FOCUS社 ハイブリッド・ラベルプリンター:フレキソ+インクジェット

ラベル印刷用のフレキソ印刷機の老舗と言えば Mark Andy社 Nilpeter社が有名で、いずれもデジタル機も品揃えしていますが、ここにご紹介するのは「最初から他社製のインクジェットのプリンティングユニット(プリントエンジンなどとも称される)を搭載することを前提として設計したマシン」を製品化している英国の FOCUS社ハイブリッド機(dFlex Machine)です。まずは動画をご覧ください。

この FOCUS社のハイブリッド機には、英国ケンブリッジに所在する Industrial Inkjet Ltd.社製のプリントエンジンが搭載されています。興味深いのは、よくあるハイブリッドのパターンは「大量印刷部分はアナログで印刷、日付やロット番号等の可変データ部分をインクジェットに分担させる」というものですが、これはちょっと違います。

もちろん、日付やロット番号、住所などの可変データのモノクロプリント部分をインクジェットに分担させるという考え方は非常に妥当で、実際この Industrial Inkjet社のプリントエンジン製品群の中でも、累計で最も出荷台数が多いのは Mono Printというモノクロのプリントエンジンです。これを既に設置されているフレキソ印刷のラインに後付けするという需要がかなりあるようです。

しかし、この動画をよく見ると「画像の主要なフルカラー部分をインクジェットに分担させ、黒ベタ部分をフレキソに分担」させています。

ある種の逆転の発想に思えますが、これと同じ発想は例えば「東伸工業のハイブリッド捺染機 iugo(融合)」にも見られます。下の動画をご覧ください。画像の主要な部分(この場合は複雑なフルカラーのペイズリー柄)はインクジェットに分担させ、インクジェットが得意ではない「締まった黒ベタ」はスクリーン印刷に分担させ」ています。

「逆転の発想」と書いてしまいましたが、どこに拠って立つか次第で何が逆転かも変わってきます。「無版のインクジェット(デジタル)は可変データに有利」と思い込んでいるのは、実はインクジェット(デジタル)屋の思い込みなのかも知れません。業界を担ってきたアナログ屋から見れば「インクジェット(デジタル)の画質はもう十分に合格だよ。でも黒ベタとか、深みのあるベタとかはアナログには勝ててないよな~」なんてものが見えているのかも知れません。

かつて私は「ハイブリッド否定論者」でした折角、デジタルで「版の面倒くささから解放される」というのに、何でハイブリッドにして、その利点を台無しにしてしまうの?・・・と思っていました。が、今は「折角の無版のメリットを台無しにするとはいえ、インクジェット(デジタル)で達成できていないことをアナログに分担してもらうというのは(当面は)ありかな?」と考えるようになっています。

インクジェット技術は、その担い手の事業背景から「美しい写真画質」・「版では出せない連続的なグラデュエ―ション」などを追求する方向に注力してきました。写真プリント分野に於いては既に銀塩写真は実質駆逐され、印刷業界ではオフセット印刷に迫る・上回る画質が実現されています。それに加えて、版では不可能な「可変データ」が可能になるということで、インクジェット(デジタル)屋は油断しているフシがあります。

しかし、アナログ屋の視点からは「版ではできているエッジの切れ」とか「締まったベタ黒」なんか、全然出来てないじゃん?という側面もまた事実です。このアナログ屋とは、オフセット屋ではなく、フレキソ屋とかスクリーン屋という方面の人達でしょう。確かに商品の顔としてのラベルに求められるものは「美しいグラデュエ―ション」ではなく、「インパクトのあるベタ」とか「商品棚に並んだ時の個体間の色差が無いこと」なのでしょうね!このあたり、インクジェット(デジタル)が考えるべき重要テーマの一つなのだろうと思います。

閑話休題・・・私の前職コニカミノルタは、電子写真のラベルプリンタを商品化しています。この記事を書くために、フレキソ印刷機の大手老舗 Mark Andy社のデジタル機のサイトをチェックしてみたところDigital Oneという製品に(外観から判断すると)コニカミノルタの電子写真が採用されているようですね。

私はインクジェット推進派ではありますが、必ずしも電子写真否定論者ではなく、電子写真の方がインクジェットより間尺にあうなら、それはそれでどんどん電子写真のテリトリーを拡げて、トータルとしてデジタル化のメリットが世の中に広がっていけばいいと考えています。

テキスタイル分野で桂川電機が「電子写真による昇華転写プリンタ」を開発して、大手のチームウェアプリント業者のマークスに採用されたこともその好例と思います。(この記事の中に動画を含め紹介があります)願わくば、稀有な事例としての、電子写真によるこういう分野への参入事例が、一社だけで他に広がらない、いわば「鬼っ子」のような存在になってしまわないことをと期待したいところですし、インクジェット屋としては「なぜそれがインクジェットではできなかったのか?」という点に思いを致し、健全なる競争心を燃やして頂ければと思う次第です。

ボ~ッと生きてんじゃね~よ(笑)

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