ITMA 2023(1):まずは総括から 【会場の建付け・出展者概要】

巨大な展示会場「Fiera Milano」・・・赤枠の中は東京ビックサイトの同スケール画像です。どこがビッグやねん(笑)

通常は各ホールや各社の紹介をしてから総括を書くのですが、今回は6週間の時差ボケ(いや老人性か?(笑))の調整が長引いているので、まずは全体像の印象や、気になった点などの総括から始めます。

【会場の建付け・出展者概要】

1.インクジェット機は HALL7に集中していました。上のフロアプランのような配置で、ロゴを貼りつけた企業が出展していました。

2.HALL5にもTシャツプリント向けスクリーン印刷機(MHM社、M&R社など)やインクや材料系のメーカー(富士フイルムなど)が出展していました。

3.出展企業の中で最大の面積を誇っていたのはエプソン(1,000平米?)、2階建てで出展費・工費合わせて 2milユーロ(3億円)という噂あり。また出張者もプリンター関係者のみで 60名、他にヘッド関係者の出張者が別枠であり、少なくとも 70人以上という大規模なデレゲーションで存在感を見せていました。また技術の幅も広く、深く、流石はエプソンという感じです。

4.一方、最も賑わっていたのはお世辞抜きで KORNIT DIGITALでしょう。専有面積はエプソンの半分程度ですが、単位面積当たりの混み具合はその逆数の2倍を遥かに超えていた印象です。

例によってファッションショーもやっていました。顧客に訴求するのにヘッドの性能を初めとした高い技術力を前面に打ち出すエプソンと、その世界観を表現するファッションショーをやる KORNIT ・・・良い悪いではなく、そのスタイルの差は際立っていました。


KORNIT DIGITALの Ronen Samuel社長と

また KORNITは社長の Ronen Samuel自らが先頭切って接客をしていましたが、エプソンの Ronen Samuelに相当する方がどなただったのかは分かりませんでした。

5.ユニークな技術を展示して「Waterless」や「再生・再利用」をアピールしていたのはミマキエンジニアリング。昇華転写インクで染色したものに、ある溶剤を塗布・過熱して不織布などにインクを吸い上げる「ネオクロマト技術(日華化学・エレファンテックが協力)・蘭 COLDENHOVE社の転写紙と MONTI ANTONIO社のヒートローラーのセットによる「顔料転写」など、他社が出していないユニークな技術を展示。ここも池田社長を始め、幅役員(あ、羽場役員(笑))幹部の顔が見える企業です。

6.コニカミノルタは稲田寛樹氏が事業部長として帰ってきてチーム全体が活気があった印象。産業用プリンター事業全体の責任役員の植村氏も登場していました。大野が責任者だった時代に買収した代理店 Verga社の Enrico Verga氏(COO)やサービスチームも健在で、小規模ながら日本企業による欧州の企業買収では数少ない成功事例だと見えます。

7.逆に、出展していなかった企業として代表的なところは「HP」「DURST」「MOUVENT(スイスのベンチャー RADEXを包装機器の大手 BOBSTが傘下に置いたもの)」などでした。

8.特に HPは前回のバルセロナの ITMA 2019で「満を持して」昇華転写機 STITCHを最後発でデビューさせたにも関わらず、そのたった 4年後にブースごと影も形も無い・・・というのは流石に尋常な事態ではないように思われます。Interpack 2023でも、前回 2017年の時には Indigoの包材分野仕様のものを大々的に展示していたものが、今回は非常に小規模なブースで、カートリッジビジネスの部隊が展示するに留まっていました。展示会予算を 40%カットしたという業界コンサルもおり、なんらか方向転換をしているのかもしれません。

9.STITCHに関しては ITMAがカバーしている本格アパレル分野からの撤退なのか、なにか別の意図があるのか今のところ分かりません。積極的に何かを発表している様子は無いので日本 HPの方にでも訊いてみたいと思います。

10.DURSTは産業用インクジェット分野では、非常にしっかりしたマーケティングを行い、信頼性の高いマシンを開発することで定評がありますが、最近は 3.2m幅のホームテキスタイル分野に注力していた印象で、また北イタリアやオーストリアのサイトを充実させて、そこでオープンハウスを行うという方向を打ち出していました。また BOBST傘下の MOUVENTのテキスタイル機は、親会社の BOBSTのフォーカスを外れたものと思われます。

11.注目株として話題となったのは「MAS」・・・ワンパス機「LaRio」をいち早く市場投入して有名になり、その後米国資本の DOVER傘下となっていましたが、そこの技術屋集団がスピンアウトして立ち上げたのが「MAS」という会社です。MSの元オーナーの Millini(ミリーニ)親子は関係していないとの公式発言ですが・・・どうなのでしょう?逆に、キーとなる技術者の Roberto Usai氏他、技術者がごっそり抜けてしまった MSは今後どうなるのでしょうか?

12.もう一つの注目株は京セラの「FOREARTH」でしょう。地球の為に(for earth)という意味を込めたブランド名がベタで微笑ましい気がします(笑)初代機なので、産業用機器に不慣れと見えるいくつかの気になる点はありましたが、どんなメーカーも最初はそうやって学んでいくものなので、時間の問題でレベルは上がっていくものと思われます。

13.京セラヘッドは IJテキスタイル分野に広く使われ、この分野のインクジェット化推進に多大な貢献をしてきましたが、その京セラ自身がプリンターを自社開発して市場投入すると、それなりの波風は立つものと想像されます。大野視点では、そういうことはエプソンでもコニカミノルタでもやっているわけで、それ自体は(嫌がる顧客がいたにしても)問題ではないと考えています。課題があるとすればヘッドの価格政策を初めとして、コンポネント事業とプリンター事業全体の統括責任者は存在するのか?・・・みたいな部分でしょう。南フランスの IMPIKAも買収したわけで、それも含めて全体の方向を包括的に語れる方はおられるのでしょうか?

14.中国の大手 Atexco(旧・杭州宏華)は、日本の東伸工業と国内販売の合弁会社を設立して拡販するとのことで、東伸工業のロゴも掲示していました。中国では断トツのポジションにある Atexcoが国内の捺染工場に強いチャネル持つ東伸工業と組むと、なにかとスローな日本市場に何かが起こりそうな気がします。

15.大賑わいの KORNIT DIGITALや巨大ブースのエプソンと比べて小ぶりなブースではありましたが、BROTHERは、なかなかしっかりした商品戦略を持って明快な展示をしていました。尾関さんという女性の開発部長が自ら説明してくれましたが、ご本人の希望で顔写真は出しません。でも、海外では目立ったもん勝ちですよ(笑)是非、顔と名前を売ってください!

16.蘭 SPG社は動態展示を行わず、セミナー会場や面談スペースとしてスペースを確保していました。ここには親友がいるので突っ込んでみたところ、SDGsを自ら実践しているのさと笑っていました(笑)まあ、確かに動態展示しない分、電力消費は少ないよね(笑)

17.前回のバルセロナでは存在感を誇っていた「HP」「DURST」「MOUVENT」が今回姿を消しましたが、次回の ITMA 2027(Hannover開催)までにまた再編が起こっている・・・その対象もなんとなく見えたのが今回の ITMA 2023だったように思います。どこが?まあ個人的憶測に過ぎないのでここで記述するのは控えます。セミナーや報告会などのあとの懇親会で「あくまで私見」として呟くことはあるかもしれませんが(笑)

技術トレンド編に続きます

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