欧州放浪の総括(5)放浪のリスクマネジメント

欧州放浪の総括(4)予約の実際 -2- からの続きです。

今回は読者の方の関心も高いと思われるリスクマネジメントに関して書きます。

そもそも 42日間に及ぶ独り旅でのリスクとはどんなことが考えられるでしょうか?まずは絶対紛失や盗難にあってはならない3アイテムは「スマホ」「クレジットカード」「パスポート」およびそれを収納している財布やリュックでしょう。現金の紛失や盗難も避けなければいませんが、前3アイテムと違って、少額なら諦めれば跡を引くようなものではありません。また私の場合は盗難・置き引きもさることながら「置き忘れ」というリスクも無視できません(笑) あ、笑い事ではありません。

これとは別に、昨今ではコロナの罹患リスクも考えておく必要があり、万一罹患した場合の対策もシナリオを考えておくほうがいいでしょう。またコロナでなくとも普通の風邪などでも予め対応を考えておくといいと思います。

以下、順不同になりそうですが、個別に私なりのヒントを書いておきます。

1.そもそも余計なものは持っていかない

日本の運転免許証・銀行キャッシュカード・マイナカード・保険証・病院の診察券・近所の店のポイントカード・・・こういうものは現地では何の意味も持たない割に紛失すると再発行手続きは面倒です。出発前に財布の中を一度空にして必要なアイテムだけを改めて入れ直す・・・するとクレジットカード1枚しか要らないはずです。

2.クレジットカード

一枚だけでは紛失・盗難に遭うとたちまちお手上げなので、必ず予備を持っていきます。私の場合は財布の中に常用カードを1枚、他に2枚持っていきましたが、これはあくまで予備なので「スーツケースの目立たないところに」に入れておきます。リュックは置き引き・置き忘れのリスクが高いですが、自分でも嫌になるくらい重いスーツケースは簡単には置き引きに遭わないだろうとの想定です。持ち逃げ出来るもんならやってみろ!(笑)

3.スマホ

ユーレイルパスのアプリが入っているので、これも失くすと絶対にヤバいアイテムです。対策はひたすら握りしめているくらいしか思いつきません。スマホケースでループが付いていてそれを手首などに巻き付けておくようなタイプもあるようで、幾分の安心材料にはなるでしょう。私はとにかくポケットの中で常時握りしめていいました。手に「スマホを握っていないと落ち着かない」という感覚を持たせるためです。

また、自分の写真を撮る場合も可能な限り自撮りにして他人には渡さない方が無難です。一度だけグダンスクの運河の橋の上で自撮りをしていたら、なんかチャラいアンちゃんが「撮ってあげようか?」近づいてきたことがありましたが「No, Thanks! I have taken a selfee!」とかなんとか言って断りました。用心するに越したことは無いです。

また、念のため iPadを持って行って「iPhoneを探す」アプリで位置を特定はできるようにしていました。iPhoneに同期させているので、万一の場合はユーレイルパスのアプリもこちらで使えた可能性はあります。いずれも発動せずに済んだのは幸いです、

忘れてはならないのは電源対策です。スマホのバッテリ切れはシャレになりません。ユーレイルパスで検札時にスマホのバッテリー切れなんて最悪です。海外ではスマホが常に電波を拾う作業をする負荷が日本より大きいようで、バッテリーの減りが速いと感じます。ということで、出発前に 10000mAのモバイルバッテリーを調達し、それをホテルで毎晩フル充電したものをリュックの中に入れていました。ケーブルもお忘れなく!

4.パスポート

これも失くすと大変面倒です。私の場合、ユーレイルパスは車掌の求めに応じて IDを提示することが義務付けられており(実際何度も求められた)必ず携行する必要があったのでリュックの奥ポケットに常時入れてありました。このリュックを失くすと大変なので後述の対策をしていました。

また、万一紛失した際は日本大使館・領事館で再発行してもらうことになりますが、その際には住民票が必要になります。時差のある中で日本の家族に連絡して、役所で住民票を取ってもらい FAXしてもらう・・・なんてことになった出張者を駐在員として何度かサポートしたことがあります。可能なら出発前に住民票を取得してスーツケースになかに入れておくと再発行に余分な時間がかからなくて済むと思います(・・・自分は出発前のドタバタでやらなかったので、大きなことは申せませんが(笑))

5.リュック

ホームセンターでワイヤー(両端がリング状になっているもの)とカラビナを調達し、右の写真のようにリュックとベルトに通してカラビナで輪を閉じておきます。これは 60cmのワイヤーとカラビナで、いすれもホームセンターで 100円くらいで売られています。

今、写真を撮ろうと思って探したら見当たらず・・・最後にこれをホテルかどこかに置き忘れてきたらしい・・・と、オチを付けておきます(笑)

下の写真は 2mのワイヤーにダイヤルロックです。こちらはスーツケースを持っての移動の際に、スーツケースとリュックと自分をバインドしておくものです。見栄えより実質・・・なんちゃって(笑)

またホテルには番号を自分でセットする金庫がよくありますが、あの中に大事なものを入れてそのまま忘れてしまうということも、結構あるあるです(笑)私はあれは使わず、大事なものはスーツケースに入れておいて、ロックをかけた上にスーツケースをこのワイヤーで二重巻きにしてダイヤルロックをかけておきます。


6.現金

夕食などの際は €50くらいの最小限+α程度のキャッシュだけ持って、財布を持ち歩かないのが安全です。自分の呑み過ぎに限度を設ける意味でも(笑)

7.ドキュメント(リカバリー対策)

航空券の eチケットのプリント・NightJetの寝台指定券・クレジットカード(使用停止の窓口の電話番号が書いてある部分)・パスポートのコピーを2部ずつ取ってクリアフォルダーに入れ、リュックとスーツケースに1セットずつ入れておきます。先に書いた住民票も入れておくと安心感は増すでしょう。クレジットカードは写真を撮ってスマホのメモリーに入っていれば問題ないですが、いずれにせよ「3桁のセキュリティ番号」は写したりコピーしたりしない方が安全です。

8.スリ対策

置き引き・置き忘れは上述のワイヤーリングでかなりの確度で防げますが、スリはまた別です。基本はポケットに手を入れてスマホ握りしめ、その下の財布をプロテクトするようにしていました。

単独犯のスリは高度なテクニックが要るのでまずいません。殆どが「注意引き付け役のオトリと実行犯のセット」です。オトリはなんらか注意を逸らす行為にでます。そこでうっかりポケットから手を離した瞬間に、背後で気配を消していた実行犯が財布を掏る・・・このパターンが殆どです。

経験上、ラテン系の国の地下鉄(バルセロナとかミラノ)で遭遇することが多いのですが、話しかけてくるとかぶつかってくるなど、あなたの注意を引こうとする輩は必ずオトリです。反射的にポケットを押さえるように、大げさに言えば条件反射で出来るように訓練しておいてください。少なくとも地下鉄に乗る際には「スリに注意」と呪文を唱えてアラートレベルを高めるといいと思います。

そういうことがあった際は後ろを振り返りましょう。実行犯はそこにいます。また、何か異常を感じたら日本語でいいので「なにすんだよ!ざけんじゃね~ぜ!」と大声を出しましょう。女性にはハードル高いかとは思いますが、日本語でいいのです。周りの注意を惹くと犯行はやりにくくなります。

決して恥ずかしいことではないので、キョロキョロと後や斜め後ろを振り返るのもいいです。ホームで地下鉄を待つ際は壁を背にして立ちましょう(ゴルゴ13の極意(笑))。こちらにミラノ地下鉄で私が実際に遭遇した事例を書いてあります。ご参考に!

なお、犯行の手口としては他に「アイスクリームをつける」「目立つ色の液体をかける」「偽警官(fake cop)などがあり、いずれも経験しています。ネットに事例が沢山ありますのでチェックしてみてください。悲しい話ですが「人を見たら泥棒と思え!」・・・少なくとも、話しかけてくるやつとか、こちらに対してなにかアクションをしてくる輩には、素性が分かるまではアラートレベルを高くしましょう。

9.コロナ・疾病対策

日本では最近また「第9波」などという言葉が出ていますが、少なくともヨーロッパでは、もうコロナが話題になることは実質皆無という印象です。少なくとも毎日見ていたニュースでは全く触れられていませんでしたし、マスクをしているひとも、限りなくゼロに近い印象でした。まあコロナに関しては個人の考え方次第なので、マスクが有効と思えばすればいいのではないかと思います。

私は持ってはいましたが結局することはなく、42日間全くノーガードで問題ありませんでした。マメにアルコールを含んだウェットティッシュで手を拭いて、ついでにその辺のテーブルも拭いたりしてはいましたが、コロナ対策というより雑菌対策でした。

実は放浪の後半、ウィーンで 37.9度の発熱があり「あ、やっちまったかな!」と思いましたが、一つだけ持参した検査キットでは陰性でした。念のため体温計と検査キットは持っていた方が安心です。

とはいえ、熱は下がって欲しいので町の薬局(Apotheke)で解熱鎮痛剤として広く普及している「イブプロフェン」を購入して服用しました。これは処方箋が無くても買えるもので「Ibuprofen イブプロフェン」Medikamente gegen Fieber(メディカメンテ ゲーゲン フィーバー)」となんとか言えば普通に売ってくれます。

これを服用して実質的に1日半でなんとか平熱に戻り事なきを得ました。


10.放浪中断リスク

6週間という長期になると「あれがもしコロナだったら?」「もしあそこでパスポート落としていたら」「スマホを盗られていたら」というヒヤリハットをいくつか経験します。また、日本サイドでも緊急帰国せざるを得ない案件が勃発しないとも限りません。そういう観点では、航空券は最安値の日程・便の変更が一切利かないタイプではなく、多少の手数料を払っても変更が利くタイプにしておくのがいいように思われます。

海外旅行保険などについてはあまり詳しくないので必要に応じてネットなどでお調べください。私はクレジットカード(JAL Global Clubのゴールドカード)で対応できるかなと、詳しく調べたことはありません。

以上、長くなりましたがリスクマネジメントに関して思いつく限りのことをいろいろ書いてみました、結果として6週間の放浪を無事に終えて帰還しました。次回は、これも関心が高いと思われる「費用の分析」ということで、費用の全貌をご報告します。

11.追記:クレジットカードに関して

これは所謂リスクではありませんが、他に書くところが無いので「注意点」としてここに追記します

1.キャッシング

現地ではやはり現地通貨があった方がいいです。アイスクリームやソーセージもカードで買えますが、チップとか細かいものはやはりまだ現金でしょう。その際、空港での両替で日本が有利か現地が有利か?みたいな議論がありますが、私は現地の ATMでキャッシングしています。カードを入れて少額の現地通貨を引き出すものです。

ただ、これが出来ないカードもあるようで・・・恐らく、カード会社がそのカードにキャッシングの権限を付与していないと考えられます。出発前に自分のカードでキャッシングが可能かどうか+その限度額を確認するのがいいと思います。私の場合はキャッシングは出来るのですが、5・6月と月をまたいだので5月の最後の方が限度額に引っかかりました。事前に限度額をアップしておけばよかったかなと思っています。

2.支払通貨選択

カードで支払う場合に「現地通貨」「日本円」の選択肢がある場合があります。つい日本円を選びがちですが、この場合は店が設定するレートが適用されかなり割高になります。現地通貨を選択するとカード会社が設定するレートが適用されます。当然カード会社の手数料は入っていますが、店が設定するレートよりはマトモです。支払通貨の選択肢があった場合は「現地通貨」を選択しましょう。

3.スキミングリスク・過剰請求リスク

これは頻度は多くはないものの、偶に被害に遭った事例を聞きますね。カードで支払った時に渡される紙切れは「感熱紙にサーマルプリンター」でプリントされるもので文字が消えやすく、またイタリアなどでは細く小さな紙切れなのでつい紛失しがち・・・後になって照合しようにも、その意欲も湧きません。

スキミング被害は、帰国後にカード会社に申し出れば救済されるとされている(私は経験が無いのでどのくらい面倒なのかは知りませんが)ので、まあ実害はないかもしれませんが・・・オススメとすれば、夜にホテルに戻った際にパソコンでカード会社のサイトに入って「速報ベース」の使用実績を確認することです。

スキミングなので、紙切れはそもそも残っていないわけですが、異常に気が付くのは早いほどいいですからね。また、店が(多分故意に)一桁多く入力するというケースも、稀ではありますが聞いたことがあります。この場合は紙切れが残っており、連泊しているようであれば店に行って交渉できる可能性もあります。グダグダいえば「では警察に行く」といえば大抵は応じると思われます。

本来は支払う際に自分で金額確認をすべきものなので、後でカード会社に言ってもスキミングよりは返金のハードルは高いように思われます。

欧州放浪の総括(6)費用分析:かかった費用を全公開します

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