業界各社 2022年度 第1四半期決算発表状況(3):コニカミノルタ

業界各社の 2022年度第1四半期決算発表をした企業を順に取り上げています。今回はコニカミノルタです。今回の着目点は「予算策定期には想定できなかったはずの急速な円安が四半期決算及び年間見通しにどう反映されたか?」です。こちらに記事を書きましたが、下にサマリーの表を引用しておきます。

これによると「最も円高寄り」を前提としているコニカミノルタと、「最も円安寄り」前提としているリコーでは、実にドルで 15円、ユーロで 10円もの開きがあります。

記事にも書きましたが、コニカミノルタののこレートは円安進行前の予算策定レートとしては非常に妥当なもので、恐らく予算策定レートそのものと想像されます。リコーも同様なレートを使って予算策定したのでしょうが、発表時には円安が進行していたので、それを織り込んで(数字を修正して)発表した、コニカミノルタはそうしなかった・・・ということでしょう=今回発表される数字(第1四半期・年間見通し)は、大きな上振れが期待できます・・・期待しておりました!・・・ところが・・・

毎度しつこく書きますが・・・私は同社を離れて既に丸 6年以上が経過しており、産業用インクジェット全般をニュートラルに応援するという現在の立場からは特段のバイアスはかかっていないつもりです、が、逃げ足の遅い私は、現役時代に蓄積した株もまだ少しは保有しているので、思わず「喝っ!」と叫びたいところもあります。そこを押さえて平常心で?公開情報のみに対して淡々とコメントを記述していく所存です。万一行間から「喝っ!」という声が聞こえたら・・・それは抑えきれないホンネです(笑)私の未熟さをご容赦ください(笑)

コニカミノルタ

【2022年度 第一四半期の実績】

↑↑ え?営業赤字なの?なんで?・・・というのが第一印象です。円高前提予算が大幅円安実績に振れてなお営業赤字?はあ?にわかには理解不能です。売上高は、コロナ前の四半期実績をわずかにクリアしていますし、前年同期比では増収ではあります。しかし、同社の決算説明会資料にもあるように実質的には減収です。(喝~っ!)

営業損失については、前年度の第4四半期(年間決算)に下記のような「一過性要因」を含むとの説明がありました。

今回は、こういう「一過性」という言葉は見当たりません

粗利率の悪化・販管費の増加という通常の管理用語での説明であるだけに気になるところです。ここまで見てきたエプソン・キヤノン・リコーは(様々な悪化要因を)「価格対応」・・・要は値上げで乗り切った旨の説明がありましたが、それが十分機能しなかった(ネガティブ要因を埋め合わせるには至らなかった)ということでしょうか・・・(喝~っ!)

また「構造改革」を予定していたが、それを第2四半期から第1四半期に前倒しした・・・という説明があります。かつて銀塩写真事業から撤退し、生産設備の大規模な廃棄売却・販売網の撤収と代理店への補償・従業員の解雇と配置転換などが行われましたが、これは文字通り「事業構造の改革」であり、デジタル時代への流れとしてある意味必然の施策でした。今回は何の「構造を改革」するのでしょうか?また何故、第2四半期に予定していたものを第1四半期に前倒しする必要が有ったのでしょうか?そこの説明が無いように見えます。

【2022年度の業績見通し】

これだけ為替前提が円安に転んだにも関わらず、売上高見通しの上方修正は小幅に留まり、営業利益見通しは据え置かれています。事業分野別の見通しも開示されていますが「事業セグメント間は調整をしております」という一文が気になります。何故、調整が必要なのでしょうか?「本当は、もっとひどい数字の事業セグメントもあるんだけど、それを見えなくするために(合計値は変えずに)いい数字の事業から数字を削って埋め合わせた」・・・そういう意味に受け止められてしまいますが、違うでしょうか?

いずれにせよ、デジタルワークプレイスとヘルスケア(プレシジョンメディシン)という目玉事業が厳しい状況にあるようなので、体勢の立て直しを期待したいものです。いずれも私の専門外なので詳細コメントは控えます。

ちなみに同社は 4月に社長交代が有ったので立て直しは後任の方に託されているわけですが、今回の四半期実績に関しては、後任の方=現社長には責任はありません。前任の方は 2014年 4月から 2022年 3月までという長期政権だったので、そのツケをたったの 3か月で軌道修正して結果を出す・・・そんなことが出来るほど経営は甘いものじゃないことは自明です。

しか~し、それを踏まえた上で敢えて申せば・・・新任の現社長は前任の方の在任期間に亘って、今問題となっている「デジタルワークプレース」とプロフェッショナルプリンティング部門(併せて全事業の約7割)の執行責任者だったわけで、責任はないどころか「大有り」でしょう。ヘルスケアやプレシジョンメディシンには直接の責任は無いとしても・・・

今回の第1四半期決算の説明資料は、管理屋さんが役員会に説明する資料としてはそこそこ分かり易く、そういう意味ではよくできていると思います。しかし、今求められているのは、そういうことではなく、これまで長年先送りしてきた根本的な課題をどう「構造改革」するのか?待った無しにみえる状況をどう打開するのかという具体的な本音ベースの話ではないでしょうか?逃げ遅れた株主として、次回の上期決算発表ではそれを期待したいと思います(頼むで~(笑))<ー笑うところじゃない

✙✙ 前回のコメント
前任の方は「執行役会長」という職に就かれるとの記載があります。私は同社の OBなので多くの方からお問い合わせを頂きましたが・・・私に訊かないでください(笑)ただ、聞きなれないタイトルではありますが、事例はあるようです。例えばインクジェットのテキスタイルプリントで知られるセーレンには「副会長執行役員」が 3名おられます。

【インクジェットに関して】

前回の決算発表時には・・・インクジェットに関する記述は多くありませんが「工業用用途向け販売が増加」とあります。産業用と表現されることが多かったので、明確に工業用という用語は、いわゆるプリントではなく「モノづくり・工業生産技術」向けへの道が拓けたということでしょう。超高精度を求められたり、特殊な液体への耐性を求められたりとかなり厳しい分野ですが、私としては将来を見越して絶対に技術確立・市場開拓を諦めずにやってきた分野です。気が付けばIJコンポーネントは「コア事業」に位置付けられています。在任中には成果がでなくても、蒔いた種が後になって芽を出してちゃんと育つ・・・ジワっと嬉しいものがありますね。・・・と書きました。

今回の記載は多くは語っていませんが、業界からは工業用途に関しての高い評価や採用事例が私にも聞こえてきており、インクジェットの応用が従来印刷の置き換えから工業応用に本格的に広がろうとしている今、引き続き大きな期待を持って見守っています。くれぐれも他の事業セグメントとの調整に使われたりすることなく、「献金」させられることなく(笑)素直に事業を伸ばすための必要な投資や経費投入もやって貰えたらと願っています。

関連記事

ページ上部へ戻る