中国:ITMA ASIA 2018 上海 (9月15~19日@国家会展中心)視察メモ (5/6)


視察メモ (4)からの続きです

【5.その他プリンターメーカー】【6.DTG】【7.インク】【8.画像処理・その他アイテム】

以下に挙げる企業は、正直申して私がその背景をあまり詳しくは知らない企業ということで「その他」に分類しています。精査をすれば、「1.サイン系」・「2.既存捺染機系」・「3.他業界系」に分類可能かもしれませんが、取り敢えず「5.その他」として紹介しておきます。但し、ITMAはメーカーしか出展を許可されないので、仲介業者や商社ではなく、一応は製造業者と考えられます

最初の広東世紀方達数嗎は今年3月の APPPEXPOで 小型プリンタから剥ぎ取った EPSONのヘッドを使ったプリンタを多数展示したメーカーの一つです。TEXCOLOR(凌智造)は毛足の長い厚手のモケットのような生地にプリントして特徴を出そうとしています。NKT(新景泰)はシングルパスと書いてありますが展示機はスキャン機です。DESIGN(徳賽)は無錫にあるプリンタ本体フレームの供給専業からプリンタに進出したメーカーです。これらのメーカーが業界にどのくらいのインパクトを与えられるのかは正直申して未知数~疑問といところです。しかし、日本ならまずあり得ない、こういう無名のメーカーでも ITMAに出展しているという状況も含めて中国の活気を形成しているのも、見逃せない事実かと思います。

【6.DTG】

本格繊維機械・捺染業界向けの展示会なので、DTG(Direct To Garment:ざっくり言えば現状では Tシャツプリンタの同義語)や昇華転写機の出展は少なかったように思われます。KORNIT・ブラザー工業・FLORA・セイコーエプソンあたりのブースや製品が目についたところです。KORNITは ALLEGROという顔料インクの RtoR機で DTMF(Digital Textile Micre Factory)を推進していますが、中国では時期尚早と判断したものと思われます

【7.インク】

歩き回りながら目についたインクメーカーを撮ったをそのままアップしているので、順不同や重複はご容赦下さい。日本企業では富士フイルム・DIC、欧州からはSENCIENT・KIIAN、中国からはPrint-Rite(天威)・HONGSAM・RANYU(藍宇)、米国からはDuPontがブースを出しています。ブースを出していなくてもHUNTZMANや日本化薬他多数のインク・色材メーカーから視察に訪れていたようです。なお、5号館に注力したので、他のホールに出展していた色材メーカーは見落とした可能性がありますが、5号館の中は網羅したつもりです。

サイン系の展示会 APPPEXPOには聞いたことも無いようなインクメーカーのブースが乱立しますが、やはりプリンタと同じで、この繊維機械の展示会に出展しているメーカーは、異業種の市場に進出するぞ!というそれなりの覚悟を持って出展していると思われ、インクメーカーの母集団の中では上位層にいると考えられます。また、サイン業界展示会に多くみられる「昇華転写インク」は、この本格繊維染色業界の展示会ではあまり目に付かなかった印象です。

目立っていたなと思うのは DuPontです。かつて東伸工業からプリンタを調達して自らプリンタ事業も行っており、累計で約 300台を設置した(大野推定)一大勢力でした。今はプリンタからは撤退しインクの専業となっていますが、当時から評価が高かったのは顔料インクでした。ここで中国の環境規制が強まりつつあるという流れの中で、環境負荷が小さいことを訴求できる顔料インクで勝負する構えかと推察されます。別途記述した HOPETECH(希望高科)が DuPontの顔料インクを採用しています。

富士フイルムは産業用ヘッドとして人気の高い DIMATIXのヘッドも展示していましたが、FFIC(FujiFilm Imaging Colorant:旧Avecia)を軸にテキスタイル向けインクにも注力しています。テキスタイルインクとしては後発ですが、元々材料技術・化学分野では高い潜在力のあるメーカーなので来年の ITMAでは何らかの新機軸を打ち出してくることを期待したいところです。

【8.画像処理・その他アイテム】

RIP(画像処理ソフト)ではスペインの inedit・AVAが出展、スイスの ERGOSOFTの創業者オーナー Hans-Peter Tobler氏が(いつもの様に)視察に来ていました。Hans-Peterは上海までは来ても日本には来ません。「たまには来いよ」と言っても、「日本にはこういう、多数の出展社が集まる展示会が無い、そういうところには情報も集まってこない、中国の方が圧倒的に顧客や潜在顧客も多く、競合他社も含め人が集まり、情報も多い」・・・とのこと。ここでも日本の展示会の地盤沈下を感じます。沈下した地盤の上で事業を企画しても大したことは出来ません。

昇華転写紙ではドイツの Felix-Schoellerと中国のメーカーが出展。サイン業界の展示会では昇華転写花盛りなのですが、ここではかなり控えめです。スポーツアパレルなど、昇華転写が主流のテキスタイルプリントは、やはり本格捺染業者ではなく、サイン業者など異業種からの参入がメジャーということの反映かと思われます。昇華転写紙の有名どころは、スイスの Cham Paperやオランダの Coldenhoveなどですが、ここでは比較的後発のドイツ Felix-Schoellerが出展していました。

上野山機工は日本では繊維機械の周辺機器、あるいは KORNITの Tシャツプリンタの代理店ですが、中国に関連工場をもっている関係で展示していました。

二日目の最後、駆け足で6号館の既存染色設備を見て回りました。インクジェットでベタ染めや機能性薬剤をオンデマンドで塗布するアイデアがありますが、この世界はまだまだそういう機器の展示は無いように見えます。

■ 視察メモ (6) に続きます

関連記事

ページ上部へ戻る