業界各社 2021年度上期決算発表状況(3)11月23日更新(武藤 HDを追加)

業界各社 2021年度上期決算発表状況(2)からの続きです。武藤ホールディングスを追加しました。

業界各社 2021年度上期決算発表が始まりました。インクジェットになんらか関係している企業を継続してウォッチしています。今回は、ワイドフォーマット関連各社について速報します。武藤工業(武藤ホールディングス)は現時点で公表されていないので、公表があり次第アップデートします。グラフはクリックすると拡大します。数字の単位は百万円です。決算短信・決算説明会など公開情報に基づき、出来るだけ客観的に書こうと思います。

2社を見た限りでは、業績は回復しており、売上高も営業利益はコロナ前の2019年度を上回る水準に達しているようです。利益回復は経費節減・人員削減等によって実現できる側面もあるので、無理な節減で将来の成長を矯めていないか?は要ウォッチでしょう。

ミマキエンジニアリング

昨年はコロナの異常年なので、今年の業績を対前年比で回復した・しないを論じることは大した意味を持ちません。コロナ前の 2019年水準に戻ったのか否かを同時にチェックすることが肝要です。

四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。2020年度のQ1(4~6月)の売上高はコロナの影響で対前年 6割まで落ち込みましたが、Q2以降は回復しており、2021年度は 2019年を上回るまでに回復しており、今回の Q2も 2019年度をクリアしています。営業利益も 2020年度の Q1、Q2は赤字でしたが、今年度は Q1、Q2とも、コロナ前の 2019年をクリアしています。

↓↓下の2つのグラフは「過去の決算実績&2021年度の四半期ごとの年間予想の推移」です。2019年度(青色)は実績です。2020年度(橙色)も実績ですが、企業はこの時 2021年度の年間見通し(灰色)を発表することが義務付けられています。

私はこれ・・・四半期ごとに年間見通しがどう変化するか?をかなり重視しています。企業の業績は、過去の数値は変えられず、最早意志を反映する余地がありませんが、未来の数値は変えられる=それを企業がどう発表するかに、企業の施策や意志を反映する余地があります。そしてその先行情報がどう変化しているかの差分を読むと、企業が何を考えているのかが透けてみえるからなのです。↓↓画像はクリックすると拡大します。

左は売上高です。コロナ前の 2019年度から、コロナがヒットした 2020年度にトップライン(売上高)が下がりましました。2020年度決算と同時に発表した 2021年度の売上高見通しは「コロナ前の 2019年度レベルに復帰する」と発表をし、Q1で上方修正、今回 Q2でもその見通しを上方修正しました。右の営業利益は、2020年は赤字となりましたが、2021年度は当初から 2019年度を上回る見通しを立て、Q1、Q2と毎回上方修正して来ています。トップライン(売上高)の回復状況よりも伸びが目立っていますが、展示会の凍結や海外出張費の発生が極少、経費全般の抑制などの効果が大きいと推察します。
短期的には経費抑制による利益創出は是としますが、長期的視点からは再投入して成長のエンジンの燃料とすることが重要かと思います。

ローランドDG

同社は暦年決算のため、今回は Q3の決算発表となり、この時点では通年をかなり精度よく見通すことが出来ているハズです。

↓↓ 左は売上高、右は営業利益の四半期推移です。売上高は全ての四半期で、コロナ前の 2019年度を上回っています。同様に営業利益もすべての四半期で 2019年度を上回っていることがわかり、少なくとも計数面は元の軌道に戻ったように見えます。

↓↓ コロナで影響を受けた 2020年度決算時に示した 2021年度の見通しは 2019年度レベルに復帰するというレベルでしたが、毎四半期それを少しづつ上方修正してきました。営業利益も年度初には同様な控えめな数字を示したものの。その後2回上方修正しています。ミマキ同様に、売上高の成長より営業利益の伸びの方が大きく見えます。開発投資や多角化などに先行費用を投じて、売上高の成長や売上高の中の構成比率を成長分野に重点シフトしていくことを期待したいと思います。

武藤工業(武藤ホールディングス)

売上高は Q1、Q2とも前年同期を上回っています。ただ、上記のミマキ・ローランドの様に「コロナ前の 2019を上回る」というところまではではないようです。営業利益は、この2年間苦しかった状況を脱して、Q1、Q2とも黒字を続けています。ただ、営業利益のグラフから明らかですが、2020年度は Q1が大きく赤字を出したのは各社共通なのでいいとして、よく見ると、2019年も通年で赤字であることが分かります。ご記憶のように、コロナが騒がれ始めたのは 2020年初頭、年度で言えば 2019年度の Q4だった訳ですが、武藤工業(HD)の営業利益は 2019年の 10~12月期に既に大きくマイナスで、これは上記 2社には見られない傾向です。

ということで実績・業績予想は 2017年からと、ちょっと長めに見てみます。売上高のグラフでは 2019年度に既に対前年(2018年度)比で 20%くらい落ち込み、コロナ禍がヒットした 2019年度はそこから更に落ち込んでいることが読み取れます。「2019年度の決算短信には主力事業である情報画像関連機器事業においては、為替の円高傾向や主力の大判インクジェットプリンタにおける価格競争の激化に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響による海外地域の販売が急減速致しました。」とコロナ禍に言及していますが、他社はそういうコトは無いので、やはり同社の特殊な事情なのでしょう。

今年度は売上高 160億円、営業利益 5千万円と控えめな見通しでスタートしましたが、ここにきて営業利益は 3.2億円まで上方修正しました。売上高の見通しは据え置いていますが、利益の回復には自信を持っているものと推察されます。

この項、続きます。

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