- 2022-2-9
- トピックス
各社の第3四半期決算発表が続いています。キヤノンやローランド DGなどは暦年決算なので、年間の本決算の発表ということになります。前回と同様に、インクジェットの多少なりとも絡む業界各社の「年間見通しがどのように推移してきたか」ということを軸に決算状況を見ていくことにします。今回はエプソンとキヤノンです。
決算短信や発表では「対前年」しか言及されませんが、前年はコロナ流行初年度でそこからの回復はある意味当然、それよりコロナ前の 2019年度と比較「対前前年比」が重要です。
なお [++ 上期のコメントはこちらを参照] をクリック頂くと、前回(上期決算)のコメントが開きます。併せて差分などをチェックするためにご活用ください。
セイコーエプソン四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。昨年の第一四半期は売上高・営業利益とも大きく落ち込みましたが、今年度はしっかり回復し、ここまですべての四半期で、コロナ前の 2019年度を上回っています。特に営業利益はかなり大きく伸びています。
↓↓下の2つのグラフは「過去の決算実績&2021年度の四半期ごとの年間予想の推移」です。私はこれをかなり重視しています。企業の業績は、過去の数値は変えられず、最早意志を反映する余地がありませんが、未来の数値は変えられる=それを企業がどう発表するかに、企業の施策や意志を反映する余地があります。そしてその先行情報がどう変化しているかの差分を読むと、企業が何を考えているのかが透けてみえるからなのです。
エプソンの場合、売上高は 2020年度にコロナで少し減りましたが、2021年度の見通しは 2019年度を超えると公表し、第一四半期決算時点ではそれを更に上方修正、今回は少し下方修正しました。第3四半期ではそれを維持しました。しかし営業利益は、コロナ年の 2020年でも前年を上回り、2021年度についてはそれを上回る予想を公表して、更にそれを毎四半期上方修正しています。今回もまた上方修正してコロナ前の 2倍に達しています。「期初にコンサバな見通しを立てて四半期ごとに上方修正する」ことで株式市場に好感を与える作戦かも知れません(笑)岸田政権が、コロナ対応で最初は厳しい施策を打ち出し、徐々に緩めることで好感度を維持する手法だ・・・と言われていますが、似ているかもしれません。とはいえ余裕がないとこういうことは出来ないので、やはり基本は好調ということでしょうね。
【追加】「今年度見通し-第3四半期までの累計=第4四半期に必要な数字」ということで、単純な引き算で売上高と営業利益のそれを求めてみると下のようなグラフになります。売上高も営業利益も無理をしている様子はなく、見通しの達成や超過達成は堅いものと思われます。
エプソンの営業利益は、この2年「第4四半期が前s四半期に比べてかなり少ない」ように見えますが、おそらく期末に大型の引き当てなどをする為ではないかと思われます。この額は、どうにでもなるので、今期の業績次第では、来年度に貯金(引き当て)を作ってスタートすることも可能という、羨ましいような状況に見えます。
四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。キヤノンは決算期が暦年なので、今回は年間本決算の発表ということになります。売上高・営業利益とも第4四半期で 2020年並みとなりました。
「過去及び今回の決算実績&2022年度年間予想」:2021年度の売上高は、コロナ前の 2019年に届きませんでしたが、2022年度はそれをクリアするぞ!と宣言しているわけです。前回、売上高はすべての四半期で 2019年を下回っているにも関わらず、第三四半期が終わった段階でもなお「年間では 2019年を上回る」と意思表示をしていましたが、結局 2019年には届かなかったということです。通常、第3四半期を締めた段階では、第四四半期は受注状況や生産計画から、かなり正確に見通すことが可能なのですが・・・
営業利益は、当初 2019年には届かないという見通しを公表し、最終的にはコロナ前の 2019年を大きく上回りました。2022年度は更にそれを上回ると宣言しています。