OIJC:drupa2024 報告会 事前質問&回答 (1)

OIJC主催の drupa2024報告会にて事前質問を募集したところ、沢山のいい質問が集まりました。これを参加者だけで独占するにはあまりに勿体なく、また回答も広く募集したいのでこちらに公開いたします。回答は今回出張された何人かの専門家の方にも順次お願いしていきます。まずは質問の多かった「中国企業」について・・・

中国関連質問
★ インクジェット印刷機における中国メーカーと日系メーカーとの現時点での差分は何か?技術的な面や保守など様々な角度からの見立てで論じて頂きたい。

★ 今回のdrupa2024では中国メーカーの出展が相次ぎましたが、観衆の注目度や関心度やブースの盛り上がりは欧米日のメーカーと比べてどのような感じでしょうか?(中国メーカーの印刷機の品質はかなり上昇しているという印象ですが、欧米の顧客が中国メーカーということで敬遠するようなことがあったのかなかったのかをお聞きしたいです)

★ 中国系メーカーではラベル、パッケージ分野の出展が多く、彼らはこの分野が発展すると考えているのかどうかご存知でしょうか。

★ チャイナドルッパとの表現もされていて、中国企業の出展が多かったかと思いますが、中国企業特有のアピールや機能/性能や戦略みたいなものは見られましたでしょうか?

【回答者:大野】
中国企業は兎に角仕事が速い!製品開発する際に、日本企業は(必要以上に民主的或いは官僚的な)段階を踏み、様々な角度からの確認を行い、会議を何度も繰り返してローンチに漕ぎつける。その過程は往々にして2年(以上)かかり・・・タイミングを逃す(笑) 中国企業はオーナー系の企業が殆どで、トップダウン(独裁的に)最短距離で物事を進め、兎に角製品を出す。新しいヘッドを渡してから3~6ヵ月で何らかの製品やプロトを出してきて展示会に並べる・発売するイメージ。

★ その中間あたりに正解があるのでは?という議論もあるが、日本のやり方は正直申して必要以上に官僚的!ステップごとの確認もお客の真の要望を知りもしない「品質保証部」が、開発要件を満たしたかどうかだけで判断するようではあまりに形式的。それよりまずは80%段階で市場に製品(というかプロトレベル)を出して「お客に叩いてもらう」方が現実的かつ実践的で、早く「いいもの」に仕上がる可能性が高い。Windowsや諸ソフトが β版の段階で市場に出して、顧客を巻き込んでバグ・フィックスをやるイメージ!・・・日本企業にそれをやる勇気があるかな?社内規定にチャレンジしてそれをやる勇気のある製品マネージャーっているかな?(笑)確立されたブランドを汚してしまうかもしれないリスクを冒してやる勇気がありますか?・・・かくして日本企業は「満を持して・・・市場参入の機会を逃す」(笑)

中国企業は「速かろう・安かろう・悪かろう」といつまでも考えていては間違う。もちろん有象無象、無数にある中国メーカーの大半はそういうノリだが、老舗で今日まで生き延びてきている企業や、新興でもオーナーの強烈なリーダーシップに率いられた企業の品質は最早馬鹿にするレベルではない。日本企業のヘッドメーカーも「品質向上・画質向上」を手伝っている。顧客の製品の品質を向上させるのは当然のこと。安定性やアフターサービスなども、かつてはそこが課題ではあったが、そこを改善して「頭ひとつ抜けてくる」企業も増えてきている。

中国企業は「ここが流行る」という話があればダボハゼのように我も我もと食らいつく(笑)今回「段ボール印刷」「パッケージ印刷」がやたら多かったのも、どこからか「これからはパッケージング」という情報を得たとか、efiがやっているからという理由(だけ)で飛びついたところも多いと思われる。まあ、インクジェットの用途の一つとしてパッケージ分野が開けるのは間違いのないところなので、中国企業の行動様式も間違いとは言えない。ただ、そこで他社とどう差別化を図るか?あたりについては、一般論としてそういう発想には乏しいように見える。ヘッドの性能を目いっぱい引き出す・・・というような発想で、みな似たり寄ったりかも・・・

中国メーカーは欧米&日で完全な市民権を得たのか?・・・という問いには「ビミョ~」と答えざるを得ない。Hanwayのワンパス・段ボール印刷機は日本の岡山製紙に導入されている。LIYUの大判プリンタは東欧を中心に広く受け入れられている。FLORAの諸分野のプリンターも「グローバル・サウス」を中心に広く受け入れられており「頭ひとつ抜けてきた」という印象はある。ただ、大半の中国メーカーは「どこか見えない壁」に突き当たっているのではないか?欧州で普及するにしてもまずは東欧や南欧あたりの「SwissQprintのプリンターには手を出せない田舎の諸国」からではないか?

主催者側も、中国企業のパワーや「金払い」は魅力だったに違いないが、その一方で「このまま中国にせっけんされるのはど~なの?」という漠然とした危惧があったのではないか?日本企業は完全に市民権を得ているが、中国企業はまだどこか「お客さん」ではなかったか?無碍には扱われることはなかったと思うが、積極的に熱烈歓迎された風もない。プレスコンファレンスを開催した中国企業は無かったように思う。そこらあたりはまだ「仲間入りできていない」間接的な証拠にはなるだろう。また、正直申して政治的な警戒感も無いとは言えないだろう。企業の国家への忠誠義務やスパイ法などで強権的に国家安全を図ろうとする政権に対する漠然とした不安はあるはずだ。そのあたり、4年後はどうなっているんだろう?また4年後に主催者は中国企業群をどう扱うんだろう?

それにはもうひとつ、中国人の行動様式も無関係ではないのではないか?会場に向かう混雑した路面電車の中で大声で会話する姿、静かなレストランでも傍若無人に振る舞う姿・・・日本人は空気を読むが、彼らは空気を読まない。同じ騒々しさでもドイツ人の中にいて「イタリア語での大声の会話」と「謎の言葉の中国語での大声の会話」では質が違うことに気が付いていない・・・逆に、ここに気が付いて中国人がスマートになった時、日本はもはや対抗していけるのだろうか?

【回答者:中村】
★ 保守サービス。中国は保守サービスをメーカーがやらないで専門会社がやるような文化があります。今は変わったかもしれませんが、保守や部品の担保など、不安は残りますね。まるまる部品を抱える日本の代理店があるなら信用して買うのかもしれませんが…

★ 中国でも大手はしっかりとした展示と品質だったように思います。皆英語もしゃべることができました。しかし、小さなブースのところは、応接用テーブルでスタッフがご飯を食べたり、世間話をしたり、マナーが良くない会社もあり、欧米の展示会に出展するという姿勢が見えないという問題を抱えていました。一方、日本で行われたデジタルサイネージジャパンでは中国企業が多く出展していましたが、そんな企業はひとつもありませんでした。これは主催者がしっかりと出展者にブース内ルールをお願いをしているからだと思います。主催者が「これとこれはしてはいけない」「こうすることで先進国の基準になる」など、マナーをしっかり教育するべきだと思います

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