展示会報告 Heimtextil 2018(5)フランクフルト1月9~12日:ホームテキスタイル

壁紙の項目で思わず長くなりましたが、布へのプリントをご紹介します。ハイムテキスタイルでの布プリントの主体は「寝装具」「カーテンなどのインテリア」です。

まず、従来のロータリースクリーン版でのプリント柄や、所謂「ジャブ漬け」と呼ばれる単色染めの寝装具はこういうイメージです。
ニトリのサイト
ZARA HOMEのサイト
IKEAのサイト
ざっくりした印象ですが、繰り返しパターンのプリントものは比較的明るい柄が多く、逆に濃色は単色染めが多い印象です。バインダー樹脂による風合い(肌ざわり)を考慮して染料も使われているということでしょうか…

ある意味、写真柄は典型的なインクジェットプリント事例です。

カーテンとのコーディネート柄の布団カバーです

子供向けキャラクターものもインクジェットのテーゲットと考えられます。子供だけでなくオタクも含みます(笑)

こういう大胆で繰り返しパターンの無い柄はインクジェットだとすぐにわかります

しかし、待てよ?これ、インクジェットの顔料インクだとしたら随分綺麗じゃないかい?ホンマに顔料か?

従来はスクリーン捺染だったので、一定間隔での繰り返しパターン柄しかできなかったわけですが、逆にそうでない柄を探すとインクジェットでのプリントであることが推察できます。従来のホームテキスタイルでは顔料捺染と相場が決まっていたので、インクジェットインクの開発・マーケティングサイドもホームテキスタイル市場をターゲットと考える向きが多いと思われますが、事情はそう簡単ではないようです。

まず、顔料捺染用の顔料は既に大量に生産されており、安価に供給されています。インクジェットインクに関与している知識からは、分散という工程が入る分「顔料インクは染料インクに対して原価が高い」という印象がありますが、そこらは事情が異なるようです。下請けの捺染プリント業者は非常に薄いマージンでプリントを受託しているため、インクジェットに乗り換える余裕がないというのが実情です。ここをクリアするには「プリントの発注者が、インクジェットによるプリントの付加価値を認め、高い加工賃を払ってあげる」必要があります。

更に、ホームテキスタイルの世界は、人の体に合わせて布を裁断するアパレル向けと異なり、広い布をそのまま使うケースが多いため「3.2m幅などの広幅布」を使用します。高い売値がつけられる有名デザイナーによる一品ものなどのレアなケースを除き、メーカーとしてある程度の売り上げを稼ぐためには、それなりの高速で意味のある量をプリントしなければなりませんが、「テキスタイル向け顔料インクを搭載した3.2m幅の高速インクジェット機」は世の中に数えるほどしかありません。また3.2m幅のシングルパス機も存在しますが、実際に顔料インクを搭載して安定稼働しているという情報は聞きません。

そして、やはり現段階ではインクジェットの顔料インクによるプリントは「画質がまだイマイチ・前処理が必要」などの点で発展途上です。インクジェット顔料プリントでホームテキスタイル分野の従来技法を置き換えるには「画質・プリンタ・価格」の三重苦をクリアする必要があります。逆に、単純な置き換えでないアプローチをすれば可能性はあろうかと思います。

上の写真の事例はインクジェットによるプリントであることは間違いないですが、全てが顔料であるとは思えません。一部、あるいは全て「(反応)染料インク」によるプリントと思われます。染料ならば「画質はクリアできており、広幅のプリンタも存在」します。また価格は、例えば最初の写真が特定のホテルの特注ものだったとすれば、プレミアム価格を払ってもらえます。またオタク市場の価格は特別なプレミアムがつきます。そこならスペースはあるでしょう。

こういうものも、ある所の「オタク市場」的価格がつけられると考えられます

柄を見る際に、デザインや色の美しさではなく、繰り返しパターン(リピート)の有無ばかり見てしまいますね、職業病かな(笑)

椅子やソファなどの布張り部分もホームテキスタイルの一部です。ここにも職業病の人が(笑)

年々、こういう事例は増加しつつあり、顔料か染料かは別として、インクジェットが徐々にスペースを拡げつつあるのは確かなようです。

柄よりも背景の人に注目。ホームテキスタイルはインド・パキスタンでのプリントが多いといわれます。

次回はいよいよデジタルプリンタが並ぶ H4.0 の報告を書きます…やっとそこまできた(笑)

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