemberg、Frankenの方が Moselよりうまく行った?
あるいは地域の組み替え?以前 Moselと分類されていた地域の一部が、単純に Rheinhessenに組み替えられた?ま、地図を見る限りそういうことはなさそうですけどね(笑)一応、そういう可能性も考えておくという習い性で・・・(笑)
一見、無味乾燥な統計データですが、並べて比較してみると結構面白いものが見えてきます。この背景の解明もテーマのひとつとして、いろいろ調べてみようと思います。なんせ、味に関する探究はギブアップしているもので(笑)