業界各社の年間見通しの為替前提

6月末で大方の日本企業の第1四半期が締まり、今月末から7月半ばにその発表が始まります。前年度の決算発表の際に、各社は今年度の見通しを発表するのがルーチンとなっていますが、その際に各社が前提とした為替レートに着目してみました。

上の画像はクリックすると拡大します。まず、昨今の円安は、今年の 3月頃から急速に進んだことが分かります。2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻がなんらかのトリガーになったと考えられます。

一方、会計年度が「4月~翌年 3月」の企業が予算策定作業を始めるのは、一般的には 12月頃から・・・12月に経営管理・経理部門が来年度の計数目標を事業部門に提示し、同時に為替レートの前提も提示します。その後、1月から各事業部門が販売・生産・経費などの数字を策定・提出・審理・再策定といったサイクルが回り、最終的に 3月の役員会で機関決定がなされれます。

すなわち、企業が来年度の予算策定作業を開始する段階で、3月以降に急速に進んだ円安を予測する・予算前提に織り込むのは無理だったと考えられます。実際、ロシアがウクライナに侵攻することも(英米の諜報機関は別として)誰が予測しえたでしょうか?

そこをご理解の上で下の表をご覧ください。各社が公表した 2022年度の業績見通しに前提としたとされる為替レートの一覧です。ブラザーは何故かそのレートを公表していません(公表しなければならないという規則は無いので特段問題ではありませんが・・・他社とは明らかに異なるスタンスに逆に興味が湧きます)

これによると「最も円高寄り」を前提としているコニカミノルタと、「最も円安寄り」前提としているリコーでは、実にドルで 15円、ユーロで 10円もの開きがあります。これはどういうことでしょう?

まず、先に説明した「企業の予算策定作業開始時期は 12月」ということから考えると、コニカミノルタの「110円/$、125円/€」というのは、12月の実勢レートに極めて近く、妥当な数字と思います。かつ、予算はやや安全サイドに立って策定するものなので、12月の実勢レートより「少し円高」のレートとしておくのも非常に自然なアクションです。恐らく、実際の予算レートそのものと推察されます。

一方のリコーは、12月の実勢レートからは大幅な円安のレートを、2022年度の業績見通しの前提としています。12月の時点で、その後 3月から急速に進行することになる円安を見通していたとは考え難く、恐らく予算策定レートはコニカミノルタと同様なレートを採用したものと推測されます。

一方で、2021年度の決算発表は 5月の連休明けなので、その時には既に円安が進行中だったので、予算をベースに円安レートで業績見通しを再度試算して、上方修正をして発表したものと推察されます。

・・・ということは?(今にしてみれば)非常に厳しめの(円高)レートで予算を策定し、5月の決算発表・見通し公表の段階でもそれを修正しなかったコニカミノルタの今年度業績は「上振れ」が期待できます。一方、リコーは昨今の円安を反映させて見通しを公表=円安上振れ分を既に取り込んで公表したことになり、少なくとも大幅な上振れは期待しないほうがいいということになります。

・・・ということで、コニカミノルタさん、今年度は上方修正の繰り返しで株価を上げて頂けるものと期待しています(笑)<—ここ、笑うところではない。

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