中国展示会事情:2020年8月

欧米や日本では、コロナの完全な鎮静化やワクチン・治療法も未だ確立されてはいない為、ここ当面はリアルの展示会は開催が難しく、更には展示会自体の存続も危ぶまれる事態となっています。ところが中国は少し様相が異なるようです。

右の画像は中国の繊維業界のジャーナリストから送られてきたイベントの案内です。一番下に「国家会展中心」とあることから、上海の虹橋空港近くの巨大なクローバーの形をした展示会場で開催される講演会(コンファレンス)のようです。

日経のコロナマップ:中国は3月初旬にピークアウトしたように見え、
日経のデータ更新も4月3日で止まっている

失礼ながら、中国の統計データはどこまで信用できるのかという問題はあります。まあ、それを言えば、日本の PCR検査数ってなんだよと、米軍は日本のデータを信用していないとか、様々な議論はあるのでさておき・・・

実態として中国ではリアルの展示会が戻りつつあるようです。またこれでまたクラスターが発生したので再び中止!というような状況も発生していないようです。


こちらは7月の状況で、深圳の FLORA社は上海と東莞の2つの展示会に出展しています。海外からの訪問者は原則として居ないので、かつての「3密的賑わい」は戻ってはいませんが、それでも展示会の体は為している様に見えます。

今回、その FLORAを WTINのヴァーチャル・トレードショーに出展するように誘ったのですが、最初は気乗りがしない様子(その後、出展することになりました)・・・


リアルとヴァーチャルの展示会は「補完関係」にはあっても「相互に代替が可能」なものではありません。自分で2ヶ月のロングラン・ヴァーチャル展示会を主催してみて分かったことですが、それぞれに特徴・長所短所があります。

リアルは物理的な会場を借りて行い、次々といろいろなイベントが行われるので、どうしても短期(長くても10日くらい)にならざるを得ません。また機材やブースの搬入・設置・運営・撤収という物理的な付帯コストが発生し、加えて出張者や招待者に関わる手配・諸経費など、付帯コストも馬鹿にできないものがあります。

この点に関してはヴァーチャルは、クラウドサーバー上のデータの話なので、設営や撤収に関するコストは無視できるレベルで、期間も短期ある必要はありません。極端には私のサイトのJIMPのように「常設展」も可能です。出張費も不要です。コスト面ではヴァーチャルに明らかな優位性があります。

一方でヴァーチャルでは(疑似までは出来ても)実現できないものはやはり「人と人との生の繋がり」でしょうか・・・私なりにリアルな展示会やコンファレンスの意義は「ネットワーキングレセプション」であり「暫くぶりに顔を合わせる業界の知人達との時間と情報の共有」であり、新たな人達との出会いです。敢えて言えば、それに続いて、実機のデモによる「ほう!」という新鮮な感動です。

欧米や日本では、「コロナによってリアルな大規模イベントが実質的に開催できない」現状があるので、相対的にヴァーチャルの存在感が増しており、また今までヴァーチャルの価値に気が付かなかったのが、IT技術を駆使することで更に価値が高まっているというのが現状なんだろうと思います。

またリアルの展示会業者が、前述のようなローコストでヴァーチャルイベントをオファーすると、自ら価格破壊を起こすことになり、リアルが再び開催できるようになった際に、以前のような高価格を課金し辛くなる恐れがあるためなかなか参入できないという事情があり、そこに従来の展示会業者ではない運営者が新規に参入しているというのが現状と見えます。

ところが中国では「リアルの展示会・コンファレンスが開催できる」ということで前提条件が欧米日とは異なっていますただ、海外からは訪問が難しく、またまだ現段階では敬遠する向きもあるので、これをヴァーチャルで補完するという構図。リアルがあって、それに加えて以前よりも格段に進化した形のヴァーチャルを併せてオファーするという形になっていて、それが出展者からも歓迎されているようです。

そういう現状がある環境なので「ヴァーチャルだけ」のイベントには懐疑的になるのも無理はありません。しかし、思い直してみれば「外国人は所詮ヴァーチャルに参加するしかない」ので、リアルと切り離してヴァーチャルに参加して、海外でのプレゼンスを維持・向上させるには唯一の機会ということになります。

欧米や日本の展示会やコンファレンスもいずれ、リアルな形が復活することが期待されますそこまで持ちこたえることが出来ず消滅してしまうイベントは、コロナで消滅時期が加速されただけで、所詮は生き残れなかったのでしょうそうではなく、どうしても必要なリアルなイベントは生き残るし、新たに立ち上げられるかも知れません。

その際にはリアルとヴァーチャルがセットで、その長所短所を補完しながら、より発信力の高い場を提供するイベントとして存在するようになるでしょう。これまでもリアルな展示会は、インタビューやライブデモを撮影し、ネットに流すというようなことをやってきましたが、今後はその部分(ヴァーチャル部分)だけを切り出しても十分イベントとして成立する、ITを駆使したクオリティの高い発信媒体となるでしょう。

そういう時代を見据えて、今からヴァーチャルの展示会やコンファレンス(ウェビナー)に積極的に出展したり、ブラウズ参加したりして感触を掴み、場慣れをしておくのがいいかと思う次第です。

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