業界各社 2021年度 第3四半期決算発表状況(1):エプソン・キヤノンからの続きです
業界各社決算発表で、インクジェットになんらか関係している企業を継続してウォッチしています。前回上期決算時はコニカミノルタ、富士フイルムとリコーの3社について同じページでコメントしましたが、今回 2021年度(2022年 3月期決算)第3四半期は、年間決算を前に重要な時期で、コメントも長くなりそうなので各社毎にページを分けます。
まずはコニカミノルタから。グラフはクリックすると拡大します。数字の単位は百万円です。決算短信・決算説明会など公開情報に基づき、出来るだけ客観的に書こうと思います。
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業界各社 2021年度上期決算発表が始まりました。インクジェットになんらか関係している企業を継続してウォッチしています。今回は 11月初週に発表のあったコニカミノルタ、富士フイルムとリコーについて速報します。グラフはクリックすると拡大します。数字の単位は百万円です。決算短信・決算説明会など公開情報に基づき、出来るだけ客観的に書こうと思いますが、コニカミノルタに関しては私の前職であるため、どこまで客観的になれるかは自信ありません。行間に「怒り」が滲み出ていたとしたら、私の修行不足としてご容赦ください(笑)
コニカミノルタ
残念ながら同社の第3四半期はあまりいい結果が出たようには見えません。昨年(オレンジ)はコロナの影響で、コロナ前の 2019年(ブルー)に届かないのは仕方なしとして、今年度(グレー)の第3四半期は更に減収減益となっています。決算説明会のプレゼン資料には、細かいポジティブな側面も列挙されていますが、逆に言えばそういうポジティブ要因を相殺して余りあるネガティブ要因があるからこういう結果となっているといえます。
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昨年はコロナの異常年なので、今年の業績を対前年比で回復した・しないを論じることは大した意味を持ちません。コロナ前の 2019年水準に戻ったのか否かを同時にチェックすることが肝要です。
四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。Q1の売上高は 2019年に近いところまでに回復していましたが、今回の Q2はコロナ禍の昨年レベルにまで下がっています。Q2営業利益は赤字で、Q1の黒字分を上回って、上期は赤字ということになります。ヲイ!
↓↓ 年間業績見通しの推移、左は売上高、右は営業利益です。グラフでは見辛いかもしれませんが(逆に見辛いレベルで)売上高は微妙に上方修正し 9,000億円としています。かつては 1兆円企業だったわけで、9,000億円のトップラインに拘ったということと思いますが、それは是としたいと思います。営業利益は前回大幅に下方修正した 120億円で据え置いています。
しかし、この年間見通しを達成するには、すでに半分(1.5か月)が過ぎている、この第4四半期に何をしなければならないのでしょうか?これは単純な引き算ですが「年間見通し-第3四半期までの実績=第4四半期に必要な数値」(売上高・営業利益)なわけで、それを下のグラフに示します。
売上高はさほど無理は無いように見えますが・・・営業利益はコロナ前にも達成できていない「四半期 220億円」という数字が必要になります。これは達成可能なのでしょうか?
同社の第3四半期決算発表資料では、この営業利益の第3四半期までの累計実績 ▲102億円と、年間見通し 120億円のセグメント別ブレークダウンがちゃんと公開されています。
大所だけ単純に申せは「9ヵ月で ▲90億円の赤字を作ったデジタルワークプレイス事業は『第4四半期だけで』150億円の営業利益を産み出して、年間では 60億円の黒字に回復します」、「9ヵ月で 197億円を産み出したインダストリー事業は『第4四半期だけで』あと 83億円の営業利益を積み増して、年間では 280億円の利益とします」と宣言しているわけです。
3月になって「業績見通しの修正のお知らせ」などという適時開示情報が出ないように期待したいところです。
↑↑ なお、門外漢なのでフォローしてはいませんが、ヘルスケア事業は第3四半期までの累計赤字額はデジタルワークプレース事業より大きいにも関わらず、第4四半期ではヘビーな回復負荷を与えられていないように見えます。
この差はなんなのでしょうか?興味深いところですし、決算発表時にはこういうことも含めて丁寧な説明が必要なのではないかと思われます。
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↓↓下の2つのグラフは
「過去の決算実績&2021年度の四半期ごとの年間予想の推移」です。2019年度(青色)は実績です。2020年度(橙色)も実績ですが、企業はこの時 2021年度の年間見通し(灰色)を発表することが義務付けられています。
私はこれ・・・四半期ごとに年間見通しがどう変化するか?をかなり重視しています。企業の業績は、過去の数値は変えられず、最早意志を反映する余地がありませんが、未来の数値は変えられる=それを企業がどう発表するかに、企業の施策や意志を反映する余地があります。そしてその先行情報がどう変化しているかの差分を読むと、企業が何を考えているのかが透けてみえるからなのです。↓↓画像はクリックすると拡大します。
左は売上高です。コロナ前の 2019年度から、コロナがヒットした 2020年度にトップライン(売上高)が下がったのは各社共通現象なので特段の問題を感じません。また 2020年度決算と同時に発表した 2021年度の見通しは「コロナ前の 2019年度には届かないが、2020年度は超える」と控えめな発表をし、Q1でもその見通しを維持しました。
しかし・・・今回、そのトップラインの見通しを実質的にコロナ年の 2020年度レベルまで下方修正しました。営業利益はこれまでの発表の 1/3の 120億円に下方修正したのです。ヲイ!
説明資料によると「半導体供給逼迫」が大きな要因のひとつとして挙げられており、同業他社の説明資料にもそれは多少は言及されてはいますが、他社はそれを乗り越えて業績は回復基調であり、年間見通しの下方修正にまでは至っていません。公開情報として説明会資料にも開示されていますが、トナー工場の二度の事故への対応・・・これで逼迫したトナーがなんらか影響したのかもしれません。
また「為替レート:ユーロ 125円、USドル 105円の前提を据え置く」としていますが、現状はユーロ 131円、USドル 113円と前提よりもかなり有利な状況にあります。本当に 125円・105円で年間見通しを計算しているなら「貯金」があることになるので、それを上手く吐き出して最後は上方修正に持ち込んで貰いたいと期待しています。
インクジェットに関する言及はプロフェッショナルプリント分野で「HW:MGI加飾印刷機及びテキスタイル機中心に大幅増(前年比+48%)」「NH:インクジェット機KM-1中心に前年比も大幅増(前年比+47%)」、インダストリー部門で「IJコンポ:工業用途インクジェットヘッド販売が拡大し計画過達」とされています。
この項、(3)富士フイルムに続きます。