今回、JETIC社の鷹尾社長とのコラボ企画として、10名弱の方々にガイドツアーを実施し好評を得ることが出来ました。参加者のお一人から事後にいくつかご質問を頂きました。インクジェット業界擦れしていない、フレッシュで素直な質問と感じましたので、ご本人のご了解を得て、ここに質問と私なりの見解をアップ致します。
1. 中国プリンターメーカー(またはインクメーカー)が海外へ進出する割合が少ないのはなぜでしょうか?(特に日本への輸出が非常に少ない理由は何でしょうか?)
2. HPが搭載しているLatexインクが広まらない理由は何でしょうか?(会場内を見た限り、Latexインクを搭載しているのはHPとKINGJETの2社くらいだったと記憶しております)。
3. EPSON(3200)やXaar(1201)の薄膜ヘッドの市場評価はいかがでしょうか?(薄膜ヘッドは低コストであるものの耐久性に課題があるような印象ですがいかがでしょうか?)。
4. 中国メーカーが新製品を開発する場合、PATなどは回避できているのでしょうか?
5. 大判プリンター市場の更なる拡大のために今後必要なことは何でしょうか?(例えば、UVインクの安全性を改善する or UVインクを低粘度化するなどできれば産業用途だけでなくコンシューマ分野にも展開可能なのではないかと考えています)。
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3. EPSON(3200)やXaar(1201)の薄膜ヘッドの市場評価はいかがでしょうか?(薄膜ヘッドは低コストであるものの耐久性に課題があるような印象ですがいかがでしょうか?)
■ EPSONの3200ノズルヘッド(4720ヘッドとも呼ばれている)に関しては、そもそもEPSONの視点からは「目的外使用」もいいところなので、公式なコメントは出ないと思いますが、一年保証すると謳っているいるところだけから判断すると、溶剤インクやUVインクを入れて直ぐに壊れるほどヤワではないというところでしょうか…
■ XAAR1201を搭載したデモ機を展示していた某社に「どう?」と訊いてみたところ「まだいろいろあるね」とのこと。完璧だというコメンドではなかったですが、私の経験からは、まあどんなヘッドも市場投入の初期段階では「いろいろ課題がある」のは普通で、今後改善されていくものと想像しています。
■ 薄膜という言葉のニュアンスからは、なにか「壊れやすい」「fragileな」印象がありますが、EPSONやXAARが満を持して市場に投入していることから見ても、インクジェットヘッドとして本質的に壊れやすいとか、致命的に短寿命ということはないのでは…と想像されます。
■ それより気になるのは、どちらのヘッドも、どのインク種に対しても十分な耐久性があるとした場合、理屈の上からは安価なEPSONヘッドに需要が流れてしまうことになるということです。EPSONの3200ノズルヘッドを担いでいる中国人の某氏によれば「XAAR1201に比べて、ノズル数は2倍以上(1200ノズルvs3200ノズル)で、価格は1/5(EPSONの3200は1700RMB=30,000円弱、XAARは150,000円くらいということか)、実質1/10の価格だ!」と豪語していました。
■ もちろん、まともな中国メーカーは「DX5のようにEPSONが公式に販売するならともかく、剥ぎ取りヘッドはいつEPSONが止めに入るかわからないので、ウチは手を出さない」と言っています。少なくとも表向きは(笑)
■ しかし、仮にXAARや他社の同等品と耐久性に差が無いヘッドが、簡単に破られてしまう程度の暗号プロテクトで、1/10の価格で世に出回るとどういう成り行きになるのか?UVや溶剤を入れたら、寿命も1/10で壊れる程度にヤワに作られていたなら、ある種のバランスが成り立つけれど。
■ そもそもSOHO向けの「水系顔料インク」で使われることを想定したヘッドなので、水系インクに対してはヤワではない?とするとEPSON自身が推進している、水系インクを使用するテキスタイルプリンタはどういうことになるのか?このヘッドを使った安価なテキスタイルプリンタが出てきたら、どういうことになるのか?
■ 同等性能が事実だとしたら、10倍の価格でXAAR1201を売っているXAARはどう対抗してくるのか?また、EPSONから公式にヘッド(プレシジョンコア)を購入しているメーカーはどういう立場になるのか?
■ そもそも剥ぎ取りヘッドや、剥ぎ取り行為に対してEPSONが公式の声明を出すとは思えませんが、どういう対応をするのか、しないのかは、何故簡単に破られる程度の暗号で「なんちゃってプロテクト」しかしていないのかと併せ、気になるところではあります。