ビジョンを語るということ (3/3)

ビジョンを語るということ (2/3)からの続きです

私がマッキンゼー日本支社の「海外要員幹部候補生養成プロジェクト」で受講した、1994年当時、ハーバード・ビジネススクールの教授だった竹内弘高さんの講義「ビジョンとは?ビジョンを語るとは?」について書いています。

3限目:「あなたの会社の社長はどんな人ですか?自分の、会社の夢を語っていますか?」

昼休みを挟んで午後の最初の授業は一転して「あなたの会社の社長はどんなかたですか?ご自身の夢や、会社としての夢・目指す方向などを社員に語り掛けていますか?」という質問がされます。社長はどんな人?と訊かれると、サラリーマンとしてはなかなか答え辛いものもありますよね(笑)だいたい「何考えてんだかわからん」とか「あまり見たことない」とか批判的な話になりがちなので(笑)

で、また誰も口火を切ろうとしないので、ヒロ竹内(竹内弘高さんのニックネーム)は「あ、ご心配なく!ここで聞いたことは間違っても人事に告げ口なんかしませんから(笑)」と笑いを取って緊張を和らげる。するとボチボチいろんな人が喋り出す。コニカでは当時は米山高範という品質管理の大家が社長で、話も上手く、海外の外国人社員にも尊敬されてました。まあ、改めてその社長がどんな夢・ビジョンを社員に語りかけていたかと問われると、よくは思い出せないんですが・・・

一人が語り出すと、段々場が和んで、最後は結構みんながわいわいと・・・でも総じてあまりポジティブな話にはならんかったような(笑)

4・5限目:ここがツボです!

さて、ここからが面白い!「はい、これから皆さんに社長の気分になってもらいます。まあ、社長というとちょっと目標としては遠いかもしれないので経営企画部長あたりにしましょうか。あるいはプロジェクトを率いたリーダーがいいですね。ある日、あなたのところに『ビジネス・ウィーク』から寄稿依頼が舞い込みます。それは5年後に貴方の会社が素晴らしい成功をする。メーカーなら画期的な新製品を世に出して大ヒットするとか・・・まあ、他の業種でも大きな成功というはそれぞれあるでしょう。

これを、あなたがその成功を実現した経営企画部長、あるいはプロジェクトリーダーとして、どうやって成功させたのかという「サクセストーリー」を書いてください。もちろん企業秘密でしょうから、秘密は守ります。なぜそれをターゲットにしようと考えたのか?どういう人達を集めたのか?どういう反対があったのか?それをどう説得したのか?プロジェクトは壁にぶち当たらなかったか?競合たちはどうだったのか?なぜ、数ある障害を乗り越えて、どのようにあなたはこの案件の大成功を実現できたのか?そういう物語をお願いします」

一つだけお願いは『箇条書きはしない』ということです。箇条書きではなく、物語・ストーリーを書いてください。あなたがある時は困難に立ち向かい、ある時は追い風を満帆に受けてプロジェクトを進めて行く様子が「活き活きと、あたかも目の前に展開するのが見えるように」描いてみてください!

ここで、ハタと気が付くわけです。今日の授業の各ピースはここで出される課題に持ってくるためのお膳立てだったということに!

「ビジョンとは実現したいことを「目に見えるように表現すること」・・・なるほど。あなたの会社のビジョンは何ですか?標語はありますけどね。社長は自分の夢や会社の夢を語っていますか?う~ん、そんなの聞いたことないなあ。

では、あなたが自分でそれを書いてみて下さい!できるだけ具体的に、ビジネスウィークの読者が読んでなるほど!と思えるような・・・と言われてみて、これがなかなかどうして難しい。社長のことをディスっておきながら、自分で書けと言われると案外書けないことに気づきます。なるほどね!

ビジョンって「総合映像産業」みたいな標語ではなく、読者であれ、部下であれ、役員会であれ、それを読んだり聞いたりする人の「目に見えるかのように」語る具体的なストーリーなんだ・・・

これは、あの研修からずっと後に、インクジェット事業を立ち上げるに際してそこの責任者を任された自分が、常に意識することとなったことです。ハーバードや一橋の学生って、こういう講義を生で毎日のように聴けるんだ!しっかり勉強しろよな(笑)

ビジョンを語るということの項を終わります。

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