地名の研究 Ortsnamenanalyse (1) ドイツに多い地名の分布を定量化する試み

ドイツの地名には -berg,-burg とか -dorf,-stadt 等が付く地名が多いとは誰もが感じることでしょう。また北ドイツに住んでいて南ドイツに旅行などすると妙に -heim,-ingen 等が付く地名が多いように感じられますし、また興味があって旧東独地域をドライブすると -ow,-itz 等が付く地名がやたら多くて、特に -ow 等はその語感・音の響きなどからも何となくスラヴ系の地名の名残なんだろうなということを感じます。地域によって地名にも偏りがありそうです。

こういう「何となく...感じる」というのをもう少し定量的に表現できないものかと常々考えていました。

ADACなどが発行している道路地図帳の巻末にある地名索引を元に数を数えればいいのでしょうが、あまりに膨大で現実的ではありません。スキャンしてデータ化してデータベースソフトを使うのがいいのでしょうが、文字が小さすぎて読み込みエラーが多く使いモノになりません。最近になってドイツ全土の電話番号簿が CD-ROMに収められるに至って、ようやくそのデータを Accessなどのデータベースソフトに取り込んで加工し、地名の数や、その地域的偏りの分析が簡単に?行えるようになりました。(註:この記事の初稿は 1995年頃に書いたものです。今は個人情報保護などの観点から、個人名・電話番号・住所が収録された CD-ROMが販売されているかどうか定かではありません。)

ここで地域の分類には PLZ:Postleitzahl(ポストライトツァール:ドイツの郵便番号)を用いました

手に入れた電話番号 CD-ROMの地名に州の名前が入っておらず、やむを得ずにという面はありますが、この PLZは逆に個別の住所には必ず付けられており、データベースマーケティングや民力の分析などには欠かせないツールとなっているようです。

私が最初にハンブルクに駐在した頃は4桁でしたが、東西ドイツ統一後は5桁となっています。その1桁目のエリアと州の対比を右の地図に示しておきます。



「地名がいくつあるのか?」というのは、「世界の言語の数はいくつあるのか?」というのと似たようなところがあって議論のある問題ですが、ここでは割り切って電話番号 CD-ROMに登録されている「PLZが附番されている地名」としました。ベルリンやハンブルグなど大都会の中の地区には人口的にも地方の村よりよほど大きいモノがかなりあり、そういう地区の中の地名は落ちてしまい、田舎の部落名はカウントされてしまうという不都合は免れませんが、全体の大まかな傾向に影響を与えることは無いだろうと考えました。これでいくと『地名』は 18,623件登録されています。

細かい説明は次回に譲るとして、下の表を遠目で眺めてみて下さい。左端に「ドイツの地名に有りがち」な「-接尾、接頭-」単語を挙げてありますが、これを見るだけでも地域的に偏りがありそうだということが「何となく感じられるでしょう」(笑)

例えば -dorf なんてどこにでもありそうな気がしますが、登録されている -dorfは 1,378件あり、実はその大半が「0 と 1」の地域にあることがわかります。有名なデュッセルドルフ Düsseldorfの PLZ は 40000ですが、4の地域には -dorfは 6件しかなく大いなる例外だということになります。

次回以降、このあたりを「何となくの感じ」ではなく、統計的に定量的に見ていこうと思います。

地名の研究 Ortsnamenanalyse (2)に続きます

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