- 2018-7-29
- イベント参加報告
■ 花王
drupa2016にシンク・ラボラトリーとのコラボで水系でフィルムに撃てるインクを発表し、以来積極的なマーケティング活動を展開しています。軟包装への展開を睨んで、次回の drupa2020 や Interpack ではメジャーなインクのカテゴリーとなることが期待され、各社も積極的に取り組んでいる分野ですが、先行したメリットや、複数の機器メーカーとの積極的なコラボは、他社と一味違って見えます。また、社内(別部門)に花王の一般消費者向けの多岐に亘る製品群を有しており、「上手く社内コラボができれば」目標画質設定や課題抽出に非常に有利なポジションにいると考えられます。とはいえ、近くて遠いのは社内他部門というのは世の常ですが・・・(笑)
同社は技術開発と並行して、海外のインクメーカー(米国のCollins と スペインのChimigraf )を買収し、海外展開にも積極的な姿勢を見せています。かつて米国のサードパーティ・インクメーカーの Triangle を買収したサカタインクスも同様ですが、米国のインクメーカーは自ら機器開発に関与することも多く、インクと機器の間に一線を画す傾向のある日本のインクメーカーの殻を破る動きを期待したいところです。
■ 東洋インキ
東洋インキは花王と異なりアナログ印刷機向けインクの老舗であると同時に、比較的早くからインクジェット用インクを手掛けてきました。一般に同社を含む印刷用インキを生業とするメーカーは、印刷工程全般やプライマーなどの前処理に詳しく、アナログにおける顧客要望のツボを心得ているというアドバンテージがあります。また分散技術や添加剤などの知見も相当深いものがあります。
今回の東洋インキは欧州とスペインのインクジェット装置メーカーが開発した段ボール印刷機(パッケージの一分野)向けのUVインクと水系インクのサンプルをっ展示しています。
最近、インキメーカーは大規模な印刷機材展示会にブースを出さなくなっている傾向があります。そもそも「動く機械」そのものが集客の目玉となる機器メーカーと異なり、インキ・インクというのはインキ缶やインクボトルを並べてもインパクトが無く、海外展示会では「お酒を振舞うバー」を設営するケースも多かったのですが、最近はブースそのものを設営しない傾向があります。
また、老舗インキメーカーは大手が多く、印刷以外の多彩な分野に事業展開をしているのが一般的で、参入しているあらゆる分野向けの技術や製品を、均等に同じデザインでパネル展示し、その下に少しだけサンプルを並べて、開発から動員された説明員が立っている・・・そんなブースづくりになっているのが印象です。インクジェット屋視点で、あえてハッキリいうと「物足りない」「総合メーカーとして、沢山ある事業の単なる一分野」と見えてしまいます・・・というか、インクジェットが印象に残りません。想像ですが、コーポレートの広報デザイン部門などが絡んで、会社としての統一感を演出しているのでしょう。
花王の展示がベストと持ち上げるつもりはありませんが、インクジェットとして持てるものを、これでもか!これでもか!とやんちゃに並べるやり方の方に活気を感じますし、インクジェットをターゲットにした訪問客へのインパクトは大きいと思います。もちろん花王は消費者製品の大手として、広報デザイン部門がきっちりとブランドやデザインの管理をしているはずですが、インクジェット事業の展示にまでその統制権限を行使しようとはしていないように見えます。
■ サカタインクス
海外の展示会では、INX DIGITAL としてプリンタシステムを開発・展示してかなりの集客があり、また昨年のラベルエキスポでは、EB(電子線硬化)のマシンに搭載されるなど活発な動きをしています。今回は比較的大人しく見えるのは、国内の展示会の「空気」なんでしょうか?