業界各社 2021年度 年間決算発表状況(2):リコー

5月連休明けに年間決算発表をした企業を順に取り上げます。まずは 5月 10日に発表したリコーからです。

リコー

最終的に、売上高は全ての四半期でコロナで傷んだ 2020年度をクリアしたものの、逆にすべての四半期でコロナ前の 2019年度には到達せず、回復に力強さを欠くように見えます。ただ営業利益は全ての四半期で黒字を達成しており、第4四半期だけで見れば 2019年を超えたということで、頑張って健全化に取り組んだ結果は出てきたように見えます。

↑↑ 上のグラフの下段は、第3四半期時点での年間業績見通しから、第3四半期までの実績累計を引き算して「年間見通しを達成するためには、第4四半期でどれだけの売上高と営業利益が必要か?」を求めたものです。

リコーは第3四半期まで、年度初め(昨年度の決算発表時)に公表した今年度の見通しについて、売上高も営業利益も一度も変更していません。当初の想定通り推移しているのか、変更することを潔しとしない社風なのかはわかりませんが、今回の第3四半期時点でも、売上高も営業利益も据え置いています。

その時の私のコメントは「少なくともグラフからは、第4四半期には、コロナ前にも実現できていなかった四半期売上高が必要で、営業利益も、まだコロナ禍など想像もできなかった 2019年度の前半並みの数値が求められることになります。計算上は売上高が達成できれば、この営業利益もついてくるのでしょうが・・・決算発表間際になって「業績見通しの修正」の適時開示という事態に至らないことを期待したいと思います。」と書いています。

結果として予想通り、売上高も営業利益も未達となったわけですが、業績見通しの修正の適時開示は無かったので、未達分は開示規則で許された範囲に収まった(頑張って収めた)ということでしょう。この手法は単純な引き算ですが、企業がどのくらい無理な発表をしているのか?余裕があるのか?を比較的簡単に検出することが可能です。お試しください。

↑↑ さて、2021年度決算短信に記載された 2022年度の売上高・営業利益の見通しは上のグラフの黄色の棒で示しています。一言で申せば「コロナ前の 2019年度の水準に戻しますよ!」と言っているように見えます。

リコーの決算説明会資料の冒頭に説明があるように、同社は昨年4月に組織改正を行い事業セグメントを組み替えました。ということで、これまでのトレンドとの比較ができなくなっています。まあ企業は自社の業容や経営環境の変化に応じて組織やセグメントを組み替えるのはある種当然のことなので、それはいいのですが、正直申して全般に説明が「分かりづらい」(失礼)まあ。私が電子写真業界を離れて久しいので、その用語についていけていないだけかもしれません。

しかし・・・細かく説明はあるのですが、 2019年度から 2020年度にはコロナで落ち込んで、2021年度にはそこから大きくは回復できていないわけです。その 2021年度から 2022年度には売上高を 17,585億円から 20,500億年に 2,915億円(+16.6%)も増加させるといっていることになります。組織の組替えは、所詮は組替えに過ぎず、その効果によって売上高の増分として反映されるには少し時間がかかります。細かい話よりも、そのあたりの大掴みでの納得感があればよかったように思います。

もうひとつ・・・インクジェット屋としての視点から申し上げれば、決算説明資料から「インクジェット」というキーワードが実質的に消滅したことは残念です。まあリコーは2兆円企業でその 80%以上は電子写真ビジネスや関連サービスなので無理もないところかもしれません。業界をニュートラルに見てリコーのインクジェットは大変勢いがあり、事業を担っている方々の「顔も見えていた」と私としては大変高評価だったのですが、組織変更と共にキーワードも消えてしまい、あれ?どこに行ってしまったの?という感じがしています。

【ロシア・ウクライナ情勢に関して】

ロシアによるウクライナ侵攻に対してのスタンスはニュース第二報が発表されていますが、大方の日本企業と同様に見えます。すなわち「ウクライナに対する人道支援は積極的に行うが、ロシアの侵攻を特段避難するような態度表明はしない」というものです。「ロシア向けの製品出荷の一時見合わせ」という記述も見られますが、ロシアの金融機関が SWIFTから排除されたり、物流などの混乱もあって「一時見合わせる」のが妥当と判断したものと思われ、エプソンのように「自社の行動憲章に照らして許せないので、ロシア・ベラルーシとのビジネスを停止する」とまでは踏み込んでいません。

また、この侵略戦争が引き起こすであろう様々な波及効果に関しても「2022年度見通し」の中には記述が見当たりませんが、これは流石に決算発表時点では正確に先行きを見通せるものでもなく、またそもそも予算策定作業たけなわの 2月 24日に侵攻が始まったので予算に織り込むこともできなかったのはやむを得ないと思います。この辺りは第1四半期の決算発表あたりから情勢を把握して見通しに反映させていくものと思われます。

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