秋田エプソン:ヘッド製造の新棟竣工 - 将来的に生産能力を3倍へ拡大 –

理想科学による東芝テックのヘッド事業分割承継と同じ、12月 22日付の発表だったので少し目立たなかった感もありますが、秋田エプソンのニュースリリースを紹介します。

「セイコーエプソン株式会社(以下 エプソン)のグループ会社である秋田エプソン株式会社(以下 秋田エプソン)は、インクジェットプリンター用ヘッド(以下 プリントヘッド)の生産能力増強のため、総額約35億円の投資を行い、2022年11月から建設していた新棟が、このほど竣工したことをお知らせします。新棟の竣工により、秋田エプソンにおけるプリントヘッドの生産能力を将来的に現在の3倍程度に拡大する見込みです。」(全文はこちら)

ーーー

なおエプソンは5年以上前の 2018年 7月 9日に下記のプレスリリースを公開しています。

長野県 広丘事業所に、インクジェットプリントヘッドの新工場が竣工
– 『PrecisionCoreプリントチップ』の生産能力を約3倍に拡大 –

セイコーエプソン株式会社(社長:碓井 稔、以下 エプソン)は、このたび、2016年秋より建設を進めていた広丘事業所(所在地:長野県塩尻市)内の新工場が竣工したことをお知らせします。

新工場は、エプソンの最先端のインクジェットプリントヘッド『PrecisionCore(プレシジョンコア)プリントヘッド』のコアとなる構成部品『PrecisionCoreプリントチップ』の生産を行います。新工場は2018年度内の稼動を予定しており、将来的には、エプソンにおける『PrecisionCoreプリントチップ』の生産能力を現在の約3倍に拡大させる計画です。

(中略)

新工場の稼動によって、これらの事業領域の拡大に伴って中長期的に増加するプリントヘッドの需要を支える生産体制を確立することができます。さらに、この生産能力を生かして、大判プリンター向けの『PrecisionCoreプリントヘッド』の外販をグローバルで展開し、パートナーとともに、商業・産業領域におけるデジタル印刷へのシフトを加速させていきます。

なお『PrecisionCoreプリントチップ』は現在、長野県の諏訪南事業所で製造しておりますが、新工場の稼動により 2拠点体制となります。また新工場は、災害対策に優れた建物構造および設備を採用し、事業の継続性も強化しています。

そして、新工場は既存工場と比較してスペース生産性 20%増を計画し、工場内には研究開発機能も備えているため、生産技術などの開発を推進することで、プリントヘッドの品質や生産性向上においても重要な役割を果たします。

■新工場の概要

名称 広丘事業所9号館
所在地 〒399-0785 長野県塩尻市広丘原新田80
機能 PrecisionCoreプリントヘッドの生産(前工程)および研究開発
竣工 2018年6月30日
建築面積 10,653m²
延床面積 46,915m²
建築構造 鉄骨造 地下1階・地上5階建て
投資金額 約255億円

(全文はこちら)

ーーー

大野コメント

1.エプソンのヘッドの生産体制の全容をちゃんと理解はしていないのですが、二つの記事の文脈からは、まず広丘に前工程としてのヘッドのチップの生産設備に投資(約 255億円)し、生産能力を3倍に拡充し、ここで後工程としての組立工程の建屋を完成させ、後工程の能力も3倍に拡充できる準備をした・・・というように読めます。

2.前工程(工場)の建設は「2016年秋から」進めていた・・・とありますが、そこから起算すると今回の後工程(建屋)の竣工まで丸7年以上が経過していることになります。かつ「秋田エプソンにおけるプリントヘッドの生産能力を将来的に現在の3倍程度に拡大する見込み」とあることから、現状ではまだ3倍と計画した数量をかなり下回っていると推察されます。

3.この間、ヘッドを含むインクジェット事業を強力に推進してきた碓井社長が会長となり、更に誰もが予想できなかったコロナ禍が世界を席巻し、これも想定外の戦争が勃発し、欧米の異常なインフレやエネルギー高騰・・・と、経営環境は決して事業に追い風が吹いていたとはいえない厳しいもので、結果としてこの前工程+後工程(255億円+30億円)の投資計画を策定した当時・・・前工程の着工が 2016年秋なので、それ以前・・・の想定からはかなりの遅れが生じているのではないかと想像されます。

4.また、前工程の投資と同時に外販をオープンに推進する方向に大きく舵を切りましたが、手慣れた小型完成品プリンターの売り方(所謂 box moving)とは異なり、エプソンの事業常識からはかなり少ない数量ロットの案件が、それぞれ個別の要望を主張する産業用途の市場の性格も想定外だったのではないか?・・・と想像されます。

5.一方で、ヨーロッパや中国市場での採用事例は確実に増加して業界にインパクトを与えつつあり、現場の経験値も着実に蓄積されていっているようです。産業用インクジェットの現状は、これまで画質の追求=高精細高画質化・・・という流れから変化を生じつつあり、ここでエプソンがどういう方向に進むのか、長目していきたいと思います。

関連記事

ページ上部へ戻る