IGAS 速報 (3)2018年7月26日 リコー・キヤノン・コニカミノルタ・小森コーポレーション

■ リコー

インクジェットへの注力を鮮明にしており、2系統のヘッドの他に、連帳機(水系インク)・ワイドフォーマット(ラテックスインク)・建材用途フラットベッド(UVインク)・Tシャツ・壁紙分野(日立ハイテクとの取組みを公表済・海外でも動きあり)など多方面への展開を推進しています。その分野それぞれが、これまでリコーが戦ってきた戦場とは全く異なっており、戦いの大義名分も明確ではなく、仮想敵もよくわからず、戦果(市場規模や獲得できる事業規模)も見えず、長期戦なのか短期戦なのかも見えづらい・・・そんな苦労をされることとは推測しますが、それでもインクジェットに注力するという姿勢は明確に感じます。

インクジェット技術のアピール

水性インク搭載ロール機
VC70000/VC60000

最上位機VC70000

リコーのサイトによると「RICOH Pro VCシリーズ用に新たに開発したインクでは、アンダーコートなどの事前処理なしに、オフセットコート紙への印刷が可能となりました。専用紙でなく一般紙を使用できることで、用紙コストを削減することが可能です。また、色域が大幅に拡大したことで、オフセット印刷に迫る高画質を実現しています。(■ 大野註:これは drupa2016 で既にアナウンスしていた?)

新製品「RICOH Pro VC70000」は、「RICOH Pro VC60000」の上位モデルとして新たにラインアップするもので、新乾燥技術の搭載により、オフセットコート紙への印刷速度が大幅に向上しました。毎分150mの印刷スピードを実現し、A4サイズの印刷物を毎時120,000ページ生産することが可能です。乾燥時のしわを防ぐ乾燥技術も向上し、より高濃度の画像を再現することが可能になります。」とのこと。

Latexインク搭載WF機

建材市場用途UVフラット機

ラテックス機はFESPAでアナウンスされたものです。何故か「参考出品」となっています。UVフラットベッド機は、サイン用途ではなく「建材用途」とスタンスを明確にしています。

Tシャツプリンタ

プリントサンプル

■ キヤノン

ゆっくりチェックする時間は無かったのですが、Voyager に力が入っているよう見受けられました。

Voyagerの原寸大模型(?)

技術解説

技術解説(2)

Voyagerのアニメ動画デモ

通路の垂れ幕にも、まだ姿も無いVoyagerが!

drupa2016で動態展示したB2枚葉機 Voyager は、今回は原寸大模型(模型って言うのか?(笑))の展示で、ビデオデモと技術解説パネル、プリントサンプル展示に留まりました。次回drupa2020との中間点なので、動態展示を期待したのですが、展示会に出すためには、その為だけの開発が必要で結構無駄が多いので、こういう形になったのは、元メーカーマンとしては理解できます。ただ(私の見間違いでなければ)サンプルプリントが4色のプリントで、本来謳っている色数より少なく、なんらか難渋していることも伺わせます。

富士フイルムのJetPressは2008年の drupa でお目見えして今年で10年が経過、昨年、設置が100台を超えたというアナウンスがありました。2012年のdrupaに初出展されたコニカミノルタのKM-1は、小森のIS29と併せて、6年後の今、推定70台くらいの設置と見られます。またキヤノンと同じ転写方式のLandaは2012年、2016年の2度のdrupa を経て6年が経過した今もベータ設置に留まっています。2008年に登場したスクリーンのTruePresJetSXは未だ(あるいは遂に?)商業ベースに乗っていません。

こういった状況下、最後発のキヤノンは、技術誇示はさておき、ビジネス的にはどういう絵を描いているのでしょうか?

OCEが開発したゲルUVインク採用のWF機

キヤノン開発による水系インク搭載WF機

キヤノンとオセについてはいろいろ言われていますが、敢えてここでは取り上げません(笑)

■ コニカミノルタ

インクジェットという切り口では、新製品はありません。2012年に drupaに初出展した KM-1 のみの展示です。勿論、この6年間でマシンとしてのレベルは向上しており、設置顧客先で、高画質プリントで安定運用が出来るようになっていることを強調したデモになっていました。オフセットの特色が再現できるなど、プロ好みの展示と見えます。

美術書「運慶大全」

国立西洋美術館
「松方コレクション」

導入顧客の日本写真印刷の
オペレーターによる運用状況のプレゼン

一点気になるのは、drupa2016 で強調した「パッケージ印刷」の主張が影を潜めたことです。drupa とは異なり、十分な展示スペースが無いので、drupa2012 に出展した KM-C のような巨大なマシンを展示し辛いという事情はあるでしょう。(でも、オフセット印刷機メーカーは、更に大きな印刷機を複数展示していますが・・・)

drupa2016 では「これからはパッケージ印刷!」というのが世の中の流れ、デジタルへの期待値になっていました。そしてパッケージ(紙器)にはB1サイズが必須ということからKM-Cを展示し、そのプリントサンプルを多数展示したということでした。あそこでB1のコンセプトモデルを展示していなければ「コニカミノルタはパッケージ印刷分野はギブアップした」と業界から見られるところだったでしょう。

展示スペースも狭く、実質的に国内市場向けのショーであるIGASでは、「今売れるものとしてのKM-1」のみに注力したというのは、それなりに合理性はあるとは思います。が、次回の drupa2020 は、そうでなくとも Interpack と同年開催であり、各社は「両方に出展する、しない」、「(する場合)棲み分けする、しない」、「何をどのように訴求する」という検討を始めています。また、紙器だけでなく、段ボール印刷や軟包装などもアナウンスや事例が増加中です。「これからはパッケージ!」を標榜していたことの連続性・継続性の証として、なんらかその予兆を感じさせるものも出して欲しかったところです。

drupa2016のKM-Cと山名社長

drupa2016での豊富なパッケージサンプル

■ 小森コーポレーション

B2枚葉IJ機IS29 (コニカミノルタのKM-1の小森バージョン)

LITHLON オフセット機

紙幣の印刷はドイツのKBAと日本の小森が双璧

関連会社で精密オフセットなど特殊加工印刷機メーカー SERIA

SERIAのサンプル群

やはりオフセット印刷機の老舗企業らしく、広いスペースの正面にはリスロンを設置し、UVオフセットインクを中心に訴求していました。

インクジェットに関してはコニカミノルタの KM-1 の小森バージョンである IS29 のみを展示ちょっと期待していたランダ技術による NS40 は山形の工場(小森マシナリー)に設置して、顧客を招待してのプレゼンとなったようです。まあ、あの規模のマシンは展示会の為に移動して調整し、数日でまた撤収をするよりも、開発現場から動かさずにそこに人を呼ぶのが正解でしょう。

画質は着々と向上していると聞き及びますが、やはりどういう分野に、どういうビジネスが成り立つのか、成り立つまでにどのくらいの期間と、更に乗り越えるべき課題があるのか・・・そのあたりがポイントという気がします。

IGAS 速報 (4)に続く

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