中国:ITMA ASIA 2018 上海 (9月15~19日@国家会展中心)視察メモ (4/6)


視察メモ (3)からの続きです

【4.他業界のインクジェットからテキスタイル分野に展開しようとしているメーカー】

中国のプリンタメーカーではセラミック向けプリンタメーカーの HOPETECH(希望高科)・MEIJIA(美嘉)がこれに相当します。なお当初からテキスタイルを目指した ATEXCOも他に分類するのが難しいので敢えてここに記載しておきます

別の折に解説する機会があると思いますが、セラミックタイルの製造工程へのインクジェットの適用は急速に進み、既に飽和しています。欧州ではタイル文化の南欧(イタリア・スペイン)のセラミック工場の「インクジェットが入るべきライン」にはほぼ全てに導入され、中国では広東省の佛山周辺の工場を中心にに導入が急速に進みました。幾つかの有力メーカーの中での双璧は HOPETECH(希望高科)と MEIJIA(美嘉)の2社でした。

その後、習政権による過剰投資抑制施策により投資用マンションなどの建設ブームに水が差され、建設資材としてのセラミックの需要が激減する中で、セラミックプリンタへの需要も激減します。これを受けてセラミックプリンタ専業だった HOPETECH(希望高科)の MEIJIA(美嘉)の2社も新たな分野への展開を迫られることになります。セラミックプリンタはシングルパスでプリントするため、それを応用して MS社の LaRioと同様なシングルパス機を開発します。繊維業界には全く足掛かりが無かったにも関わらす、こういう展開をするのはやはり中国独特のパワーというべきなのでしょう。日本メーカーには出来ない芸当かと思います。

実はスペインの CRETAPRINTを買収した EFIも、欧州のセラミックプリンタ需要が飽和する中で、同じようにその技術をテキスタイルのシングルパス機に転用しようとしたことは、前 CEOの Guy氏自身が語っています(REGGINIの項目を参照)。EFIの場合は戦略的に布石を打ち、REGGIANIというテキスタイル分野の有力プレーヤーを買収した上での転用計画でしたが、REGGIANIの前社長 Dominioni氏の反対に遭い、段ボールプリンタ NOZOMIを優先させましたが、ここで満を持してテキスタイルのシングルパス機 BOLTを発表する運びとなったのです。

【HOPETECH(希望高科)】


個人的に何社長とは前職時代に何度か話したことがありますが、非常に真っ当な人物・真っ当な事業展開をしているという印象があります。展示機はシングルパスとスキャンの両方があり、いずれもステンレスの外装で覆われているのは、既存捺染工場の設置環境ではスクリーンや機器などを結構荒っぽく水洗するため、その状況を想定したものと考えられます。

注目すべきは DuPontの顔料インクを採用しているという訴求です。染料インクは既にレッドオーシャンになりつつある状況で、後発としてはそこに参入して one of them になるのを避けたという見方もできます。更に中国政府の環境対応施策で、これからは顔料が有望という声もあり、それをいち早く取り込んだということかもしれません。

【MEIJIA(美嘉)】

経営者と話したことはないのですが、かなりヤンチャな企業という印象があります。下の写真の左側は EFIが買収したスペインの CRETAPRINTのもの、右側は MEIJIAのものです。ここまで露骨にデッドコピーをすると、もはや笑っちゃうしかないですね(笑)
そういう目で見れば、MEIJIAのシングルパス機もコニカミノルタの Nassenger SP-1にそっくりだ(笑)

そういえば山東省の如意集団が、MSの LaRioを購入したとされていますが、それをこの MEIJIAにデッドコピーさせたという未確認情報も聞こえてきます。あくまで未確認情報ですが・・・

【ATEXCO(杭州宏華)】

前述2社とは全く異なり、十数年も前からテキスタイルのみに特化してきたある意味では中国の超老舗で、最大規模のブース面積を誇っています。サイン業界からの転進でもなく、既存捺染機のメーカーからの転進という訳でもなく分類が難しいので、ここに取り上げておきます。

当初は、イタリアで始まったのと同様に、ミマキや武藤工業のプリンタの改造機でテキスタイルにプリントをする試みをやっていましたが、現在は自社開発を行っています。かつては国営企業という形態で(現在のステイタスは要調査)「国家がバックについているんじゃ、外には勝ち目はないよな・・・」と思っていましたが、まあ独り勝ち状態にはなっていないようです。

前回の ITMA2015にてシングルパス機への参入をアピールし、また販売方法も複写機にみられるような「ミニマムプリントを含むレンタル方式」を発表したりして話題を作りましたが、いまだに設置実績は聞こえてきません。とはいえ、インク価格などはプライスリーダー的な存在で、中国に於いては有力プレーヤーであることには間違いありません。

世界市場で REGGIANI、MS、コニカミノルタ、エプソン、ミマキなどと戦っていけるかどうかは疑問ですが、そこを目指している訳でもないようです。ITMA2015で開催された WTiNのパネルディスカッションでは明確に「中国・インド・パキスタンといった途上国でのプライスリーダーを目指す」と明言していました。

視察メモ (5)に続きます

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