業界コミュニティへの帰属という考え方(1)

今回、ちょっと(かなり)生意気なこと・挑発的な記事を書きます(笑)異論・反論・オブジェクション大歓迎です(笑)。少し長くなりますので2回に分けます。

サラリーマン現役当時、ある時点から、自分のスタンスは、『コニカミノルタの大野がインクジェットを担当しているのではなく、インクジェットの大野がコニカミノルタを担当しているんだ!』と気が付き、周囲にもそのような発言をしてきました。本音です。

コペルニクス的転回?(笑)でも、そういう風に立ち位置を変えてみると、世界の見え方が全く変わってきたのです。逆に、世界の見え方が変わった?と感じたことの原因を考えてみると、そのように立ち位置が変っていたんだと思い至ったのです。今回、そのあたりのことを書いてみます。先ずは、動画と画像をご覧ください。

↓↓クリックするスライドショーになります。

 

「業界のコミュニティ」という概念

これはドイツのニュルンベルグで年一回開催される PCIM と SMT Connect という学会+業界展示会が融合したイベントの「ネットワーキング・パーティ(ディナー)」の様子です。

PCIM=Power Conversion and Intelligent Motion 要は「パワー半導体とロボット」、SMT=Surface Mounting Technology 「実装技術」の学会と業界展示会という訳です。正直申して私は全くの門外漢なのですが、ある企業が「銀ナノ接合材」を半導体メーカーにオファーするのをお手伝いしている関係で「門前の小僧」をやっている次第です。

ここに写っている人々は、半導体業界の中でも「パワーデバイス」と「実装技術」という一部分に関係する人の塊であり、半導体に関係する全領域の人達が集まっているわけではありません。全貌ははるかに巨大ですが、そのごく一部だけでもこれだけいるのです!

ただ、私がこれから書こうとしていることは、半導体業界がいかに巨大かということではありません。この例を出してみたのは「パワー半導体と実装技術」という分野に、半導体デバイスメーカー・材料メーカー・製造装置メーカー・評価装置メーカー・その各々の開発技術者と営業マン・コンペティター達、そしてその各々の顧客達、更にその技術バックボーンとしてのアカデミアの人達・大学の専門研究者・評価技術の理論探求者・次世代半導体の研究者・その実装技術の研究者・・・そういう人達を全て包含する「バーチャルなコミュニティ」が存在するということをご説明したかっとことと、その「バーチャルなコミュニティ」(の一部)が実体を伴って姿を現す稀有な機会がこういう「ネットワーキング・パーティ」だということをお見せしたかったからなのです。ちなみに、実体ではなくバーチャルなコミュニティは LinkedInというサイバー空間に存在していると考えて頂ければいいと思います。

そして、ここに属する膨大な数の個人が、それぞれ同じコミュニティに属する個人と繋がっているわけです。同僚・前職・顧客・コラボ相手・・・その他、何らかの関係で繋がっているというわけですね。この動画や写真に「誰と誰が繋がっている」という紐づけの線=関係線を入れると、蜘蛛の巣のような線画が見えるはずです。逆に全くの門外漢は(例えば完全な異業種の食品小売業の人を、ここにポン!と置いてみたら、)そういう「関係線」が全く出ていない「孤立」した人として見えるんでしょうね。

これ、我々に近い業界、例として「電子写真業界」に置き換えてみましょう。そもそも「コミュニティはバーチャルなもの」なのですが、ザックリいえば全ての電子写真機器メーカー・サプライヤー・その生販開や企業運営に関わる全ての人々・そのユーザー達・技術理論支えるバックボーンとしてのアカデミアの人達・・・その総和が「バーチャルなコミュニティ全貌」と考えてください。昨今では「電子写真業界」という概念が崩れつつあるという人もいます。そうかもしれませんね。じゃ「デジタルプリンティングのコミュニティ」でも「産業用インクジェットのコミュニティ」でもいいんです。

あなたはそこに属していますか?あなたの上司は?

さて・・・あなたをその中に置いてみた時、どれだけの関係線があなたから出ているでしょうか?そして大事なことは・・・「社内の関係線を(どうせ社内は知り合うので)消去して、社外との関係線のみを残した時に、どんな絵が見えるのでしょうか?」ということです。

自社内には濃密な関係線が出ているのに、「コミュニティ全般(除く自社内)にはほぼ全く関係線がでていない=実質孤立」みたいな人が結構多くないですか?いや、あなたのことですよ!ほらほら、君だよ!あ、エクセルで事業計画の見直し計算ばかりやらせてるあの上司もそうだ(笑)

関係線が殆ど出ていない=自分に直接情報は入ってこない人(まあ、こういう人達に直接情報をインプットしてもパニクるだけ・・・みたいな側面はありますが・・・)は、それでも決断を下すことを求められるポジションに居る場合が殆どなので、コンサーバティブで「やめてこうよ」という結論を出しがちと思います。

更に、最も有りがちなのは「この程度の情報では決められない。もっと情報を集めてこい!」(笑)・・・それは「やめておこう」というネガティブな決断を口にしたくないための単なる「後送り」以外の何物でもありません。やめておくというのはそれでも決断ですが、先送りは体よく決断を逃げているわけでもっとタチが悪いです。

元に戻って・・・こういうネットワーキングパーティのような場を「単なる呑み会」と位置付けるか、文字通りネットワーキングをする場=大きなコミュニティの中で新たな関係線を作る場、或いは既にある関係線を太くする場・・・それもバーチャルな繋がりを物理的な face to faceの繋がりとする場として位置付けるか・・・それにより意味は全く変わってきます。

(ちなみに、社外人脈でも同じ顔触れが、いつもの居酒屋で呑んでいるのはネットワーキングではありません。そこ勘違いしないように!(笑))

日本人は仮にこういう場に来たとしても、仲間内でワインを2、3杯呑んで、30分程で「アリバイは作った」と言わんばかりに、集団で抜けて日本食レストランとかで呑みなおす・・・そんな行動パターンが大半です。勿体ない!これでは、そもそもこういう場に来ない「コミュニティに居ない・孤立した、あなたが批判している経営幹部達」と大差ありません。

今回のタイトル「業界コミュニティへの帰属という考え方」ですが、自分は企業に所属する以前に、業界コミュニティに帰属している・・・『コニカミノルタの大野がインクジェットを担当しているのではないんだ。インクジェットの大野がコニカミノルタを担当しているんだ!』・・・もうお分かりと思いますが、私が前職の会社を離れても、今なお仕事が出来ているのは、こういう立ち位置に、ある時点から転換したからだと思っています。

以前、「由々しい事態:リンクトインの加入率が示すガラパゴス日本」という記事でも書きましたが、50歳代以上にはもう期待しません(笑)。50歳代以上で経営幹部的ポジションにありながら、コミュニティに属さず、部下に仕事を投げ、その提案に「この程度の情報では決められない。もっと情報を集めてこい!」と決断を後送りしていると自覚している人、していなくても部下からそう思われている人は早急に職を辞してください。

また部下がコミュニティの関係線を増やすための活動、特に海外出張をする際に予算や費用対効果は?などを問うて足を引っ張るのは止めてください。関係線を増やす活動に「費用対効果」という尺度を持ち出すこと自体、クソナンセンスです・・・が、典型的にそういう幹部がやりがちなことなので明示的に書いておきます。

逆に50歳未満の世代の人は、是非「企業への所属以前に、コミュニティに帰属している」と視座を転換してみて、その中の関係線を増やす・維持する・太くする活動をおやりください。海外出張に行かせてくれない?有給休暇取って自腹で行きましょう!自分自身のグレードアップという観点から、その費用対効果は計り知れません。

今回は以上です。次回は同じタイトルで少し違った観点から書きます。

業界コミュニティへの帰属という考え方(2)に続きます。

■ 大野註:「FESPA 2019(4):People whom I met :FESPAで会った人達」は、LinkedInの大野のコネクション 3,000人=3,000本の関係線の内の 28本ということになります。ごく一部に過ぎませんが、各々のバックグラウンドは多彩で、だからこそ立体的な情報が収集できるというものです。

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