コニカミノルタ:パナソニックのIJヘッド事業を買収(公開情報)

コニカミノルタから表題のプレスリリースがありました。既に十分以上に噂が流れていたので、これを読まれている皆さんにとっても特に大きな驚きはないかと思います。大野は前職を退職時に「会社勤務時の秘密を漏らさない」ことをコミットしていますので、コメントを求められても「刑事訴追の恐れがありますので差し控えさせて頂きます」とか言ったりして(笑) 

といいますか、自分の現役時にあった話でもなく、退職後も一切関わっていないので、皆様以上の情報を持ち合わせていないのが実態です。むしろ、(前職とNDAなどを結んで)事情を知っていたり相談を受けていれば本当にコメントはできませんが、そういうことは一切無いので、一般的なコメントは可能です。お問い合わせは公式サイトのリリースにある電話あるいはメルアドにお願いします。
日本語プレスリリスはこちら
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日本語の全文を引用しておきます(なお赤字強調部分は大野による編集です):

産業用インクジェットヘッド事業に関するお知らせ
2018年6月1日

お客様各位

コニカミノルタ株式会社

平素よりコニカミノルタ製品をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。

コニカミノルタ株式会社(以下コニカミノルタ)は、この度、パナソニック株式会社およびパナソニック プレシジョンデバイス株式会社(以下PPRD)より、産業用インクジェット(以下IJ)ヘッド事業に関連する設備資産と技術資産を譲受しましたので、お知らせいたします。

今回の狙いは、PPRDの保有するMEMS技術および薄膜PZT量産工程の獲得により、産業印刷分野向けの高解像度IJヘッド開発を加速し、IJヘッド・コンポーネント事業の展開力、開発力、商品力を強化することにあります。PPRDの製品ラインアップはコニカミノルタが得意とする製品カテゴリと補完関係にあり、その獲得によりコニカミノルタの産業用IJヘッド事業におけるラインアップが拡充されるものと考えております。

なお、PPRDの既存のお客様(IJプリンターメーカー様)への製品供給およびサポートは、コニカミノルタから実施することとなりますが、質量ともに安定した製品供給のみならず、新たな関係の発展により、さらなる貢献ができるよう努めてまいります。

コニカミノルタは、今後もお客様の幅広いニーズに的確に応えられるよう体制を整え精励してまいりますので、引き続きよろしくご愛顧お引立てを賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ先
コニカミノルタ株式会社 材料・コンポーネント事業本部
IJコンポーネント事業部 営業部
TEL:042-589-3701

(何故か問い合わせ先は全社広報部門ではなく、また事業部営業部の誰?という固有名詞もないですね?)

このリンクははヘッド事業参入時にパナソニックから出されたプレスリリースです

当時の日経新聞記事はこちら

—–
【公開情報だけをベースに、あえてコメントするならば・・・】

■ プレスリリース本文に書いてあること以上のことは情報がありませんが、文面通り受け取ると「今回の狙いは、PPRDの保有するMEMS技術および薄膜PZT量産工程の獲得により、産業印刷分野向けの高解像度IJヘッド開発を加速し」と書いてあるので、そういうことなのでしょう。複写機の「MIFや顧客基盤を買う」みたいな表現は無いので、この買収によりシェアや市場での量的なステイタスを上げることを目的としているのではないと考えられます。ならば買収金額は気になりますね。その技術をいくらと評価したのか?

■ Google検索の「予測キーワード」では有機ELというのが多数出てきます。いくつかを挙げておきます。

世界初の印刷方式有機ELパネル、JOLEDが出荷開始 大型パネルはパートナーと
世界初、RGB印刷方式の21.6型4K有機ELパネル。日本発のJOLEDが開発
日本発の印刷式有機ELパネルがついに開花、JOLEDがサンプル出荷開始

コニカミノルタのリリースには「今回の狙いは、PPRDの保有するMEMS技術および薄膜PZT量産工程の獲得により、産業印刷分野向けの高解像度IJヘッド開発を加速し・・・」とあり、上記の有機ELとの関係には一切触れられてはいません。もちろん触れなければいけないという法律は無いので、特になんの意味もありませんが、XEROXに買収された仏IMPIKAが顧客から離れてしまったパナソニックヘッドの存在意義の主要な部分なので、なんらかのアナウンスを期待したいところです。

■ また、よくやるレトリック解析手法で「文章を否定形にしてみる」ことをしてみると「PPRDの保有するMEMS技術および薄膜PZT量産工程を獲得しなければ、産業印刷分野向けの高解像度IJヘッド開発を加速できなかったのか?」ということになります。同社は既にMEMSヘッドの市場投入を発表しているので、それとの整合性や関係は問われると思います。まあMEMSにもいろいろあるのは常識なので、下記とは違うMEMS技術なのかもしれません。

この公開記事との関係は?

■ また「売却するサイドのパナソニックからのプレスリリース」は今のところありません。(私が見つけられないだけかもしれません。)多数の皆様からも私にお問い合わせを頂いていますが、当事者でないので分かりません。先般のMEMJETとCANONとのクロスの場合も、MEMJETからは発表がありましたが、CANONからはありません。こういうことは珍しいことではありません。

■ 買収金額が書いていない…これも「公表しないといけないというルールは無い」ので、特に珍しいことではありません。コニカミノルタの公式リリースには「今回の狙いは、PPRDの保有するMEMS技術および薄膜PZT量産工程の獲得により、産業印刷分野向けの高解像度IJヘッド開発を加速し」とあるわけですから、直接的な顧客基盤の獲得による収入増が投資資金の回収原資ではないと言っていますね。

他社から買収によって獲得した技術が、いつどのくらいの金額となって事業に寄与するのか?(いつになったらモトが取れるのか?)というのは、そもそも試算は難しく、正直申して「どうでもいいこと」と思います。所謂「経営管理部」とか「財務部門」はそういうことを求めたがりますが、私に言わせれば shit!(「たわごと(Google翻訳)」、「排便する」(英辞郎))ですね(笑)。事業を背負っていると自負する「実質的な事業責任者」が、信念を持って「結果責任を負う!」といえば、それが唯一の正解です。

■ 少なくとも、このコニカミノルタからしか出されていないプレスリリースは、大変簡潔で、残念ながら買収にかける熱い思いは伝わってこない文面です。一般的にプレスリリースは「アピールの場」なので、もっと饒舌であっていい・もっと想いが込められていてもいいと感じます。実際、海外企業は買収という前向きなアクションをした際には、文書によるプレスリリースに加えて、事業責任者が自ら四半期の事業説明会で、その意味・意義や構想について熱く語るものです。それをしない・出来ない日本企業が多いので「ガラパゴス」と自嘲するしかないのです。

コニカミノルタの本件(ヘッド事業)に関わる実質的な事業責任者が誰なのか、現役を離れて暫く経っているので(私が引き継いだ時点から時間も経って、組織も変わっているようなので)よく分かっていません。今話題の某大学の案件で、広報が「後刻、文書(FAX)で流します」として、理事長らからまともな顔出し説明が無いことに批判が集まっていますが、単に淡々としたプレスリリースを流すだけでなく、近々の株主総会、四半期決算発表、あるいはIGASなどインクジェットがテーマになる機会で、誰かそれにふさわしい人(逆に、そこで矢面に立つ人が事業責任者)が本件に関してちゃんと説明や質疑応答対応をされるものと確信しています。

大野は日本に居ない確率が高いので、前職の株主総会には多分出られませんが・・・残念!(笑)

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