PureDigital:オランダ Amsterdam 4月17~19日開催

4月17~19日にアムステルダムのRAIにて開催されたPure Digitalを覗いてきました。WEBはちょっとユニークで、またしきりにメールも発信されていて、なにやら新しい動きのようで気になっていました。

Pure DigitalはInPrintと同じチームが主催したもので、WEBには下記のような概要が書いてあります。

Pure Digitalは創造的なコミュニティのための新しくユニークなデジタルプリントイベントです。

Pure Digitalは、印刷業界と創造的産業のギャップを埋めるために設計されたもので、デジタルプリントの革新的なパワーをクリエイティブ業界に結びつけます。Pure Digitalは、印刷業界が真の可能性を高め、発火させるための重要なポイントを提供し、クリエイティブ業界に新しいアプリケーション(装飾用、小売用、梱包用)を提供することを求めています。

出展者は、創造的なコミュニティのためのデジタルイメージングの可能性を示すことに関連するデジタル印刷機械会社、デジタルプリントサービスプロバイダ、材料メーカー、インクメーカー、ソフトウェアベンダー、消耗品およびサービスです。

ビジターは、デザイナー、クリエイティブディレクター、インテリア制作会社、表面デザイナー、プリントデザイナー、パターンデザイナー、ブランドマネージャー、マーケター、マーケティングサービスプロバイダー、創造的な印刷制作会社などのクリエイティブ業界から参加します。

Pure Digitalは、インテリアデコレーション、小売およびホスピタリティ環境、革新的なパッケージングおよび統合されたマーケティングキャンペーンのためのデジタル制作のためのアプリケーションとテクノロジーを備えています。

Pure Digitalは建築家やインテリアデザイナーを含む建設業界の15,000人のプロフェッショナルが参加し、2018年4月17-19日にアムステルダムのRAIホール12で開催されるBuilding Hollandと共同で開催されます。

またミッションとして下記のようなことが書いてあります。

Pure Digitalのミッション

消費者の変化は、パーソナライズされた体験や製品の需要を押し上げており、デジタル印刷は、この需要を満たす独自の能力の結果として、完全に成長しています。しかし、最新のPure Digital Surveyによれば、成長への最大の障壁は、クリエイティブ業界と印刷業界の継続的なギャップです。Pure Digital ショーはそのギャップを埋めるでしょう。

伝統的なプリントベースの展示会とは異なり、Pure Digitalのイベントフォーマット、コンテンツ、およびミッションは、クリエイティブディレクター、建築家、インテリアデザイナー、グラフィックデザイナー、マーケティング担当者、プリントサービスプロバイダーなどクリエイティブ業界にアピールするように特別に設計されています。Pure Digitalは、デジタルプリントの画期的なパワーで創造的なマーケティング業界を鼓舞します。

ブランドは、関連性を保ち、急速に発展する消費者景観に対応するために、デジタルを採用することを余儀なくされています。短期間のカスタマイズされた制作に対する需要の増加は、クリエイティブなサプライチェーン全体が現在、デジタル技術が提供する価値を活用するという圧力を受けていることを意味します。

印刷物は、装飾、梱包、または小売りに焦点を当てたプリントであっても、常に感情的なつながりを可能にしています。デジタルプリントでは、ノイズをカットして消費者と直接コミュニケーションを取って購買意思決定に影響を与えたり、ユニークな経験を生み出したり、変化する競争シナリオに迅速に対応したりすることができます。

消費者購買のオンライン小売への継続的な移行は、ブランドが小売業となり、店舗がショールームになったことを意味します。多くの大手ブランドが顧客とのつながりを変えています。小売店、ホテル、健康リゾート、ジム、レストラン、病院、学校などはすべて、デジタルプリントが魅力的な体験を作り、彼らが生息する環境を改善するための新しい可能性を模索しています。その結果、デジタル印刷は、インテリアからパッケージまでの最終的な経験の一部となっています。

今まで、デジタル印刷がもたらす可能性のあることを示すことによって、創造的な産業をターゲットにしたイベントはありませんでした。

Pure Digital Showはそのイベントです

狙いは悪くないと思うのです。大方のデジタルプリンター(印刷機器一般もそうかも)の展示会は「プリンターメーカーが製品を並べ、ディーラーや関連業界人が見に来る」というのが軸になっていて、必ずしもコンテンツをクリエイトするデザイナーやクリエイターと呼ばれる人達を向いていないないように見えます。そうでなければ、Heimtextil や Interpack のように「最終成果物指向で、それをプリントする手段は(従来はスクリーンやグラビアと決まっていたので)殆ど顧みられない」というのが対立軸としてあります。

そういう現況の中で、デザイナーやクリエイターに「デジタルはここまできた。デジタルでこういうことが可能」ということを伝える・教育する場を設定し、デジタル化の流れを加速することというのは、誰かがやらなければならないことのように思えますし、それを初めての試みとして実行したことには敬意を表したいと思います。実際、働きかけた相手としては数々のデザイナー達やその加入組織で、アドバイザーとしても数多くのデザイナーが参加しています。

ただ、展示会として成功したかどうかというのは別問題のように思われます。写真は「スポンサーや支援組織」のロゴのリストと「フロアプラン」ですが、出展者の数の方がスポンサーや支援組織の数より少ないように見えます。出展者も、プリンタ・インク・メディア・ソフトウェアなど各分野のメジャーなプレーヤーが網羅されているわけではなく、ちょっと拍子抜け感があったことは否めません。出展した方も、高邁な趣旨は理解しているとは言うものの、やはり「買ってくれるお客」が来ることを期待しているはずで、その意味からも期待が外れたのではないでしょうか。


当初の計画にあったのかどうか定かではありませんが、結果としてこの展示会は BUILDING HOLLAND という、建築・建設関係の展示会に吸収され、そのごく一部のフロアで開催されました。BUILDING HOLLAND は事前登録すれば入場無料で、DRUPAやFESPAといった印刷・デジタルプリント系の展示会とは異なる収益構造です。本体のBUILDING HOLLANDが入場無料なのにPureDigitalだけを有料にするというわけには行かなかったのでしょう。

BUILDING HOLLAND を見に来たビジターや出展者が、同じフロアにあり垣根もないPureDigitalを覗いていたという様子もあまりありません。強引に言えば、IIJ社による壁紙プリントが展示されていたので、建築関係者も見に来てもいいのになとは思いますが、流石にそれも無理があったようです。

そのエンジンでプリントした「ヴィーナス誕生」壁紙の前で打合せするスタッフ

英国 Industrial Inkjet 社の壁紙プリントエンジン。画質は素晴らしいレベルに到達しています

デジタルテキスタイルを手掛ける Hollanders 社の Hollanders 社長。テキスタイル関係はこの一社のみ

テキスタイルの同時両面プリント

ミマキはここにも出展。かなりマイナーな展示会でもほぼ必ずミマキは見かけます

ミマキの展示

durst ですが、いつものロゴや色使いとは違うような…

durst は建材に力を入れているようです。品質は流石の durst です

オランダの印刷屋さんも出展。JetPress720でプリントした美麗なカタログを事例として展示

ドイツの4大壁紙メーカーの一つ ERFURT が出展。デジタルプリントしたものをだしていたと思われますが詳細不明

サードパーティインクの STS 社

何故か KIP が…

講演スペースもややまばらな聴講者

主催者の一人 Frazer Chesterman 氏(右)

講演内容 4月18日

講演内容 4月19日

ESMA の Peter Buttiens (右)が冷やかしと自分のコンファレンスの集客に

HP の インテリア系の伝道師 Terry とミマキから転職した Mike

他の展示会にも出展していて、一応知っている出展者はこんなところでした。

デザイナーやクリエイターに「デジタルはここまできた。デジタルでこういうことが可能」ということを伝える・教育する場を設定し、デジタル化の流れを加速すること! この目的を達成するのが、こういう形の展示会がよかったのか?というと、結果論ではありますが少し違ったように見えます。まあ、今回が初めての試みなので、今回だけで判断するのは早計ですが、次回があるかというと今回の出展者たちは次回は見送る可能性が高いのではないでしょうか?

また、展示会ではなく、コンファレンスを主体に行うという方法もあるかと思います。その方が「空振りリスク」は少ないように思えますが、一方で「動くモノ」がないコンファレンスはややパンチに欠ける側面があります。更にHPやefiといった資金力とマーケティング力を持ったメーカーが自社の製品を並べてデザイナーやクリエイターに教育や気づきの場を設定するという方法もあります。が、それは当然、自社製品の宣伝の場とならざるを得ません。

デザイナーやクリエイターに「デジタルはここまできた。デジタルでこういうことが可能」ということを伝える・教育する場を設定し、デジタル化の流れを加速すること 最適解は一つはないと思われます。今回は新規の展示会を立ち上げようとして空振りした感がありますが、既存の展示会にこのミッションを加えて、メーカーの技術とデザイナー・クリエイターの出会い・教育・気づきの場としていく…そういうことを考えつつ、そういう方向に向かうように尽力していきたいと思った次第です。

以上

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