第26回上海大判プリンタ展示会2018(6):参加者からのご質問(4)

今回、JETIC社の鷹尾社長とのコラボ企画として、10名弱の方々にガイドツアーを実施し好評を得ることが出来ました。参加者のお一人から事後にいくつかご質問を頂きました。インクジェット業界擦れしていない、フレッシュで素直な質問と感じましたので、ご本人のご了解を得て、ここに質問と私なりの見解をアップ致します。

1. 中国プリンターメーカー(またはインクメーカー)が海外へ進出する割合が少ないのはなぜでしょうか?(特に日本への輸出が非常に少ない理由は何でしょうか?)
2. HPが搭載しているLatexインクが広まらない理由は何でしょうか?(会場内を見た限り、Latexインクを搭載しているのはHPとKINGJETの2社くらいだったと記憶しております)。
3. EPSON(3200)やXaar(1201)の薄膜ヘッドの市場評価はいかがでしょうか?(薄膜ヘッドは低コストであるものの耐久性に課題があるような印象ですがいかがでしょうか?)。
4. 中国メーカーが新製品を開発する場合、PATなどは回避できているのでしょうか?
5. 大判プリンター市場の更なる拡大のために今後必要なことは何でしょうか?(例えば、UVインクの安全性を改善する or UVインクを低粘度化するなどできれば産業用途だけでなくコンシューマ分野にも展開可能なのではないかと考えています)。
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4. 中国メーカーが新製品を開発する場合、PATなどは回避できているのでしょうか?

■ 本当のところを知るのは難しいところがあります。が、少なくとも私が知っているかなりの数の中国プリンタメーカーにでは「知的財産部」やそれに相当する部門があるという話は聞いたことがありません。日本では無い方が不思議です。そのあたりから判断して、中国メーカーのパテントに対する意識やケアは、少なくともこの業界に於いては希薄と感じます。

■ また、ワイドフォーマット機のメカ周辺はかなりシンプルで、パテントでガードされているレベルの難しい技術は使われていないのではと思われます。ヘッド周辺には複雑な特許が存在しても購入品だし、駆動波形や撃ち方でバンディングを消すなどの微妙な技術はそもそも使っていないと思います。

■ ご質問の1.への回答でも書きましたが、先進国メーカーと中国メーカーは、結果として市場を棲み分けている側面もありあまりガチンコでぶつかることも無いことから、知的財産権意識の高い先進国メーカーも、さほど本気で中国メーカーのパテント抵触を監視していないということもありそうです。今後、中国メーカーが力をつけて先進国に(再)進出し、先進国メーカーとガチンコでぶつかるようになったとしたら、その時なにかでてくろのかも知れません。

5. 大判プリンター市場の更なる拡大のために今後必要なことは何でしょうか?(例えば、UVインクの安全性を改善する or UVインクを低粘度化するなどできれば産業用途だけでなくコンシューマ分野にも展開可能なのではないかと考えています)

■ それが簡単にわかれば、予言できれば苦労しない…ということではないでしょうか(笑)

■ 私も、表現上分かりやすいので「大判プリンター市場」という言葉をよく使いますが、実際には用途・目的別に要求されることは異なるので、もう少し細かく論じることが必要でしょう。

■ また、ミマキのUVF-3042のように、大判という概念ではなく小判(小型)のスキャンタイプのプリンターも開発され、スマホケースやボトルの異形なもの、ボールペン・ゴルフボールといったノベルティグッズ等向けに新しい市場を切り開いた例もあり、分野・目的も固定しないで柔らかく考えることも必要でしょう

■ 電子写真のように、同じ分野・目的の中で「速度の向上」・「解像度の向上」というのではなく、新しい技術が新しい分野を切り開く…産業用インクジェットはまだまだそういう若くダイナミックな発展ステージにあるということです。

■ UVインクの安全性向上や低粘度化を図ればコンシューマー分野にも進出可能か?否定はしませんが、「トレーニングを受けた専門のオペレーターが運用する」ことを前提とした産業用とは異なって、コンシューマー分野に求められる安全基準はかなり厳しいものがあります。そこに新たなフロンティアを求めるよりも、プロ用途の市場にフォーカスしていくのが妥当かと考える次第です

以上、5つのご質問に私なりの回答をさせて頂きました。

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