イベントを開催・参加してみての雑感

この 11月 21・22日に JITF2022という「テーブルトップ展示会&プレゼン&ネットワーキングレセプション」の複合イベントを開催してみて実に沢山の学びがありました。もちろん「先ずは始めないと始まらない」ということで、まずはやってみることに注力したので、そこから改善すべき課題も数多く見つかり、また建設的なご指摘も頂きました。それも含めての学びです。

一方、そういう「体感」をベースに他のイベントにも積極的に参加してみて、これまで漠然と感じていたことが、少しばかり言語化できるレベルで明確になってきました。まだまだ「雑感」というレベルで、順不同ですが感じたことをシェアしたいと思います。一部辛口な部分もありますが、建設的批判は必要不可欠だと考えていますので、何らかの参考にして頂ければと思います。また異論・反論・オブジェクションも歓迎です(笑)

★ ドタキャンよりドタエントリーが非常に多い日本

私はこういうイベントに「ネットワーキング・レセプション」は必須というか、それこそがコアヴァリューくらいに考えています。今回はコロナの関係もあり部屋のサイズから「密にはならないであろう 200人規模」でのレセプションを設定し早割も設定、その後締め切りが迫るにつれエントリー人数が急速に増加し、再度下見をして 250人に増枠・・・そしてそれもあっという間に埋まり「満員になりました!」とアナウンスしてからも、なんと 20人ものエントリー希望がありました「そこをなんとかお願い(笑)」

欧州などでは早割という経済的有利がある期間にかなりの確定エントリーがあり、エントリー後に別件が降って湧いても「そこは先約があるので」と後から来た案件をブロックするのが一般的です。日本人はギリギリまで予定の自由度を確保するためなのか、態度を決めずにおいて、いよいよ締切り!・・・というタイミングでドッとエントリーに走る(笑)一気に来るもんだからそのタイミングは早い者勝ち状態になり、最後までモジモジしていた人は「締め切った」というアナウンスを聞いてからやっとエントリーをして・・・弾かれてしまう(笑)

自分のサラリーマン経験からその背景を想像するに・・・予定の自由度をギリギリまで確保するというよりも、本当はエントリーしたいんだけど、周囲を見渡し、上司の顔色を窺い、空気を読んで最後までモジモジして、いよいよ煮詰まってから態度を表明する・・・みたいな部分はありそうですね(笑)それでエエんだろうか?

★ 期待した人数には届かなかった一般来場者・・・その背景

上述の「本当はエントリーしたいんだけど、周囲を見渡し、上司の顔色を窺い、空気を読んで最後までモジモジして、いよいよ煮詰まってから態度を表明する・・・」というのと関係があるように思うのですが、ドタエントリーでも参加出来たらいい方で、上司に伺いを立てたらスルーされたとか、何しに行くのか?成果は何か?と細かいことを訊かれて心が折れたという声も聞こえてきました。

有給休暇を取って自腹で参加するという人もいました。こういう人は逆に私から招待したりしましたが、実際に何例かあります。これ、コロナ前ですが海外の展示会に「自腹・有給」で参加するというケースを少なからず聞いたことがあります。上司に行きたいと打診すると「何しに?成果は?」と面倒臭いので、文句のつけようのない「自腹・有給」!その心意気やよし!

ところが、有給・自腹で国内外のイベントに参加したにも関わらず、それが上司に知れると「報告書を出せ」と言われるケースがままあるようです。今回に JITF2022でもそういう事例があったやに聞き及びます。なんじゃ、そりゃ!ブラックですよね・・・コンプライアンス委員会に通報しましょう!有給取って自腹で映画見ようが、デートしようが、展示会に行こうが勝手でしょ?業務として認めてくれないから有給・自腹で行くのに、業務報告書を出せって・・・

今回は出展社の社員は 2,000円(22日だけなら 1,000円)という優遇措置を講じ、かつ来場パスは社内で譲渡・使い回しオーケーとした破格のオファーをしました。見たことのないこと・やったことのないこと・経験のないことって、いずれ自分でやろうとしてもやれないんですね。私が何故こういうイベントを左程苦労もせずに企画して実行できるかというと、これまで沢山の海外のイベントに参加して様子・要領が分かっていたからです。

そういう意味で、今回は採算度外視で価格のハードルを思い切り下げて、「とにかく一度は見に来てよ」と参加し易い環境を作ったのですが・・・自分的にはちょっと期待を下回りました。イベントとしては「大盛況」と殆どの皆さんから高い評価を頂きましたが、自分なりには「アホ上司の壁」を完全には打破出来なかったという残念感が残っています。まあ、上司だけでなく・・・「有給・自腹」でも参加する!というガッツを持ち合わせていない若手も、そろそろ見放す対象かも(笑)

★ ネットワーキング・・・しましたか?

結局 250人の上限枠で開催したネットワーキング・レセプションですが、皆さん本当に「ネットワーキング」したでしょうか?私は drupaのダイレクターの Sabine女史をいろいろな企業の人達とネットワーキングして貰うために彼女を連れて会場内を巡回していたので、よくは観察出来てはいないのですが・・・結構会社ごとに纏まって立食されていたので、その会社の皆さんを纏めて紹介するには便利ではありました=裏を返せば「会社ごとに塊まって社内懇親会になっていませんでしたか」?(笑)

ネットワーキング・レセプションって、日頃はなかなか繋がる機会のない人同士が繋がる=まさしくネットワーキングすることが出来る場なんですよね。それを「社内懇親会」なんて、なんと勿体ない(笑)まあ、社内でもコロナでなかなか会う機会も無かったことでしょうからいいんですが・・・かつて私が欧州のこういうイベントでのレセプションにデビューした当時は、大量の名刺をポケットに詰め込んで手当たり次第に名刺交換し「namecard hunter」というニックネームまで頂戴しました(笑)

当時は「コニカミノルタがインクジェットヘッド」なんて全く無名でしたが、とにかく名前を覚えてもらうために、レセプションではギターを抱えて歌を歌い「歌うヘッド屋」として印象付けたりしました。なんでもいいんです、とにかく無名な駆け出しなんだから、まずは名前を覚えて貰えば(笑)3回目くらいからは「オーノ、今日は何を歌うんだい?」「カミさんがヨーコだから imagineかな」(笑) ここでも、日本人で塊りがちですが、敢えてそうせず繋がりまくった結果、気が付けば Linkedinで 3,000人のネットワークが形成されていました。

(実は今でもやってます(笑)↑↑ 一昨日の色材協会IT講座の懇親会でも全員と名刺交換しました)

JITF2022のレセプションに参加された皆様からのフィードバックには「時間でシャッフルして欲しい」「関連分野別にテーブルをグルーピングするのはどうか?」・・・などの声もありました。次回考えようとは思いますが・・・基本は、そういう「強制シャッフル」に期待するのではなく、自分の心の中にある「知らない人に声をかけるのが億劫」という壁を自分で壊すことではないでしょうか?

★ スポンサーになるという風土

今回、イベントのスポンサーになって頂いた企業は下にロゴがあります。改めて感謝いたします。有難うございます。企業名の敬称は略しますが、理想科学はブックレットの作成・印刷や懇親会参加者へのトートバック配布・プリントなどで大変貢献頂きました。また愛媛の佐川印刷にはロールアップバナーの作成、JETICには講演時間割のプリントと消毒液・体温測定器などを提供いただきました。山形大学は協賛という形で人材・資金をサポート頂きました、それ以外の8社のうち6社は海外企業、2社は海外企業の代理店などです。

Event Sponsors :イベントスポンサー

海外には、こういうイベントをスポンサーし運営をサポートすることを通じて、業界の中での存在感やステイタスを上げるということが当たり前になっています。ある意味で名誉なことでもあるという感覚です。私からイベントの趣旨を説明すると、ほぼ二つ返事でスポンサーになってくれました。中には今回は出展はしないけどスポンサーにはなるよ!という企業もありました。英国の Industrial Inkjet、SunChemicalと米国の CABOTがそうです。

一方、日本では「コストパフォーマンス」なる言葉が幅を利かせています。この支出に対して、売り上げはどれだけ増えるのか?という、例のアレです。

直接的な販売キャンペーンイベントではないので、スポンサーをしたからといって直ちに売上高に結びつくことは期待できないのは明らかです。予算を握る上司を説得しようとしても、この路線の延長線上には解はありません。そもそも、こういうイベントのスポンサーシップに「コスパ」を持ち出す上司というのは、まず間違いなくビジネス経験に乏しく、社内の人脈に対して業界の人脈は圧倒的に少なく、自分でこういうイベントに参加して「業界に関わっている」ことを体感することをしたことがない・する気もない人たちなのでしょう。多分、インクジェット関係の部門の上位職であっても、今回の JITF2022に視察にも来られなかったのではないでしょうか?

まあ、こういう状況を変えていくのは一朝一夕ではいかないものですが、徐々でも流れが変わって行って欲しいものだと思います。

★ 運営体制の課題

IGASや日本の業界ジャーナリズムに関してはちょっと辛口の記事を書きました。これはこういうイベントの運営体制にも関係することではないかなと思います。

IGASは「株式会社東京ビッグサイト」という「場所貸し業者」が貸す展示会場で「一般社団法人日本印刷産業機械工業会・プリプレス&デジタルプリンティング機材協議会」が主催するイベントと理解しています。この一般社団法人日本印刷産業機械工業会英語サイトが放置状態であることは指摘しましたが、役員リストには錚々たるお名前が並んでいます。ただ、里見和夫さんという専務理事を除けば全員が「非常勤」の役員という団体です。また非常に立派な組織図もありますが、それぞれの委員会の委員長や分科会の責任者の名前は見当たりません。なにより、IGASの主催者なのに IGASをどの組織が実行するのかが分かりません。

どうなっているのかな?と IGASのサイトを見ていたら「IGAS2022実行委員会」というページががあり、なるほどここが実質的な実行部隊なのか・・・と腑に落ちました。要は、毎回、有力出展社から担当者がアポイントされたプロジェクト体制で進めるということなんでしょうね。

それ自体は結構な話とは思いますが、各社からの代表選手が集まる中で、「IGAS2022は成功だったね」と多くの人達から評価されるというのどういう状態なのか?というビジョンやグランドデザインを描き、それを各社から出ている代表選手にタスクブレークダウンし、収益を計画し、集客の最大化の手段を講じ・・・「IGAS2022を一つの作品として創り上げていく」という大役を背負うというのは、とてつもなく大変なタスクだと想像されます。その役目を負うのは、実行委員会の名簿上では、小森コーポレーションの印出さんといういう方なのでしょうね。う~ん・・・

一方、「国として展示会ビジネスを産業として位置付けているドイツ」の展示会は構造が違っていて、デュッセルドルフやフランクフルトなどの主要都市には大型の展示会場があり、それぞれ Messe Düsseldorfや Messe Frankfurtといった「企業」が展示会群を運営しています。株式会社東京ビッグサイトのような純粋な場所貸し業とは異なり、企画運営全般・メディア対応から集客までを事業・本業として対応します。drupaも、その都度リセットされた「実行委員会」が招集されるのではなく、Sabine Geldermannという女性が総責任者として、もう十年も君臨しています。

まあ、どちらがいい・よくないというのは議論があるところでしょうが、少なくとも展示会の成功を「事業責任」という形で背負うのと、その責任の所在が曖昧な体制とではパフォーマンスに違いは現れるものと思います。

★ 閉じられた世界

「学会」というのがあります。私自身は前職で開発部門に所属したことはないので学会という組織やその活動にあまり知見がありません。学会員になったこともないので、そのメンバーに配信されてくるという情報に接したことも無ければ、たまたま何かの縁で参加した例外を除けば、案内がそもそも届かないので学会のイベントにも参加したことありません。

ということで、あまりよく知らない世界のことに対するコメントは控えますが(・・・と前置きして結局は書きますが(笑))、前職では開発部門の上位職としての事業部長だった経験からすると、ちょっと「閉じられた世界」というのが印象です。そもそも大学や学術研究機関がネットワークを形成する組織としての学会は理解できますが、事業で競合する企業体が主要な構成メンバーとして形成される学会というのは、いまだに完全には腑には落ちていません。

開発部門の僅かな限られたメンバーは「学会活動」なるものをやっていたようですが、その報告を聞いたことはありません。まあ、なにやら事業活動とは別の世界のような印象でしたが、企業本来の開発活動に支障をきたすレベルでもなかったのでまあ特段咎めた記憶もありません、逆に言えば、学会って事業責任者とはそういう距離感(希薄・縁遠い関係)にありませんか?

また「事業とは切り離した・商業主義とは一線を画す」・・・みたいな、ある種のピューリタニズムを感じることもありました。でも、それって変じゃないですか?事業責任者とは希薄な関係にしかない、私企業の技術屋さんのコミュニティとしての学会って・・・技術屋さんのサロンなんでしょうか?しかも、いつもほぼ同じ顔ぶれってことないですか?

日本ではあまり経験がないのですが、逆に海外の学会(と訳していいのかどうかわかりませんが)のイベントには、他業界のものに幾つか出たことがあります。米国の産業用ディスプレイの学会 SID(Society of Industrial Display)の分科会としての SID Vehecle(車載ディスプレイ)では、ある企業の代理で発表もしたことがあります。またドイツの PCIM(Power Conversion and Intelligence Motion)というパワーエレクロニクスの学会にも複数回参加しました。長くなりそうなので詳細は割愛しますが、アカデミアとインダストリーがしっかり融合している印象で、会社の中でもエース級の開発者・研究者が発表しており、また商業ビジネスとしてのイベントとしても盛況でした。

↑↑ ニュルンベルクで開催された PCIMのネットワーキング・レセプションの動画です。パワー半導体やロボットに関係する企業の経営幹部で、ここに出ていない人はいないでしょう。IGASって、コロナ前でもこういうのありましたっけ?(記事もご参照ください

インクジェットが関係しそうな日本の学会といえば・・・画像学会でしょうか?画像学会でもイベントの後は(コロナ前や、収まれば)懇親会くらいやると思いますが、参加者の大半は学会員ではないですか?事業系の経営幹部は参加していますか?まあ、それとはまったく違った建付けとノリのイベントではありました。

★ 何故こういうことを書いているのか?

ちょっと無遠慮に、一部の皆さんには不快に思われるかもしれないというリスクを覚悟で何故こんなことを書いているのか?まあ、これでもかなりマイルドに書いているつもりなんですが・・・(笑)こういう断面に「日本の地盤沈下」の実態が表れているように思うからなのです。

「日本の地盤沈下」は。それが指摘されて久しく、またいろいろな局面や指標に表れてもいます。大学のランキングや、論文の引用数や、世界における企業番付や、なんやかんや・・・まあ、でもそういうのって、これを読まれている皆さんや私がどうこう出来るものでもない分野です。

しかし、今回私が書いた様々な事象は、自分の関与していること・身近なところで起こっている事象で、まだ我々が気が付けば我々で変えることが可能な世界だと思うのです。一人単独で変えられることは小さくても、これを読まれている皆さんが少しだけこういうことを意識して、実際に行動すればその総和は大きなものだし、ただ流されていくところから、流れを変えることも可能ではないかと思うのです!

さて、何から着手しますかねえ~・・・差し当たり、有給・自腹で参加したイベントの報告書を出せなんて言う上司をコンプライアンス委員会に通報しますかね(笑)自分ではこういうことに関りを持たず、エクセルの上で計画を弄び、もっともらしい事業計画を(自分では作る能力が無いので)部下に作らせるような上級管理職を一掃しますかね(笑)

上手くやってください(爆)

追記:現在 22日 10:15amですが、朝からバズっているようで、既に開封率は 40%に達し 1,000人以上の方に読まれたようです。また何通かの「御意!」「その通り!」「ウチ・自分にもこんな経験事例が・・・」メールも頂きました。ああ、やっぱり皆さんもそう思ってモヤモヤしていたんだ・・・と確信した次第です。私のメールはこちらです(笑)社外コンプライアンス委員会として秘密は厳守します(笑)

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