- 2019-6-5
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95歳で亡くなった父親の葬儀が無事終わり、ホッとしています。大正から令和まで、四世代 95年を生き抜いた大往生ではありました。ピンピンコロリというほどスマートな最期ではなかったのですが、逆に「思いもかけない急死」ではなかった分、家族サイドとしても思い残すことがないように(後になって、ああしてやればよかった、こうしてやればよかったと後悔が残らないように)いろいろなケアをする時間があったという意味では、理想とされるピンピンコロリより却ってよかったかも・・・と思います。
また、事前の段取りをする期間があり、それによって葬儀やその周辺にまつわるドタバタを少しでも軽減できたのかなとも思います。折角の稀有な機会なので、そこらへんの段取りに関して、今回得た経験値を纏めてシェアしておきます。終活のご参考になれば(笑)
事前準備・段取りのカテゴリーとしては、下記の様に分類してみました。
1.終末医療、2.葬儀屋、3.お寺、4.墓地・墓石、5.銀行関係、6.相続、7.諸手続き
1.終末医療
昨年 11月、大学病院で別件で血液検査をしたところ、芽球(骨髄で作られる白血球が完全に成熟しない段階、芽の段階で血液中に放出されるもの)が発見され、「白血病の疑いあり」と診断されました。正確な診断をするには骨髄液を採取して観察する必要がありますが、高齢でその検査自体も体に負担がかかり、かつそう診断されたところで、放射線治療や化学療法などをするのは更に大きな負担がかかる・・・ということで、病院側とも十分相談した結果、出来る限り苦痛が発生しないような「緩和ケア」を軸とするというハラを括りました。本人には(正確な診断がでたわけでもないので)告知はしませんでした。
また本人が入院ではなく、あくまで自宅での療養を強く希望したので、往診専門の医療機関を紹介してもらいました。病院や開業医のような診察室を持ち、そこに患者が出向いで外来治療をを行うのではなく、医師と看護師、事務スタッフなどで構成されたオフィスを持ち、訪問医療を行うというスタイルです。勿論、地域の病院群との連携はちゃんと図られており、緊急時や必要に応じては病院に運び込んでの治療も可能です。父の場合はこちらにお世話になり、最期を看取って頂いたのもこちらの先生・看護師さんでした。24/7体制で連絡が取れ、対応も非常に柔軟、私としては大変いい先生と医療体制に巡り合ったと感謝しています。
さて、死亡を確認し、死亡原因を確定し、死亡直後の遺体に必要な処置を施し、死亡診断書を書くまでが医療機関の仕事です。この死亡診断書は A3サイズ用紙の右半分、同じ用紙の左半分は死亡届という形でセットになっています。ここからは葬儀屋の出番となります。
2.葬儀屋
「思いもかけない急死」などの場合は、ことが起こってから葬儀屋を決めなくてはならないとかなりドタバタすると思いますが、積極的に自分の終活をお考えの方は、その際の喪主となる方と一緒に、早めに一度は葬儀屋を訪問して話を聞くなり、比較検討するなりされるのがお勧めです。
葬儀屋というと、なにやらネガティブな印象となるかも知れませんが、実体は「葬儀に関する総合マネジメント代行業」です。どの業者を選んでも、いずれも幾多の事例をこなしてきたプロ集団なので特に大外れは無いんだろうと思います。うちの場合は、父親が会社を退職して 30年以上も経っていることから、内輪の家族葬とする方針だったので、それに見合ったこじんまりしたホールを持っている地元のこちらとしました。スタッフ間の連携もよく、家族葬には悪くない選択肢と思います。
最初にここの式場を見に行ったのは 10年ほど前、その後は忘れていましたが、昨年 11月に大学病院で余命の話などを聞いて、再度情報収集に出かけました。その間、積極的にコンタクト営業をしてくるわけでもなく(まあ、しませんわな、普通(笑))、ご縁がありましたらお使いください・・・というような姿勢です。いずれにせよ余裕のあるうちに、いろいろ比較検討し、事前にここ!と決めておかれるのがいいと思います。
さて、死亡が確認されたら「直ちに葬儀屋を呼ぶ」必要があります。寺の坊さんの日程と、火葬場の空きを確認して、通夜・葬儀の日程を確定させ(友引は火葬場は休み・通夜は可能などの制約あり)、並行して死亡届を役所に提出し、火葬許可証や埋葬許可証を取得し、通夜・告別式の細かい仕様を決めていく・・・その間、遺体は当然傷み始めるので、時間との戦いになる、モタモタしている余裕はありません・・・これは経験のない素人が全て抜けなくマネジメントするのは無理です。
死亡診断書が出たらすぐに葬儀屋に来て貰い、セットになった死亡届と事務処理用印鑑を預け、その後の公的手続きの代行を依頼するところから始まり、告別式・火葬が終了するまで、蓄積してきた経験値をベースに適切なアドナイスをしてくれ、進行を仕切ってくれます。その指示に乗っかっていれば、コトはスムーズに進みます。
葬儀屋が唯一埒外・アンタッチャブルなのは宗教関係です。どこの寺の坊さん(神道・キリスト教・その他の神職)に来てもらうか・・・ここは喪主サイドで決める必要があります。というか、事前に決めておく必要があります。
3.お寺
私は、宗教的信仰心に関しては皆無!と言って差し支えない方です(笑)。所謂「菩提寺」があるわけでもなく、その「檀家」でもありません。ウチの場合は先祖代々、仏教の「天台宗」と聞いていたので、まあそれが妥当かという程度でした。ここは皆様も各々の家系の流れの中できまっていることと思いますので、特に天台宗を売り込む意図は皆無です(笑)。
ただ、どの宗教・宗派であるにせよ、具体的にどの寺・神社・教会の僧侶・神職に来てもらうのかは事前に決めて、少なくとも一度はそこの僧侶・神職と会って話を聞いておかれるのがいいです。仏教の場合は「戒名」をつけて貰うので、坊さんに適切な漢字を選んでもらう為に、故人の性格や人生などの情報提供をする必要があるからです。
父親の場合「カタブツで真面目、某財閥系機械メーカーで購買・資材畑一筋で定年まで勤めあげ、口数は少ないが誠実な人柄で部下から慕われて、趣味はゴルフ、野球なら阪神ファン・・・」、「名前が盛行なので『盛』という字は入れて欲しい」という情報インプットで、付けてもらった戒名が「誠真盛徳居士」・・・なるほど!私はこの父親の血より、母親の血を多く受け継いでいるようです(笑)。ちなみに阪神タイガースの「虎」は戒名には使えないようです(笑)。
11月に大学病院で余命の話を聞いて、直ぐにグーグルで地元の天台宗の寺を検索したところ数件がヒット。この中で次項で書く霊園での「お墓」建立の時に来てもらったお寺さんを「なにかのご縁」ということで訪問して、「今後半年から一年くらいの間にお世話になると思います」という感じで、必要な情報交換をしました。
そこで最大の関心事の一つは「戒名の院号・居士号などの価格体系」です(笑)。院号を付けて貰うなら最低百万円のお布施が必要とか、院号を付けるとその後のお布施も大変・・・とかの都市伝説があるようですが、ざっくばらんに聞いてみることです。今回お世話になった天台宗某寺の住職は極めてクリア!「院号は勘弁してください(お金を積まれても、つけられません)。居士・大姉ならいくら、信士・信女ならいくら、これには通夜・告別式・初七日・火葬場での法要読経・そこまでの交通費など一切を含みます」・・・いずれにしても、ざっくばらんに話してみることです。
葬儀屋との打合せの際に「どのお寺さん(神社・教会)にされますか?」というのは必ず訊かれ、そこへの連絡は喪主からするように言われます。あくまで喪主がそこを決めた上で、その後の段取りを葬儀屋が代行するということです。また葬儀屋に「戒名の相場」を訊いても明快な返事はしてくれません。そこには踏み込まないというのが葬儀屋のスタンスです。
そして、住職の予定と火葬場の空き日程で通夜・告別式の日程が決まります。初七日が過ぎない一週間以内に行うのが普通です。夏場で一週間後しか空いていないというような場合には、遺体を自宅で安置する際に傷まないようにドライアイスを毎日セットしてくれたりします。また、住職との面談の際に「四十九日の法要」・「一周忌」・「新盆」など、この先の日程も決めてしまうのがいいでしょう。
さて、お寺(神社・教会)が決まれば、あとは葬儀屋の仕切りで、火葬で遺骨になるまでは粛々と進みます。
通夜の夜には棺桶の前で線香を絶やさないように誰かが泊まり込みで不寝番をするという習慣があるようです。まあ、今どきは必須ではないようですが、式場に宿泊できる和室があったので、今回は私が泊り、想い出の写真のスライドショーの前で献杯を繰り返しておりました(笑)。
4.墓地・墓石
これは、すでに先祖代々の墓があるかそうでないか、そこに入れるのかそうでないか、宗教・宗派によっての違い、またいつ納骨するのか、いっそしないのか・・・などなど様々なパターンがあるので一般論はありません。
ウチの場合には十数年前、父親がまだピンピンしている頃に近所の霊園の案内があり「この際、墓を作ってしまおう!」と、長男の私との共同で墓を建立しました。まあ、用意周到というより「生きているうちに墓を作ると長生きする」みたいな霊園の営業トークに乗ったものと思われます。結果として 95歳まで生きたので、案外ホントなのかも知れません(笑)。
霊園で生前に墓を作る際のツボは、「本人ではなく、墓を引き継ぐ人の名義」で霊園と契約することです。ウチの場合は父親名義で作りましたが、本人がそこに入る際には本人は死去しているので、それを引き継ぐ人(この場合は私)に契約の名義変更が必要で、その手数料が発生するからです。考えてみれば当たり前ですが、案外盲点かと思います。
また、墓地に納骨するためには市役所による「埋葬許可証」が必要ですが、これは市の火葬場で遺骨と共にくれますので、無くさないように「骨壺を収めた木箱の中にでも入れておくのがいいでしょう。また、霊園での埋葬手続きの際には、契約者(埋葬をする人)の戸籍謄本と実印が必要です。実印には印鑑証明が必要なので、注意が必要です。また、墓石の横にある石の「墓誌」への戒名彫り込みも必要で、この時間も考えておく必要があります。
5.銀行関係
死亡した人の名義の銀行口座は遺産相続のトラブルを避けるため、最終的に遺産分割協議書なるものに法定相続人全員が合意して捺印するまで凍結されるようです。銀行がどうして口座名義人の死亡を知るのかは謎ですが、少なくとも個人情報保護義務のある医師・葬儀屋・役所から漏れることは考え難いので、なんらか別ルートがあるのでしょう。舞台裏は謎です。また、新聞や週刊誌で報じられるレベルの大物ならともかく、名も無い 95歳の市井の庶民が死亡したという情報が即時に銀行の知るところとなるとも思えません。私の父親の口座はまだ凍結されていないと思いますが、これも未確認です。
大事なことは、葬儀終了後、約一週間程度で葬儀屋に纏まった金額を支払う必要があるので、その分は口座名義人が存命中に少しずつ引き出すなり、喪主など、その後の事務手続きをする人の口座に資金移動しておくなどがお勧めということです。
また、公共料金や電話料金などの引落しも死亡した人の名義口座は早晩凍結され使えなくなるので、早いタイミングで切り替えが必要です。
6.相続
これは家庭事情により千差万別で、これだけで一冊以上の本が書けてしまうような話なので、専門書やネット情報を参照ください。
ひとつポイントを挙げるとすれば、現預金・株式・不動産その他の財産状態は早めに把握してリスト化・見える化しておくのがお勧めです。こういう話はなかなか切り出し難いものですが、まあそこは話の持って行きようでなんとか(笑)。ウチの場合は、弟が損保会社勤務で、メーカー畑の私より、その分野の知識経験が豊富なので任せてあります。幸いにして相続が争族となるほどの財産は無く、また借金も無いことは確認できました(笑)。
7.諸手続き
葬儀屋から、細かい諸手続きのチェックリストを貰いました。ご自身の終活をお考えの方には参考になるかと思います。