- 2022-7-10
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久しぶりに、インクジェットでのモノづくりベンチャー企業「エレファンテック」を訪問しました。そこで紹介されたのは、インクジェット屋視点からは、なんとも非常識というか、常識外れというか、常識にとらわれないというか・・・ちょっと驚くべきインクジェットの使い方を形にした製品!
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約 3x7cmの白いプラスチック板で「Tabby Print」とあり、裏には天気図の「雪❆マーク」みたいなものが規則正しくプリントされています。はぁ?なんじゃ、これは?
訊いてみると、「インクジェットのプリントは、同じ画像データをプリントしても、ノズルの着弾誤差や、微細な気流の影響などで、毎回全く同じプリントの再現はできない」・・・悔しいけどその通り!だからマルチスキャンやインターリーブなどの「誤魔化しの技術」でそれを極力均一化して目立たなくするんじゃんか!着弾誤差が増幅しないように、極力メディアとのギャップを小さくして撃つ。加えて、MEMSなどの超高精度加工技術で均一なノズルを作ろうとか、均一なピエゾを作ろうなどと努力する。それが「インクジェット屋の常識」だ。
ところがエレファンテックという「非常識集団」(笑)は、「毎回完璧に同じ画像が再現できない=それって指紋みたいなもんじゃんか」という発想をする。更に、それを担保するために「メディアとのギャップをわざと適度に大きくとる=着弾誤差が増幅される」・・・なんと、インクジェット屋の常識と努力の方向からはまず出てこない異端の発想!コロンブスの卵・・・
複製不可能なものを、紙幣・タバコや酒類などの課税対象品・デジタルアートなどの偽造防止に活用する手法は、ホログラム・ステルスインク・NFT(ブロックチェーン)など様々な方法が提案されており実用化もされています。エレファンテックの TabbyPrintがその一つの座を獲得できるかどうかは、まだ未知数です。
しかし、ポイントは「指紋のように唯一無二で再現できないユニークなものを生成する為に、わざとインクジェットの着弾誤差を増幅させる(=メディアギャップを大きくする)」というエレファンテックの非常識さ・常識外れさ・常識にとらわれなさ・・・なのです。
タダモンじゃないこの自由さ・異端さ!大企業の中にいたら異端審問の末に焚刑もんだな(笑)
私が会社に入った当時には、研究所や開発部門には「ヤミ研」と称して、保守本流の開発計画とは別に、技術屋が興味を持ったことを「ヤミ(=予算化されていない)」で研究する気風がありました。その後、コンプライアンスとか残業規制とかメンタルケアとか働き方改革とかに名を借りて・・・技術屋魂を挫いてサラリーマン化・役所的公務員化させるような諸施策がこれでもか!と導入されるに至り、そういう気風は姿を消してしまいました。
エレファンテックには、大企業が失ってしまったそういう気風が漂っている・・・そんな風に思います。