- 2022-5-15
- トピックス
5月連休明けに年間決算発表をした企業を順に取り上げています。今回は 5月 11日に発表した富士フイルムです。
富士フイルム
最終的に、売上高は全ての四半期でコロナで傷んだ 2020年度をクリアしたのは言うまでも無く、すべての四半期でコロナ前の 2019年度も大きくクリアしています。営業利益は四半期で波はあるものの通年で 2019年をしっかりクリアしています。
↑↑ 上のグラフの下段は、第3四半期時点での年間業績見通しから、第3四半期までの実績累計を引き算して「年間見通しを達成するためには、第4四半期でどれだけの売上高と営業利益が必要か?」を求めたものです(緑の矢印)。その時の私のコメントは「無理があるようには見えません。年間見通し値を余裕を持って達成可能と見ました」としましたが、予想通りしっかりクリアしています。業容は大きく異なりますが、エプソンもそういう傾向=余裕を持った(やや控えめな)見通しを発表して、それを確実にクリア・上方修正していく&結果の実績としても対前年・対前々年でもちゃんと伸ばすがありますが、やはり会社全体としての余裕のなせる業でしょう。
エプソンの発表へのコメントに「嫉妬を買うレベルの好調さ」と書きましたが、富士フイルムは「最強時の白鵬みたいな強さ」=強すぎて嫉妬を買う以上にちょっと憎たらしいレベルかもしれません(笑)
インクジェットに関する記述は下記のみです。細かいコメントで「資産圧縮」というのがありましたが詳細は不明です。棚上げした何かを償却しているのでしょうか・・・
【2022年度の業績見通し】
ほらほら、また~(笑)随分控えめな見通しを(笑)まあ、無理して大風呂敷を広げて、下方修正や未達となるより、控えめな予想を提示して上方修正・超過達成する方がいいというのは分かりますが・・・う~ん(笑)下の表の様に「すべてのセグメントで売上高も営業利益も前年度を上回る」と控えめに豪語しています(笑)うん、できますよ、きっと!第1四半期から上方修正する方に賭けてもいいです(笑)
何故、賭けてもいいかって?今年度の為替前提を「120円/$・132円/€」で見ているようですが、現状は「130円/$・135円/€」ですよ!まあ為替は水モノだし、予算策定時にはその後の急速な円安を見通せなかったのは納得できます。いずれにせよ業績にはプラス要因でしょう。
【ロシア・ウクライナ情勢に関して】
こちらも大方の日本企業と同じで「ウクライナに対する人道支援は積極的に態度表明し実行するが、侵略者としてのロシアに関しては言及しない」というスタンスです。同社のニュースリリースを検索すると、この関連では「ウクライナにおける人道支援のための義援金および医療機器を寄付」というのが一件でてくるのみです。文中に「富士フイルムグループは世界の平和と安全な社会を希求し、いかなる状況であっても、戦争や暴力による弾圧を断じて支持しません」とありますが「では、ロシアに対しては具体的にどういう施策をとるのさ?」については言及がありません。
「富士フイルム ロシア」検索すると「丸紅(株)よりロシアのメディカルおよびイメージング製品の販売代理店であるZAO“FUJIFILM-RU”を買収」(2008年 12月)という記事がヒットします。まあ、メディカル分野はプーチンがどんな極悪人であれ、一般ロシア人のヘルスケアに関しては人道的見地もあるので事業は継続する・・・ということでしょうかね。ならば、積極的にそう発表するのがいいように思います。
ちなみにシーメンスは「多国籍コングロマリットであるシーメンスAGは、ウクライナへの侵攻が続いているため、産業用事業をロシアから撤退する計画を本日発表しましたが、別経営の医療技術部門であるシーメンス・ヘルスイニアーズはロシアに残り、ヘルスケア製品やサービスの提供を継続する予定です。(中略)一方、シーメンス・ヘルヒネアーズ(シーメンスAGが2018年のドイツでの医療技術のIPOに伴い、株式の過半数を保有している)は、本日Fierce Medtechに出した声明の中で、医療へのアクセスは基本的人権であるという立場を改めて表明しました。シーメンスAGのロシア撤退の決定には、シーメンス・ヘルジニアスは含まれないとのことで、同社は以前、3月初旬に他の企業が同地域から撤退しても、同国の医療提供者と患者を引き続き支援すると述べていました。」としています。(関連記事原文)
★ここまで書いたところで、英国人ジャーナリストと本件を議論する機会がありました。「ロシアの一般人の医療へのアクセスは基本的人権・・・だけどロシア軍はウクライナの病院を意図的にミサイルで破壊しているんだぜ?それに対して非難しなくて、黙ってていいのか?」・・・今回のロシアの侵攻で世界の枠組みや常識が壊れていきつつあります。民間企業といえど「政治は政治、経済は別」「軍事は軍事、人道は別」という態度だけでは済まされない、難しい時代になりつつあるように思います。
富士フイルム・ビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)
旧富士ゼロックスが富士フイルムビジネスイノベーションとなる際に、グラフィック事業部と市場分担の移管があったと理解していますので、グラフを眺めてのコメントはしません。いずれにせよ同業他社も含めて厳しい局面に差し掛かっている事業領域であり、この先5年のスパンで現時点でのプレーヤー達が皆仲良く生き残っているようには(個人的は)思えません。ここで社長も交代されたようなので、新機軸を期待したいと思います。