ITMA 2023(5):各社ブース コニカミノルタ KONICAMINOLTA

【コニカミノルタ KONICAMINOLTA】

★ このホール一番の集客力のある KORNIT DIGITALと、広大なブースを構えたエプソンに接する場所にブースを構え、さほど大きくはなかったけれど、その2社への人の流れを取り込めたという意味では結果として悪いロケーションではなかったように見えます。

★ 先にネガティブ側面を書いておくと、同社は4年連続で黒字見通しから最終赤字決算となったという事実があります。テキスタイル事業が原因を作ったわけではなく、主因は一言で纏めれば「買収政策の失敗」ですが、一般的に赤字が続く環境下では開発投資や費用投下は大きな制約を受け、日本の企業の場合それは全社全事業部門一律に行われることが多く、同社のテキスタイル部門も例外ではなかったと想像されます。

★ 実際、私が事業責任者だった最後の ITMA(2015)年から自社開発エンジンのプリンター新製品は発表されていません(改良・改造などで運用安定性を向上させる努力はしてきたと想像します)。前章で触れたエプソンとは対極の環境下に置かれていたと想像され、そのあたりが今後にどう影響するのかは要ウォッチでしょう。今回も予算の制約からかブースもそう広くはなく、現行の保有機種を並べるということはしていません。

★ さてバランスを取るわけではありませんが(少しは取ってますが(笑))同社のテキスタイル事業に期待が持てるとすれば、この2年、ラベルプリンター部門に居た稲田寛樹氏が事業部長として昇格復帰したことでしょう。かつてイタリアの代理店を買収した際には自らイタリア駐在を志願し(その時は日本サイドが手薄になるので断念してもらった)、その後「世界で最も大きく勢いのある中国市場で勝負したい」と再び志願した人物です。私は志願兵を最も重視する(逆に「私は企画書を書く人、実行するのは別の人」・・・というような企画マンは信用しない)ので、中国駐在志願は止めませんでした。実際、そこでいい仕事をしてきました。

★ たまたま私の部下だったことがある経緯から個人的によく知った仲・・・というだけではなく、業界にもその名前は広く認知されていることは別記事で触れました稲田氏がここ暫く厳しい経営環境下に置かれていた同社のテキスタイル事業をどう舵取りしていくか?ここは大きな注目点でしょう。

★ 今回は各社とも顔料インクを前面に打ち出していましたが、同社も「ViROBE」というブランド名で発表していました。まあ、これはまだ本格的なレースが始まったわけではなく、各社とも同じような利点を主張しており、風合いや価格なども含めて優劣の結論を出すには時期尚早でしょう。同社は強みとして、銀塩フィルムや重合トナーで培った技術などを主張しています。

★ 目立たないところでは、顧客が保有しているデータベースにアクセスして画像のマージやファイル名の主力など、現場作業の利便性を向上させるということを地道にやっているようです。これはかなり意識と技術力の高いソフト技術者が現場に駐在していることが必要条件でしょう。

★ 別の事例ですが、日本のヘッドメーカーは自社ヘッドを駆動する駆動基板を持っているハズで、本来はそういう「純正ボード」がヘッドの性能を最も効率よく引き出すと考えられます。にも拘わら GISや METEORのような「駆動基板メーカー」が存在できる・そちらが使われることが圧倒的に多いのは何故でしょうか?

★ 実は「駆動基板」というハードウェアが重要なのではなく、それをどう動かすか?というアプリが重要なのです。そういうアプリを開発して供給する(べき)ソフトウェア技術者は日本に居て顧客現場に出ることは通常ありません。こういうアプリは顧客の細かい要望に応えて現場でちょっとした変更をしたり機能追加したりという「ミニ開発」ができるフットワークが重要なのですが、現場から遠く離れ、かつ開発手順が硬直化した日本に居ては無理です。GISや METEORのカスタマーサポート技術者は、常に顧客と話して「お困りごとを現場でチャッチャと解決する」ということをやっているのでしょう。

★ イタリア駐在の本橋氏も現場に近いところでそういう仕事をしていると思われます。こういう地道な関係構築は非常に貴重な財産と評価したいと思います。

↑↑ テキスタイル事業の現地人トップ Enrico Verga氏。彼の元にいる現地営業やフィールドサービスマンも殆ど離職することなく、永年勤続を続けている。↓↓ 若手海外営業マン丹野氏

同社は 6月 9日に顧客サイト訪問ツアーを主催し、シングルパス機「SP-1」が安定稼働している様子をツアー参加者に公開していました。この顧客もそうですが、同社の方針として「設置顧客先での安定稼働・稼働率向上を徹底的にサポートする」という姿勢が全ての顧客に対して行きわたっている印象です。

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