ChatGPT:使わずに評論・批判するより、まずは使ってみましょうよ(6)

(5)からの続きです

この項の最後に、私の中高大の先輩で、その後三菱商事に勤務、またハーバード大学にて MBAを取得された溝口直人さんの facebook投稿から下記を引用しておきます。

【生成AI - 人間に求められる付加価値水準を変えてしまうだろう】

★ChatGPTなどの生成AIについてだが、一般市民の中には、「テクノフォビア(技術恐怖症)」の変形で、「機械などに人間の知恵に迫れるわけがない」と決め込み、生成AIの適切な活用に取り組みつつある特に政府や自治体の動きを小バカにする人もいる。

・・・・そういう一方で、特に世の中の良識あるアカデミズム・ビジネスでは、ここ2~3ヵ月で急速に、生成AIの活用方法の検討に取り組み出していると共に、生成AIならではの“ELSI(Ethical, Legal and Social Issues/倫理的・法的・社会的課題)論点(※)”を整理し、課題の急速な改善に取り組んでいる。これは人類としては大変健全で、心強い限りだ。

(※注)ELSI課題: 生成されたものの情報の偏りや誤りに限らず、著作権の問題やプライバシー、セキュリティ上のリスクに加え、バイアスの再生産、誤情報や偽情報といった情報環境への悪影響、及び自然環境への負荷、等の問題・・・既に優れた論説が出ているが、課題とそれへの取り組みを網羅的に纏めたものとしては、例えば阪大の以下など:

https://elsi.osaka-u.ac.jp/・・・/ELSI_NOTE_26_2023_230410.pdf

◆ このようにELSI課題を含めて、生成AIの進化に向けた人類規模の取り組みは急速に進展すると思われる。その結果、今は小バカにしている人や、まだ殆ど知らない人も含めて全人類の社会構造、特に「人間の付加価値」体系が急速に変化していくと思った方が良かろう。

・・・私風にザックリ、ひとことで言うと、こういうことだ:

(1) 従来は、大変語弊のある表現だが「凡庸な人間」でも、その人が社会に提供する「付加価値」は最低限存在した。殆ど単純実務に近い事務仕事、普通レベルの接客対応やコールセンター対応、一般的な内容の授業・講習、定型書類に近い書類作成、高度芸術でないレベルのデザイン・アートや背景音楽制作、同様のwebデザイナ―などなど。

・・・しかし、これらのことは生成AIがほぼカバーできる、あるいは、生成AIのほうが却って上手に出来てしまう、そういう時代はあっという間に来ると思っておいた方が良かろう。

(2) そうなると、人間の勝負は、主に、①生成アウトプットに適切に指示(プロンプト)出す役割、② 生成AIがアウトプットする内容をベースに、そのままでいいのか、プラスαを加えるべきか、ELSI観点から修正が必要か、あるいは複数の生成AIのアウトプットを組み合わせる役割など、「生成AIの作り出す付加価値」に追加して人間ならではの知恵からの「追加の高度付加価値」が求められよう。

(3) しかし、しかし、再び語弊のある表現だが「凡庸な人間」はその産み出す「付加価値」は、生成AI以下でしかなかったりすることになると、斯かる「凡庸な人間」の社会に対する「経済的価値」は残念ながら「ゼロ」「無価値」になる。かけがえのない命としての人間の尊厳的な価値はあっても、残念ながら「経済価値はゼロ」になり得る。そういう人間は「生産」から切り離され、「消費専門の存在」になる。

・・・これこそが、私が昔から言ってきた、人類は「高度の技術と資本を支配する一部の人間」と「大多数の “消費” 専門の人間」の二層分化するしかない、ということになるということだ。人類は、二つ目の層に属する人間も幸せな毎日を送れる、そういう社会を構築していってほしいが、そこに移るまでの「移行期」には様々な軋轢や悲鳴があり得ると思う。

・・・と、ここまで書くと、そんな社会になるのなら、生成AIもロボットも取り潰しだ!という現代の「ラッダイト運動」(19世紀の英国で起こった「機械取り壊し運動」)的な動きも出てくるだろう。

⇒ 生成AIや他AIは、それほど、これからの人類社会にとてつもないインパクトをもたらすと私は思う。

大野追記:そういえば George Orwellが ITによる徹底的な管理社会を描いた小説「1984」年は既に過ぎてしまいましたが、Fritz Lang監督による世界最初の SF映画とされる「Metropolis」の設定年である「2026」年はもうすぐですね!

これは映画制作年 1927年の 100年後のディストピア的世界(2026年、ゴシック調の摩天楼がそびえ立ちメトロポリスと呼ばれる未来都市では、高度な文明によって平和と繁栄がもたらされているように見えたが、その実態は摩天楼の上層階に住む限られた知識指導者階級と、地下で過酷な労働に耐える労働者階級に二極分化した徹底的な階級社会)を描いたものですが・・・

生成 AIを操れる者とそうでない者でこういう階級が生まれることを暗示していたのでしょうか?・・・知らんけど(笑)

ChatGPT禁止企業の皆さん、くれぐれも「大多数の “消費” 専門の人間」地下で過酷な労働に耐える労働者階級」にならない様に、会社の規則はさておいても、自衛しましょうね!

溝口直人氏 プロフィール

溝口 直人 / マネージングディレクター(DRCキャピタル(株)サイトから

1972年、三菱商事(株)に入社。技術関係取引に従事後、ハーバード・ビジネス・スクールに会社派遣留学。卒業後、主に豪州の石炭マーケティング・投資事業に従事、豪州における石炭採掘JV企業における役員を務める。1998年三菱商事の金属資源企画開発部長。1999年に三菱商事証券(株)を取締役副社長として立上げ、プライベートエクイティー・ファンドへの分散投資など機関投資家向け投資商品を企画・開発する。2000年より、三菱商事新機能事業グループの事業戦略室長(兼)CIOとして、金融・IT・コンシューマー・ヘルスケア等事業分野における新規事業の経営戦略や部門内情報システムを統括。2005年にDRCグループに参画。現在、(株)好日山荘、チャンルージャパン(株)取締役。

東京大学工学部卒業。ハーバード大学経営学修士(MBA)

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