- 2025-4-25
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弾丸ツアーで万博に行ってきました・・・あ、嘘です(笑)つくばエキスプレスの万博記念公園駅から至近距離にある理想科学開発センターのエクスペリエンス・センターで開催された「OPEN DAY」(プリントクリエイト事業部主催)に行ってきました。
迎えてくれたのは理想科学の三馬秀利執行役員(プリントクリエイト事業部長)と、リコーの・・・?いえ、4月1日からは理想科学の高嶋靖典さんです
このイベントは理想科学プリントクリエイト事業部が有する「3つの”D”」(DTS=Direct to Screen・DTF=Direct to Film・DTG=Direct to Garment」の製品群を一堂に並べて、販売店・顧客に紹介するものです。理想の直販部隊とその顧客の他に、販売店(セルカム・ユーロポート・東洋コーポレーション)が集まり活況を呈していました。
インクジェットに絡んでいると、理想科学と言えばワンパス IJ機「Orphis」やその高速機「VALEZUS」、また最近では東芝テックから事業継承したヘッドを活用したプリントエンジン新ブランド「Integlide」を思い出すと思いますが、祖業は孔版印刷で、孔版印刷機事業(リソグラフ)の他に、Tシャツ市場を中心にスクリーン印刷関連事業を展開しています。
最近の若い世代は経験はないかも知れませんが、かつて「プリントゴッコ」という、家庭で使える簡易孔版印刷機を発売しており、インクジェットプリンターがまだ普及していなかったころの年賀状の大半はこれで印刷されていました。正に年末の国民的行事だったのです。これをやったことがあるかどうかで「昭和世代」「それ以降」が分かれるのかも知れません。
【RICOH Ri4000】
RICOHの最新鋭 DTG機 Ri4000が展示されていました。国内においてはリコージャパンは扱わず、理想科学が扱うということでちょっと話題になったマシンです。
特徴としては「前処理剤(エンハンサー)+白インク+色インク」を本体内で撃つことができ、予めの前処理が不要となること。これにより従来は DTG機が得意ではなかったポリエステル地へのプリントもこなせるようなったことです。更に DTGの他に DTFにも対応、プラテンの高さの自動調整など、高度な機能全部入りの最新機種です。これで価格は(サービスとの組み合わせで変動しますが)300万円前後とのことです。イスラエル企業のコーニットデジタルが既に実現していますが、これをかなりの低価格で実現するものと言えるでしょう。
しかし何故リコージャパンではなく理想科学なのか?これは私の想像であり、またリコーに特有なものではないと思われますが・・・一般にトナー系の電子写真(小型プリンター・MFP~大型高速プロダクション機まで)を扱う販売会社にとっては、インクジェットは「異物」なのではないかと思われます。高速のロール to ロール(リコーでいえば VC70000とか 80000等)は、「紙へのプリンター」という点でまだ「身内」として受け入れれらている、むしろそのセグメントは電子写真が絶滅したのでメインに据えられているかと思われますが、「布メディアにプリントし、それがオフィスプリントのように経費ではなく、商品となる」って・・・何なの?(笑)
更に、紙へのプリンターは既にかなりの事業規模となっている環境下で、新参者の「布へのプリント」はまだまだこれから市場を開拓していく必要があり、かつ事業規模は(紙プリント部門から見れば)僅かなものです。そこを担当させられるって・・・下手をすると「左遷感」さえ生じさせかねず、紙プリントの花形部門からは「お荷物」「二流部門」とさえ見られかねません。実際にはわかりませんが、少なくとも私が前職で布へのプリンター(ナッセンジャー)を担当することになった初期はそんな感じがしたものです。ドMの私はそれが快感でしたが(笑)一般には元気が出づらいでしょうねえ・・・
今は「紙へのプリントなんて衰退産業」という時代になり、逆に産業用インクジェットに日が当たり始め、「布へのプリント?いいじゃないか!」なんていう時代になってちょっと留飲を下げているところではありますが(笑)それでも、会社ってここまでの花形部門出身の人達が牛耳っているので「布の年間プリント料はXXX億平米、その10%を取ったとしてもXX平米、そこに供給するインクとプリンターで数千億円の事業になるよな?」みたいなアホな妄想を描きがちです(笑)こういう発想をする輩(しかできない輩)は、産業用インクジェットの企画マンとしては全く使えないのでクビにした方がいいと思います(笑)
実際、RICOHではここで販売チャネルを分けるようです。正解でしょうね!紙・電子写真でまだ食えている間は、そこの人達と一緒にしない方がいいと思います。欧米ではそれを実現する母体組織があるようですが、日本にはそれが無く・・・ということで理想科学が扱うことになったのでしょう。RICOHでは下位機種の内 Ri2000も3月末で取り扱いを停止したようです。
会社全体の事業規模はリコーが2兆円以上に対し、理想科学は約750億円と、約1/30ではありますが、理想科学の場合は孔版印刷が祖業でもあり、プリントクリエイト事業部は「社長直轄事業部」とのこと。事業規模とは関係なく、こういうことはモチベーションに大きな差を生むことが容易に想像できます。
ここで扱うことになる Ri4000は OEMとして理想ブランドとするのではなく、RICOHブランドで売り、そこに「Supported by RISO」というラベルを貼って対応しています。OEMの調達を担当されたことがある方はご存知かと思いますが、たかだかブランドを変えるだけで安全規格や諸々の分野で無意味とも思えるペーパーワークが山のようにあります。ならば RICOHブランドのままで、RISOがサービスを担当するというラベルを貼って対応する・・・こういう柔軟な発想ができるんですね。これ「大企業の品管部門」だったならばとても面倒なことになるのでは?(笑)
【GOCCOPRO(ゴッコプロ)】
もう既にお馴染みとは思いますが、(インクジェットではなく)サーマルヘッドを使った簡易製版機です。従来の乳剤・露光・現像・・・というプロセスをドライでやってしまうというもので、耐久性や解像度などが完全互換とはいかないまでも、実質的には価格とパフォーマンスのバランスはちゃんと取れているとのことです。GOCCO・・・もちろん「プリントゴッコ」へのオマージュです。わかる人は昭和人(笑)
製品情報はこちら、及び専用サイト「GOCCOPRO FORUM」にて
【DTF機:mR2】典型的な DTF機ですが、プリンターと、パウダー振りかけ、乾燥機までは一体となったモデルです。こちらは公式サイトにはまだ掲載されていませんが、こちらに少しレポートがあります。
【RICHの DTF機:ここではビデオ展示でしたが、これも国内では理想科学が扱うことになるようです】
【参考出品:D2M rapid Screen】
参考出品とのことですが D2M=Direct to Mesh・・・すなわち、メッシュ(スクリーン)に UV硬化する乳剤(エマルジョン)をインクジェットで撃ち、それを UV硬化させることで乳剤塗布・露光・現像の工程を不要とするものです。では GOCCOPROとは競合しないのか?
GOCCOPROはサーマルヘッドで版を作るのに対し、こちらは寄りコンベンショナルなスクリーンに近く、細かく言えば「厚み」が異なる(こちらの方が厚い)ことによってスクリーン印刷のインクの押し出し量が増えて、出来上がりの成果物の感じが微妙に違うようです。
【スクリーン・DTG・DTFの成果物の違い】
写真に撮ると殆ど差は分からず、また敢えて並べてみないとわからない程度の違いではありますが・・・一番左はスクリーン印刷:近くに寄ると白は一番しっかり載っています。驚くべきは模様の部分はたったの3色の色分解版でプリントされていることです。一番右は DTF:白インクの載りはスクリーンには及びませんが十分な印象です。敢えて言えば模様の部分はフイルムとなってしっかりボディに貼り付いているので通気性がないので汗の抜けは気になる人もいるかもしれません。小さなマークなどなら問題はないでしょう。中央は DTG:デジタルの簡便性は取り入れられるし、フイルムを貼りつけるわけではないので通気性も確保されています。白の載りは3種類の中では一番薄い気がします(写真で撮るとわからないレベル)
どれを選ぶのか?は、それぞれの特性に合わせて選ぶことになるのでしょう。気になるなら全部持っておけば(笑)
【スクリーン印刷機:ANATOL VOLT】
カルーセル方式のスクリーン印刷機です。コンプレッサーが無く全て電動のため「驚くほど静か」!この手の作業は2人のオペレーターでやるのが普通のようですが、静かなので2人のコミュニケーションは怒鳴らなくても普通の会話のトーンで可能です(笑)海外製で故障などの対応が気になりますが、そもそもこなれた技術なのでまず呼称はしない(万一すれば勿論理想科学で対応)とのことで。
というわけで、短い時間の中で「理想科学のスクリーン印刷技術・製品の全部見せ」イベントでした。リコーや大手デジタル機メーカーと比べると一桁半ほどサイズの小さい理想科学だからこそ可能な柔軟さや「やんちゃさ」が満載の展示会でした・・・あ、やんちゃなのは三馬さんのキャラか?(笑)