InPrint (Milan):産業用インクジェットに特化した展示会(4)総括

今回のミラノ開催の InPrintを総括します。展示会はまずはスポットでも参加・視察しないと自分で感じることはできませんが、更に大事なことは、継続的に参加して、その差分や変化を感じ、トレンドを掴むことです。

私も前回の 2017年のミュヘン開催のは参加できなかったのでエラそうなことは言えませんが、それ以前のミュンヘンやハノーバーには参加して大筋の流れは掴んでいるつもりです。ここでは昨年のミュンヘンとの出展社のデータの比較を通じて総括コメントを書いてみます。

ボ~っと展示会視察してんじゃね~よっ!(笑)

InPrint 出展社数比較

計数データ

■ 出展社数はミュンヘンの約3分の2
やはり昨年のミュンヘン開催と比較すると出展社は 153社から 112社へ大きく減っています。元々、この InPrintの主催者がミラノ開催を企画した数年前は、テキスタイル機の出展を期待して、REGGIANIや MS、或いはコニカミノルタの私などに出展要請が来ました。が、テキスタイル機のメーカーは、出すならば繊維機械の展示会の方が集客や知名度向上を期待できるという理由であまり積極的な姿勢を見せませんでした。そういう意味では、少し企画倒れのまま今日まで来ている感じが否めません。

■ 主要な出展社数の国別ではドイツ(DACH)・英国・イタリアあたりがメジャー
DACH(ダッハ:ドイツ語で「屋根」の意味)と呼ばれるドイツ(Deutschland)・オーストリア(Austria)・スイス(Confoederatio Helvetica(スイスのラテン語名称))は人的な交流もあり、やはり中核を形成しています。次いでケンブリッジを擁する英国、DACHに近い北イタリアを含むイタリアが続いています。今回は地元ということもありイタリアが数の上ではトップとなっています。なお、日系企業でも欧州現地法人が出展している場合はその国に分類されています(ミマキや武藤工業など)。

■ この2回に継続して出展したのは 74社
規模や集客がミュヘンほどには期待できないことを承知の上で継続出展したところは、それなりに事業にコミットしていると見られるかと思います。下記にリストを掲載しておきます。

■ ミュンヘンには出展し、今回は出展を見送ったところは 79社
展示会の立地や効果を考えると、それはそれで合理的な判断と言えます。メジャーなところでは、adphos Digital Printing GmbH、CALDERA、EFI Electronics for Imaging GmbH、Global Inkjet Systems、Hapa AG、HP Specialty Printing Systems、Hymmen GmbH Maschinen- und Anlagenbau、Inca Digital Printers Ltd、Kyocera Fineceramics GmbH、mprint morlock gmbh & co. kg、MS Printing Solutions、MUTOH、Ushio Europe BV、ZIMMER AUSTRIA | Zimmer Maschinenbau GmbHあたりでしょうか。逆にミュンヘンには出展せず、今回初出展のところは数の上からもイタリアの中小企業が多いと見られます。

■ この展示会は産業用インクジェットの展示会ではなかったのか?

出展社の何割かはスクリーン印刷に絡む業者であったことは確実です。そもそも産業インクジェットのスタート時点では、スループットの比較的遅かったスクリーン印刷を置き換えることから始まったわけです。欧米のインクメーカーで UVインクを手掛けるところの有力どころ(MARABU、NAZDAR、富士が買収した SERICOLなど)はスクリーン印刷のインキからスタートしています。また機器も、THIEMEのようにスクリーン印刷機器からスタートしたところが多いです。

今回、出展社を募るにあたり、未だにインクジェットに参入していないスクリーン機器メーカーや関係者に声をかけ、世の中の変化を見せて刺激したいという主催者の意図も透けて見えます。それが「産業用インクジェットの展示会ではなかったのか?」と、展示会の性格をやや曖昧にしてしまった原因でもあるのでしょう。

この主催者は、2018年 4月にアムステルダムで PURE DIGITALという展示会を企画しました。集客ターゲットをデザイナーやエンド顧客(典型的には建材を使用する建築業)に絞って、間接的に裾野の拡大や需要の喚起を促しましたが、結果的に盛り上がりに欠ける結果となりました。視察メモはこちら。

■ 産業用インクジェットは踊り場なのか?
ある方と会場で立ち話をしたところ・・・「最近、なにか閉塞感というか、産業用インクジェットが踊り場にいるような、微妙な足踏み感がありませんか?」「やはり、そう思われますか?」「何故ですかね?」という会話をしました。確かに、ワードフォーマット機の普及期や、セラミックの一大ブーム期、皆がテキスタイルの改造機から本格機を開発し夢を語っていた時代から、少し落ち着いた・・・というか方向感を失った・見出せないでいるように思うこともあります。

主催者が火を点けなくても、自然発火して爆発している 3Dプリンタ(Additive Manufacturing)とは少し違う様相を呈しているように感じることはあります。先般 EFIの Guy Gecht氏の退任インタビューでも触れましたが、彼が $500mil を $1bilに倍増させた同社のインクジェット事業・・・これを更に倍々のように $2bil,$3bil に拡大していくには、発想を変える必要があるでしょう。その話はまた別途書きます。

取り敢えず、来年の InPrintでミュンヘンの 2017 vs 2019の差分を観たいものです

■ 写真をクリックするとスライドショーになります。個別解説は長くなるので割愛します。来年はもっと企業に出かけて行って、報告会を増やすことを考えていますが、そこで質疑応答を含めて更なる詳細情報をご提供していきます。

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