企業紹介:ユニオンケミカー 可食インクに注力


7月のある日、大阪の枚方市にある「ユニオンケミカー」というプリント関連資材メーカーを訪問しました。同社の伝統的な主力商品は熱転写やドットプリンタのインクリボンだそうですが、最近はインクジェット用インク、中でも食品や錠剤などに直接プリントする「可食インク」に注力しているとのことです。

Union Chemicar headquarters.jpg
By L26Wikipediaから, CC 表示-継承 4.0, Link

同社サイト 及び Wikioediaによると、創業は1905年(明治38年)という、100年以上続く老舗企業。かつては伝票の必需品だったカーボン紙の製造販売から始まり、その後はノンカーボン紙やカーボンリボンや熱転写プリンタのリボンなどに分野を拡げ、2004年からインクジェットインクの開発に着手(Wiki)とあります。同社サイトによれば2004年から可食インクの開発に着手とあるので、当初から可食のインクジェットインクに着手したということでしょう。

2004年当時はまだまだ産業用途に特化したヘッドも世の中に浸透してはおらず、既存の(家庭用)プリンタをベースにした改造機でプリントすることを想定したものだったと思われます。当時は、テキスタイルやTシャツなどのトライアルはありましたが、可食インクの事例は少なかったはず。(比較的早期に着手したのは紀州技研の「タマゴの殻へのマーキング」くらいだったはず。)そういう意味ではかなり先見性があったと思います。

可食インクは、ある意味で典型的に「大手企業が手を出しにくい」分野でもあります。食品メーカーや薬品メーカーなど、日頃から人の体内に入るものを扱っているメーカーは別として、大手プリンターメーカーやインクメーカーはどうしても先ず「なにかあった時の健康被害のリスク」という言葉が浮かび、次に経営トップ層から「それって、どのくらいの規模のインク需要量、売上高が見込めるんだ?」ということになり、結果としては優先順位はかなり下の方になってしまう分野です。

逆に言えば、産業用インクジェットは、超大手・大手のみならず、中小に分類される企業にも、それなりに参入や活躍の場を提供できるということになります。実際、インクジェットというと、日頃はHPやエプソンといった世界的に名前の通ったブランドの動きが気になる方が多いと思いますが、インクジェット先進地域の欧州や、それを見てフォローしている中国などでは、日本人が名前も知らないような鉄工所とか小さなファミリー企業がインクジェットに関わっており、案件の数の上ではそちらの方が圧倒的に多いと言えます。

プリントサンプル

同社サイトから錠剤へのプリント事例

同社によれば、色材は(当然ながら)食品添加物の認可を受けたもののみを使用しているとのこと。それだけなら食品添加物メーカーならどこでも開発できそうなものですが、同社は長年(2004年以来)インクジェットのインクを試行錯誤しつつ開発してきた経験があり、その経験をベースに食品添加物メーカーとパートナーを組んで「インクジェットインクとして機能する」可食インクを実現したとのこと。

それだけなら大手インクメーカーやインクジェット総合メーカーで技術的には可能かも知れませんが、そこに先に述べた「リスク忌避(回避ではなくあえて忌避と書きます)」「事業規模の不透明感」があり、ビジネス的には参入を躊躇してしまい、結果として同社がユニークなポジションを獲得できる環境が形成されているということでしょう。

同社は「可食インク専門のサイト」も開設しており、様々な試作や相談にも応じてくれるようです。上の動画もそのなかにあります。
http://www.foodprint-ink.com/

関連記事

ページ上部へ戻る