漢詩のススメ

11月 30日から日本に対する中国のビザが免除になりましたね。これで中国への出張・渡航が随分楽になりますね。差し当たっては来年春の下記の展示会のどれか(あるいは全部?)に出かけてみようかと考えています。広州と上海で日程が重なっていたり、DPESだけは少し日程が離れていたり・・・ちょっと悩ましいですけどね。

さて、今回はちょっと余談的なことを書こうかと思います。「漢詩のススメ」です(笑)高校の頃、漢文・古文は落第生同然だった私が「漢詩のススメかよ」と、国語の教師があの世で笑ってるのが目に浮かびますが・・・(笑)

中国で顧客と食事に行くと大概は円卓のある個室に案内されます。私は事業部長を拝命していたので相手も必ず社長が出てきて、食卓では一番上席(右の写真でナプキンが立っている席)に案内され、先方の社長は右隣に座ります。

これは中国ではお約束で、逃げることはできません(笑)通訳してくれるスタッフも間に座ることはありません。

よくよく考えれば、サプライヤー側が接待するのが普通と考えると相手が上席のはずなんですが、まあ日本からの遠来の客というのと、数少ないヘッドメーカーの事業責任者と親交を結んでおくというのは彼らなりにステイタスであり、2、3日しかない夜の宴席を上客として占有したいという意図もあったのかもしれません。

で、ここで問題になるのは・・・相手の社長は英語を話せない人が殆どだったという実態なんです。私の中国語もダメダメで会話が成り立ちません。短時間ならいいですが、食事時間中、隣に座っている相手の社長と会話が無い状態というのはちょっと耐えがたいものがあります。まあ、それでも斜め前あたりに座っている中国人スタッフの助けを借りて、「中国の市場はどう?」「今度の新製品は売れそうかい?」とかなんとか・・・出来るだけ皆に共通っぽい話題を探して話をします。

「春暁」 孟浩然

が、やはりふと話が途切れる瞬間というのはあるもので・・・なにか話題はないかと探して思いついたのが「漢詩」なんです。なんで、そこに行くかなあ(笑)

とは言え、高校でサボりまくっていた(睡眠学習くらいはしていたかも(笑))漢文がスラスラ出てくるほどの記憶力は無いので、トイレに立つフリをしてスマホでカンニングします。

最初は流石の私でも名前くらいは知っている「春暁」・・・春眠暁を覚えずってあれです(笑)但し、日本語で春眠暁を覚えずって言っても全く通じないので、取り敢えず7文字x4行=28文字を丸暗記して席に戻り、箸袋の裏にそれを書き出します。

これは相手もかなり驚いてくれますね!

「江南春」 杜牧の名作です。水村山郭酒旗風・・・新酒あります・・・って酒屋の店先の旗が風に揺れている いいなあ(笑)

相手の社長クラスの年代では、社会主義教育の他に、教養として或いは国語教育の一環として五言絶句や七言律詩の名作、杜甫や李白のいくつかはちゃんと習ったんだと思われます。が、今の若い世代になるとそういうのも希薄になっているんじゃないでしょうか?まあ、私の高校時代みたいなもんか(笑)

いずれにしても、日本人が中国の古典を暗唱して箸袋の裏にさらさらと書いた!これは結構な事件のようです(笑)社長から「大野先生は漢詩が書けるんだぞ!」「おおっ~」でなもんで一躍ヒーロー、一大教養人扱いで相手の態度も変わったりします(笑)

まあ、でも自分の国の文化に対するリスペクトって嬉しいもんでしょうね。日本人でも外国人が芭蕉や蕪村の俳句を呟くとなにやらポジティブな反応をする・・・みたいな。

これ、中国人とアメリカ人の間では凡そ成り立たない話・・・やはり古に漢字文化を共有することができたアジア人同士だから成り立つ話ですね。

中国や中国人に対する想いは政治状況と絡んでいろんなスタンスがあるでしょうが、やはり漢字文化の共通項は素晴らしい財産だと思っています。

アメリカ人では無理な漢字文化の共有・・・でいえばこんなエピソードもあります。

上海での展示会で顧客の一社がディナークルーズ船を借り切ってパーティを主催したんです。そこには各ヘッドメーカーやインク・部品・基板などのサプライヤーも全員が招待されていた大規模なものです。

やがてパーティが始まりホスト側の社長が中国語で長い挨拶をします。「スカートの丈とパーティの挨拶は短いほどいい」って文化は無いようですね、中国には(笑)

続いて某ヘッドメーカーのアメリカ人(ドイツ人)社長・・・ネタバレしてるでしょうから書きますが富士フイルム DIMATIXの Martin Schoppler氏です(笑)彼は英語で非常にオーソドックスなスピーチをしました。

で、私の番・・・何か面白いこと・ウケることを言わなくては恥だ!と血が騒ぐのは吉本文化で育った関西人の血でしょうか?(笑)「え~、本日はお招きいただき光栄です。え~、見渡すと競合メーカーも招待されているようで・・・正に『呉越同舟』状態ですが、今宵はしばし戦いを止めて楽しくやりましょう!」

英語でやって中国語に通訳してもらったのですが「呉越同舟」の部分だけは「ヴー・ユエ・ドン・シュエン」とかなんとか中国語でやりました。ウケ狙い成功(笑)

他にも四面楚歌・合従連衡・羊頭狗肉・一石二鳥・温故知新・臥薪嘗胆・画竜点睛…など中国の故事来歴由来で使えそうな四字熟語(四字成語)が沢山有ります。漢詩も杜甫の春望とか李白の早発白帝城とかくらいで十分、スマホのカンニングでオーケーです(笑)

漢文・古文落第生の私が言うのもナニではありますが(笑)、是非こういうコミュニケーションを楽しんでください!

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