今回、JETIC社の鷹尾社長とのコラボ企画として、10名弱の方々にガイドツアーを実施し好評を得ることが出来ました。参加者のお一人から事後にいくつかご質問を頂きました。インクジェット業界擦れしていない、フレッシュで素直な質問と感じましたので、ご本人のご了解を得て、ここに質問と私なりの見解をアップ致します。
1. 中国プリンターメーカー(またはインクメーカー)が海外へ進出する割合が少ないのはなぜでしょうか?(特に日本への輸出が非常に少ない理由は何でしょうか?)
2. HPが搭載しているLatexインクが広まらない理由は何でしょうか?(会場内を見た限り、Latexインクを搭載しているのはHPとKINGJETの2社くらいだったと記憶しております)。
3. EPSON(3200)やXaar(1201)の薄膜ヘッドの市場評価はいかがでしょうか?(薄膜ヘッドは低コストであるものの耐久性に課題があるような印象ですがいかがでしょうか?)。
4. 中国メーカーが新製品を開発する場合、PATなどは回避できているのでしょうか?
5. 大判プリンター市場の更なる拡大のために今後必要なことは何でしょうか?(例えば、UVインクの安全性を改善する or UVインクを低粘度化するなどできれば産業用途だけでなくコンシューマ分野にも展開可能なのではないかと考えています)。
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2. HPが搭載しているLatexインクが広まらない理由は何でしょうか?(会場内を見た限り、Latexインクを搭載しているのはHPとKINGJETの2社くらいだったと記憶しております)
■ これも、前項でご説明した「欧米日先進国系プリンターと、中国プリンターの市場の棲み分け」の一種と見えます。先の事例の逆で、HPのラテックスプリンターは欧米日ではそこそこの存在感を持って市場に浸透しています。
■ 発売当初は「乾燥定着に要する熱に耐える専用メディア必要」・「電力消費量が多く専用の配線をする必要がある」・「ソルベントではなく水系インクと言うが、主溶媒は水にしても、副溶媒としてかなりの溶剤成分が入っているではないか」・「水系が環境にやさしいというが、こんなに電力を消費して本当に環境に優しいのか?」など、エコソルベントインクが主流、そうでなければ通常の水系顔料インクが幅を利かせていた当時のサイン業界では、何かとネガティブな話が流れたものでした。
■ 敢えてラテックスインクの弱みと言えば、少なくともこれまではボードなどのリジッドなメディアには対応できていなかったことでしょうか。しかしこれも先日のラスベガスのSIGN EXPOで発表され、5月のベルリンのFESPAで登場し、この秋以降に発売されるとのこと。これに関してはNessanの記事紹介をご参照ください。Nessanが、やや懐疑的なトーンの記事を書いています。
■ このHPのラテックスインク…という以前に今回の上海展示会にHPのブースそのものが無かったですよね。HPは中国市場にどうやってアプローチするのか、悩んでいるではないかと想像します。極端に言えば、先進国市場と中国市場を含む「非欧米日の途上国」を含んだ市場に対して統一的・画一的マーケティングをすることで、結果的に方針や戦略に破綻をきたす位なら、そういう市場は敢えて重点的に取り組まない・展示会にも出展しない・先進国市場にフォーカスする…そんな腹括りをしたのではないでしょうか?
■ これは想像なので、あまり断定的に言い切れるモノではないのですが、中国やその他途上国に於いては、やはり価格がモノをいいます。エコソルが「エコノミカルソルベント」と解釈される市場で、環境に優しいという訴求がどのくらい価格転嫁できるものかは苦しいところがあるでしょうね。VOC規制を云々するなら、中国には既に安価なUVインクや、UVプリンターが存在します。欧米日の先進国では一定のスペースを見つけることができたラテックスインクですが、中国を含むその他の市場ではなかなかスペースが見つからないというのが実情ではないでしょうか?
■ また、コピーが難しいインクで、かつ解除するのにかなり面倒なプロテクトをかけていることによって、逆に市場に広まらない…逆にHPもそこを妥協してまで広める必要を感じていない…そんなところかなと思います。
■ なお、ご質問にあるKINGJETのラテックスインク機はさほど重要ではないと思います
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