- 2023-5-15
- トピックス
業界各社の 2022年度決算発表をした企業を順に取り上げています。今回は 5月 8日(月曜日)に発表したリコーです。第2四半期(上半期)が締まった段階では、既に下期に対する期待がやや過剰に見えており、第3四半期時点でも第4四半期にやや過剰な期待があるように見えました。さてどうなったのでしょうか?
リコー
よろしければ第3四半期時点のコメントを先にお読みいただければ、流れが分かり易いかと思います。
年間決算としては「売上高 21.4%増、営業利益はほぼ倍増」ということで、好決算だったと言えると思います。まあ、欲を言えば「売上高がコロナ前の 2019年度の 2.01兆円を回復して 2.13兆円となったのに対して、営業利益はコロナ前の 790億円に僅か届かず 787億円」だったことでしょうか?下のグラフのように、第4四半期の営業利益にやや過剰な数字が乗っていたのはその所為でしょうかね?
2兆円企業にとって 3億円くらいの利益を(資産の評価替えとか、廃棄の先送りとか、費用の資産化)で合法的に捻り出すのは簡単と思われ・・・私ならそれをやって「売上・利益ともにコロナ前の数字を回復した」と宣言しちゃいますけどね。無理な利益の創出は次年度にツケを回すことになるのでよろしくはないですが2兆円に対しての3億円くらいは許されるでしょう。まあ、しかしそんな小手先のことはどうでもよく、営業利益率が4%を切っているのは少し物足りなくはありますね。
2023年度の見通しについては増収減益を公表しています。2022年度の営業利益の年間見通しも回を追うごとに下方修正してきたことが上のグラフわかると思いますが、2023年度はその流れの延長なのでしょうか?リコーは説明会でのQ&Aをちゃんと公開しています。このなかで、私の疑問にも触れられています。
やはり、本社サイドが事業部を煽っていたフシはありますね(どこの企業でも多かれ少なかれあることなので驚きませんが(笑))
これは何を言っているのか?昨年の IGAS2022で「RICOH Pro Z75」を発表しました。この開発費は巨額であることが容易に想像されますが、発売を開始するまではかかった開発費を当年度の費用として落とさず、資産として棚上げあることが許されています。期間収益費用対応の原則からしても、まだ売れてもいないものへの開発費を費用化するより、それを資産化(棚上げ)して、売れ始めてから原価として売上に対応すさせる方が合理的と考えられるからです。
しかし、発売当初はインクの消費も僅かで売上や利益に貢献する部分は少ないのに対し、棚上げした巨額の開発費の費用化とバランスが取れず、事業採算的には大きな赤字が発生するのが普通です。これは富士フイルムの「JetPress 720」でも起こったことでしょうし、私にも経験があります。しかしこれは、このような大型製品を開発する際には必然的に起こる事象で、恥ずべき赤字でも何でもありません。搬送系をリョービと組んだ富士フイルムや、小森コーポレーションと組んだコニカミノルタとは違い、自力で開発したというところに「スゴイな!」という想いと一抹の不安が交錯しますが、初期の産みの苦しみの部分を出来るだけ速く・早く乗り切って上昇気流に乗ることを期待したいと思います。
【インクジェットに関して】
全体を通してあまり明確な記述がありません。昨年の IGAS2022で大きくインクジェットを打ち出し、今後の方向性を明確にしたわけですが、この決算説明会資料の作り込みは、産業インクジェットにあまり理解の深くない担当が作成しているように感じます。従来ビジネスの分析は非常に詳しい(詳しすぎて分かり辛いレベル)のですが、今後注力するという産業用インクジェットに詳しい方の関与も望みたいところです。