OIJC:インクジェット・サマースクール「今さら訊けないインクジェット技術」

イベント参加報告というより、イベント主催報告になります。8月28日(水曜日)、都内青山のホテル島根インにて、インクジェット・サマースクール「今さら訊けないインクジェット技術」を主催致しました。初めての試みでどのくらいの需要があるのかわからなかったこと、大勢集まり過ぎると質問もし難いかも・・・などを勘案し、まずは第一回目は50人と限定して募集をし、最終的には56名の聴講者の方と講師・スタッフ13名、都合69人のセミナーとなりました。

私としても初めてのコンファレンス運営で、細かい不手際も多々ありご迷惑をおかけした点も多かったと反省しておりますが、総じていえば、「一日かけて3件のプレゼン、一件あたり90分枠で、徹底質問をして頂ける設定」、「56名とはいえ業界の多方面からの参加者相互のネットワーキング」の実現・・・その先には「インクジェットに関わる人々のコミュニティの形成・集まることができる場の創造・提供」という目標に向かっての第一歩は踏み出すことができたかなと思います。参加して頂いた皆様、講演者の皆様、運営にご協力頂いた皆様に厚くお礼申し上げます。

次の一手も見えてきました!

会場の様子

ALTECH 岸本さん

GIS 金子さん

KNF社 ブース

今回の趣旨は「インクジェット産業・技術のどこかに関わっているんだけど、実は全体像を理解しないままに、目の前の課題を追いかけているだけになってしまっている」、「腹を割って『これってどういうこと?教えてくれない?』と同僚に訊いてみたいんだけど、今さら訊きにくいよなあ・・・」、「でもやっぱりどこかでキャッチアップしておきたいよなあ」・・・そんなニーズに応えたいというものでした。

そんなニーズ?それは私自身が経験してきたことでもあるのです。私は門外漢から、インクジェット事業部長を拝命してしまったので「素人なんで、まずは教えてよ」と部下に依頼することができました。と、同時に、部下の間で「実はモヤモヤしてる疑問があるんだけど、もう永らくインクジェットに関わっているので、今さらこんな質問できないよなあ・・・うっかりそんな『ド素人質問』したら馬鹿にされちゃうよなあ・・・」そんな空気を感じたのです。

これはマズイ!・・・という訳で、前職のなかで、「他部門から飛ばされて、たまたまインクジェット部門長を拝命してしまったド素人の大野を、教育してくれよ!ド素人に分かるような言葉でインクジェットの技術を説明して頂戴よ!その際、大野が一人で聴くのはあまりに勿体ないので、聴きたい人はオープン参加で来て頂戴よ」・・・そんなことをやりました。今回はそれを業界横断で、オープンにやってみた!・・・そういうことなのです。

最初のプレゼンは、ALTECH社の岸本さんによる ImageXert社の液滴観測装置の説明。笑ってしまうのですが、最初の質問に手を上げたのは聴講者ではなく、まずは大野「リガメント・・・って何ですか」笑)、続いて講師サイドの KNFジャパンの細畠さん「リガメントを電圧で調整・・・という話があったのに、そのリガメントのモデル式に電圧が登場しないのは何故?」

大野も同じ疑問を持ちました。リガメント?あまり聞いたことないなあ・・・で、岸本さんの答え「要は『尾』の部分、テールともいわれます」・・・なんだ、そういうことか!用語も統一されてないんだね、この世界。混乱して当然だな。で、電圧の方は液滴の速度に代用されるので数式には含まれることで・・・まあ、そうか!

でも、文系の岸本さんの説明は全般に極めてクリア!更に様々な角度からの質問に、臆することなく的確に即答していたのは印象的でした。時間があれば、大野がもう一押し突っ込みたかったのは、リガメントのモデル数式の「次元解析」・・・Lの単位は何なんだい?(笑)・・・右辺を整理してみてよ!

午後一は、GISの金子さん。ケンブリッジ本社が今回のイベントに大変関心を持っていて、前日まで「これもカバーしてくれ、あれも頼む」とプッシュしてきたとのこと!大野的には二つの見方があって・・・一つは「そんなん、現地マネージャーの金子さんに任せておきなさいよ!」、もう一つは「そのくらい、英国本社が日本にちゃんとした情報を伝えようとする本気が伝わってくるな」ということ。日本市場なんて・・・と、半ば捨てている海外企業もある中で、ちょっと嬉しい気もします。

ここでも、KNFの細畠さんが「今さら訊けない」脱力質問を(笑)「よく XAARタイプというヘッドが話題にのぼりますが・・・あれって何ですか?」・・・ヲイヲイ(笑)でも、こういう質問が講師側からでてくるというのがいいんですよ(笑)その「XAARタイプ」と総称されるヘッドを扱っていた私からは出てこない質問ですからね!

金子さんのプレゼンは、流石に永年の実績がある GISが全社を挙げて、今回の金子さんのプレゼンをサポートしたことがよく伝わってくる内容でした。

最後のプレゼンは、これまで「ド素人質問」ながら、実は聴講者の方々にもできないような鋭い質問をしてきた KNFの細畠さん。他の2社の方々は「ツッコミ返し」をしたかったかもしれません(笑)しかし、非常にシンプルに、よく整理されたプレゼンは大変分かり易かったです。細かい数字の齟齬はさておき、ポンプに負荷を与えないで長寿命を指向するなら、能力の高いポンプを低負荷で使うとか、ステッピングモーターがこういう用途に不向きという解説がシンプルな数字で表現されていたのが腑に落ちた方も多かったと思います。なにより「ポンプでこれだけのことが語れるんだ」ということに、むしろ驚かれた方も多かったと思います。

全般に、講師側からも「ド素人」質問が出るくらいで(・・・これ、決してサクラ質問ではありません、マジ(笑))、それに誘発されて活発な質疑応答がなされました。時間はいくらあっても足りませんが、まずは十分に質疑応答ができたかなと思います。

今回の趣旨は「ともかく、可能な限り、質疑応答の時間を設け、質問のやりのこし、時間切れでの質問不足、残尿感(笑)・・・そういうことが無いように」と、余裕を持った時間設計をしたつもりです。また、最後の質疑応答のセッションには、インク開発のエキスパートとして JETIC社の鷹尾社長、プリンタ開発の(マネジメントではなく)実務に自ら関わってきたコニカミノルタの藤井(元)プリンタ開発部長にも参加頂き、実務経験からのナマナマしい回答や情報も提供できる体制としました。

そして、これが密かな(本来の?)目的の「ネットワーキング・レセプション」も、参加者皆様相互のネットワーキングと情報交換・収集、新たな関係構築の場として機能できたかなと思います。日本ではいまだ数少ない貴重な存在としての「ワン・オフ(一品料理、個別カスタマイズ)」のインテグレーターの日本文化精工の清水社長、最高品質のグラビア印刷を世に供給しながらデジタルの可能性を探っておられる千代田グラビヤの佐藤社長はじめ、色材メーカー、樹脂メーカー、プリンタ開発者他さまざまな分野の皆様が新たな繋がりを構築できたかなと思います。

自画自賛にはなってしまいますが、総じて大変有意義なセミナーを主催することができたかなと嬉しく思います。参加者の皆様、講師・運営側の皆様のご協力に感謝いたす次第です。

さて、次の一手:

  1. 今回はなにぶん初回で、どのくらいのニーズがあるのか手探りの中での開催でした。ニーズの手応えを感じましたので、このセッションは、情報が十分に行き渡るまで定期的に続けていこうと思います。
  2. 今回は、インクジェットになんらか関心をお持ちの方々に広く参加を呼び掛けましたが、企業単位での出張コンファレンスも可能かなと思いました。
  3. 今回は「液滴観測装置」「駆動基板とインク供給」「送液ポンプ系」という講師陣でしたが、例えば「ヘッドメーカー」「インクベンダー」「メディア」「インテグレーター」を講師に迎えてプレゼンを頂く・・・これは是非と思っています
  4. そして最後に(Last not least)今回のような「徹底質問会」とは別に、「徹底アピール大会」のようなコンファレンスを開催したいと考えています。こういう企業がインクジェットに絡んでいる・・・という全体像のあぶり出しと、そして最大の狙いは(またしても)ネットワーキングなのです。これは今後定期的に構想を固めつつ、ウェブとメルマガで情報を発信していきます。

以上、取り急ぎのコンファレンス参加(主催)報告です。






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