株主総会に初めて出てみた(2)

株主総会に初めて出てみた(1)からの続きです

6月20日、株主総会というものに初めて株主として出席してみました。何年か前までは役員として壇上の一角に座って株主席を見下ろす側におりましたが、株主席に座ってみると、当然ながら役員席とは違った景色が見え、違った空気が支配しており・・・それはそれで貴重な体験となりました。さて、どんな雰囲気で、何が見えたのでしょうか?(下の画像は日産自動車の臨時株主総会のものです。役員席の建付けが非常に似ているのでイメージとして借用します)

まず報告事項として決算内容と今後の施策などが、社長から説明されます。正直申して 1,000億円の減損をして、黒字見通しを大規模な赤字とした割には淡々とした説明に聞こえました。まあ、このあたりは人それぞれの受け止め方もあると思いますが、実際そこ(なぜそうなったのかなど)については後刻、別の株主も質問していました。

さて、質問タイムとなりますが「ひとり2問まで・質問はスタンドマイクまで進んで・(個人情報保護の観点から)氏名は言わず交付された出席番号で・質問が終わったら自席に戻る」というルール説明があります。そのうえで「質問のある方は挙手を・・・」で、正面2列目に座っていた私は「ハイ!」と声を出して挙手しました・・・が、社長は誰かを探す様な素振りで会場を見渡し、別の人を指名しました。まあ、最初の質問はサクラ株主にして欲しかったのでしょう(笑)私はテロリスト指定になっていたのではないでしょうか?(爆)

★ 最初の方の質問は「今回ですべての膿を出し切ったのでしょうか?」という、それなりにマトモな質問でした。社長がどう答えたかは覚えていません。得意の「現時点ではそう考えている」・・・だったかもしれません。ただ、こちらにも書きましたが、「のれん・無形資産 3,541億円を 952億円減損処理をしても尚 2,589億円が残っている」ワケです。この中に膿は本当に無いのか?現時点では無いとの認識ってそれでいいのか?

「膿のチェックは第4四半期にやる」という説明が銀行出身の役員から後でありましたが、これだけの大規模減損処理をして、まだ 2.589億円もののれん・無形資産が残っているというのに「第4四半期一度だけでいいのか?銀行出身の役員なら本当は毎期・毎日気になるはずではないの?」と思いますし、実際はちゃんとこまめに試算されておられるものと信じます。

第3四半期まで黒字見通しを出しておいて、決算間際のタイミングで「適時開示」と称してストレステストで減損する?それを4年連続で繰り返す?それって ethicalですか?例えは悪いかもしれませんが「倒産の危機にあることを認識しながら、わが社は大丈夫と称してマンションを売り続ける悪徳不動産業者となにが違うのでしょう?」バッドニュース・ファーストであるべきでは?もう直ぐ第1四半期が締まりますね?今回から導入して頂きたいと思います。

最初からちょっと深入りしてしまいましたが、ここでは私が総会に参加した個別企業の詳細事情を分析・記述するのが目的ではありません。日本企業・日本人の「徹底的な議論を避ける・予定調和に走る」体質の問題点をクローズアップするのが目的です。同社に関する固有の議論は、別途パスワード保護して同社のステークホルダーのみが閲覧できるページで深掘りします。

さて2人目でまた大きく手を挙げて、今回は指名して貰えました。おお、アブナイ株主・テロリスト指定を受けていても指名してもらえるんだ(笑)そこだけは評価しようと思います(爆)私の質問の趣旨は以下です。

★ 議案に関係ない質問は「貴重なご意見として承りました」と受け流す・・・と、私が役員当時の顧問弁護士から教えられました。今回の議案は(無配なので剰余金処分の件などは無く)「取締役選任の件」のみなので、それに絞って質問するので逃げないで回答されたい
★ 当社は委員会等設置会社なので取締役は「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」のいずれかに関わっている。その全員=ひとりひとりから下記に関する見解・責任の自覚・弁明をお聞きしたい。

★ 今日の事態を招いたのは、現社長ではなく、その前任者の前社長である。その前任者を2回にわたって社長に指名し、8年に及ぶ在任期間に何のブレーキ役を(少なくとも結果として)果さなかった指名委員会の責任はどこにあるのか?どう具体的な責任をとるのか?

★ 今回の事態の責任を取るという意味で、関係役員は非常に少額な名目的な報酬返上を表明したが、株価が大きく毀損し大きな経済的ダメージを被った一般株主の理解を到底得られるレベルではない。報酬委員会の見解を問う

★ 4年にわたって「黒字予想から最終赤字、最終年度は巨額の赤字」・・・一体何を監査していたのか?監査報告では「数字の辻褄は合っている。役員が犯罪的不正を行った形跡はない」とのことだが、監査ってそれでいいのか?今回の事態を事前に見抜けなかったことには監査委員会は全く責任は無いのか?

★ ことほどさように機能しているとは思えない・結果責任を取らない委員会体制に加えて「ガバナンス委員会」なるものを発足させるという。その意味と実効性を問う。

★ 社外取締役は、錚々たる企業の経営トップ経験者で社会的評価も高い=だからこそ請われてここにおられるものと理解する。なのに、実質的に何も機能しないで報酬だけ受け取っている・・・それを恥とは思われないのか?折角築き上げた高い社会的評価の自分の晩節を自ら汚しているという認識はお持ちなのか?

★ 社長は何故、今日の事態を作り出した責任者としての前任者を、昨年は「執行役会長」なる意味不明のタイトル、今年もまだ「シニアアドバイザー」などいうタイトルで処遇するのか?何をアドバイスしてもらうのか?

やりとり(?そんなん無いけど(笑))の詳細はここでは一般公開しません。別途パスワード付きページにて同社のステークホルダーのみに公開します。ご理解下さい。しかし、その回答は大変残念なものだったことだけはお伝えしておきます。

更に、一般化して申せば「やりとり」はありません。質問を一度すると、それに対する回答がいかにハズしたものであっても、それに対して追加関連質問はできないのです。「それ、答えになってないでしょう?」といっても「ご静粛に願います」と司会役の社長から制止されます。まあ「面倒な特殊株主」のネチネチ質問をブロックする仕組みがこんなところに効いてくるわけです。

まあ、いいです。自ら晩節を汚されておられるワケですが、自分が恥ずかしくなければそれでいいです。ただし私は恥を知らない人には経営にタッチして欲しくはありません。名指しは致しませんが、外した答えをされたのはこちらの中の 17ページ以降にリストされているそれなりの立場の方々です

玉石混淆の質問で時間が過ぎ「残り一問で締め切ります」というタイミングで、ある株主が「こんな甘い報酬返上では到底納得できない。ふざけるなと言いたい!前任者・前々任者も株主が納得できるレベルの報酬返上をするべきだ!」との意見がありました。私もまったく同感ですが、なんだかんだで有耶無耶にされてしまいました。

私は思わず拍手をしましたが・・・なんとそれは私だけ!シンとした会場に響き渡るただ一人だけの乾いた拍手・・・なんだ、このアウェイ感?なんで万雷の拍手が湧かないの、こんな真っ当な指摘に?・・・その時、やっと気づいたのです。

あ、そうか、ここにいる大半はサクラ株主だったんだ!そういうことか、なるほどね・・・

そして採決の時間・・・まず「取締役9人を一括で選任してもいいか?賛成の方は拍手を!」・・・パチパチパチ!まばらながら、まあそれなりの多数っぽい拍手(決して万雷のではなく、パラパラパチパチ)・・・で、反対の方の拍手は求められることすらない。

で、「この9人の選任の賛否で賛成の方は拍手を!」・・・パチパチパチ!まばらながら、まあそれなりの多数っぽい拍手(決して万雷のではなく、パラパラパチパチ)・・・で、反対の方の拍手は求められることすらない。

もう私は、この茶番に呆れて途中で席を立ちました。そういうことだったんですね、株主席の構造というのは!役員席で、しかも事業を担当していたので、総務法務がどういう仕掛けを構築していたのかは知りませんでしたが、いざ株主席に座って「マトモな質問」をしようとしても実質的に出来ないことがよくわかりました。

日本企業はダメになった・・・と、さまざまな局面で言われます。その一つの側面は「まっとうな議論を避けて、予定調和に走る」ことでしょう。残念ながら、その一つの典型例をここに見てしまいました。これは、なにもこの会社だけのことではないと思われます。個々には温度差もあるのでしょうが、一般に議論を避ける・議論をしかけるやつは面倒・事勿れに走る・・・これって、御社で思い当たることはありませんか?

政府などが「社外取締役を増やせ」とかなんとか言ってます。同社はその点では「形式的優等生」に見えるかもしれません。しかし、そんなもん無意味です。長期的に立派な業績を上げている富士フイルムは委員会等設置会社ではありません。オーナー企業でも長期的に立派な経営をしている企業も沢山あります。「委員会等設置会社」がガバナンス上、最も優れていると社長は説明していましたが、こんな事態を引き起こして、その責任の所在も曖昧なままでは説得力は皆無と言わざるを得ません。

委員会等設置会社は「形式要件」としてはガバナンスの優等生とされています。しかし考えてみてください。「ガバナンス」っていったいなんでしょうか?日本人は「ガバナンス」とか「コンプライアンス」というとそれで思考停止してしまう傾向が非常に強いです。海外の人にコンプライアンスというと「comply to what ?」と訊き直されます、何に comply(適合)するんだい?ということです。

かつてインクジェット事業責任者だったころ ISO9000の内部・外部監査では優良な成績でパスしたのに「社長を出せ!なんだこれは!」的なクレームが多発したことがありました。某有名電機メーカーからやってきた ISO担当部長に「なんでやねん?ISOは優等生なのに品質はクレームだらけって?」と訊くと・・・

その彼曰く「ISO監査は品質システムが機能しているかどうかをチェックするものです。『品質のものの良し悪しを担保するものではありません』」・・・・バッキャロ~!そんな ISOなら返上しちまえ!(笑)まじで、そう言いました・・・ちょっと元明石市長的で、今ならアウトかもしれませんが(笑)でも、ホンネです。

委員会等設置会社・・・まさしくそれだと思います。今回の事態を予防するのに全く無力・無意味・無責任だったようにしか見えません。集団責任=無責任、この事態に委員会の誰も責任を取ろうという構えが見えません。それどころか「委員会として決めたんだから」と、その間違いにアリバイを与えているフシさえあります!そして前議長は今日も又、業界でこの「ガバナンス」を説いているのです。んんん・・・

会社の扱いとは裏腹に、私のもとには下記のようなメッセージが大量に届きました。ああ、なるほどね!やっぱり社員・一般株主の意見や心情は、経営層に届いていないということなんだな・・・社長は「現場に出かけてしっかり対話している」と・・・言っていたけれど、実際に面と向かって社長に直言なんてできないよなあ・・・

「こんにちは😃株主総会お疲れさまでした。社員が言いたいこと全部言ってくださり感謝です」

また Twitterでもこんな tweetが拡散していたようです —>

この項、同社のステークホルダー専用ページに続きます。ここは私が同社社員あるいは株主と確認できた方のみにアクセスキーを交付します

関連記事

ページ上部へ戻る