- 2020-3-1
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2月24日(火曜日)、WTiN社長の Mark Jarvisと共に、青山の HappyPrintersに堀江社長を訪ねてきました。表題の Printioに関して Markも関心を持っており、前回のインタビューに続いて補足を書いておきます。
Printioに関して一通りの説明を聞いたあと・・・
Mark:自社プリントの為の ECサイトというのではなく、複数の独立したプリント工場とプリントバイヤーを結びつける機能だね?今まで日本には無かったの?
堀江:こういうコンセプトのは無かったと思います。
Mark:ヨーロッパやアメリカでは既にいろいろあるサービスだね。Merch by Amazonとかね。そういう意味では「Proven Model(既に証明されたビジネスモデル)」ということが言えると思う。日本にまだ無かったとしたら、成功するチャンスは大きいと思うよ。
大野:欧米の先行モデルとはちょっと違うと思うんだけどね。
Mark:ほう?というと?
大野:欧米の既存のプラットフォーマーって「支配構造」が見えるじゃない?彼らが先行投資をして巨大なプラットフォームをまず作り上げてサプライチェーンを支配し、工場はそれに組み込まれて、その下に位置付けられているという印象・・・まあ、実際には違うのかどうかわからないけど、違うなら世界中の政府や税務当局があんなに必死になって規制に動かないと思う。
大野:それより、堀江さんの意図って「繋がっていない中小のプリント工場を、WEBに繋いで世に出す」っていう使命感に支えられている様に思うんだけど・・・
堀江:それはあります。下の図にあるように、既に繋がっているところの5%は対象にしていないんです。まだ繋がっていないマジョリティが対象です。
堀江:有名スポーツウェアブランドで、WEBからカスタマイズでウェアをオーダーできるサイトってあるじゃないですか?
大野:はあはあ、あるよね。運動音痴なんで注文したことは無いけど(苦笑)
堀江:たとえばこれです(・・・と、画面に某ブランドのサイトを映し出す)。これってサイズや、柄を自由に選んで、その他の必要情報を入れて注文確定ボタンをクリックすると発注できるんです。
大野:そのデータが傘下のプリント工場に流れて、デジタルプリントがされるんだろ?
堀江:ところが、そうじゃないんです!このデータを紙にプリントして、町のスポーツ用品店に FAXして注文し、そこがまた工場に紙で発注するんです。
大野:え?なんで?・・・あ、ひょっとしたら、町のスポーツ用品屋さんって、地域の学校なんかと繋がっていて、そこの顔を立てないといけない、利益も落としてあげないといけない・・・そういうこと?
堀江:まあ、歴史的に築きあげてきた関係でしょうから、いきなり壊せないというのはあるかも知れませんね。
大野:そこがネックで、折角のデジタル注文データが、そのまま工場に流れないで、紙を介在させる・・・って、そんなのいつまで続くんだろうね?
堀江:ま、そこはそれとしても、工場サイドでも「プリンターは商売の根源なので投資はするけれど、受発注のシステムに投資をしようと考える工場は少ない」というのもありますね。でも、そういうところって徐々に苦しくなっていってるという現実があります。
大野:それを繋ぐことで世に出して注文が流れてくるようにする・・・救世主?(笑)
堀江:そんな正義の味方気取りじゃないです(笑)ただ、やはり結果としてブラインドサイドにいる工場を表舞台に出したいという想いはありますよ。
Mark:例えばどういうメリットがあるの?いくつか教えてよ。
堀江:Printioに参加したある工場が凄くニッチなプリンタを導入したとします。もちろん彼らなりの成算があってそういう投資をしたということですが、Printioに繋がっているもう一方のサイド=プリントバイヤー・発注者達は「ほう、あそこがそんなオモロいプリンターを導入したの?じゃ、ウチのこういうのもやってもらえるかな?」と発想したりできます。工場にしてみれば結果として営業になっているし、思わぬところから問い合わせが舞い込むことが期待できます。
Mark:ああ、プリントバイヤーはどんどん増やしていく(会員数を増やす)方向だそうだから、そういうことは起こるだろうね。他には?
堀江:例えば、障害者の方を中心に運営している印刷工場があるんですが、そこを応援しようとすればそこに発注することができます。
Mark:プリントオークションだと価格が決め手だけど、ここではそういう篤志を反映することもできる・・・そういうことね?他には?
堀江:例えば、工場に導入されているマシンを指定して発注することも可能です。Tシャツプリンタにもメーカーによってそれぞれ個性があるので、再発注の際に一度発注したことのあるプリンターでやって欲しいというのはあると思いますね。日本は純正インク比率が非常に高いので、それで仕上がりが前と違うというリスクは低くなります。
大野:なんか、Printioって、大手のプラットフォーマーと違って、そこに繋ぐことで工場を支配しようとしようとする意図を感じないよね?
堀江:そういう意図はないですから(笑)
大野:むしろ繋がっていなかったプリント工場を、WEBと繋ぐことで世に出して、これまでの下請構造から、バイヤーとの対等な関係に近づける機能を感じるんだけど・・・そこは意図した?
堀江:そういう革命家みたいな意図はないです(笑)。でも、プリント工場には本来得意としているプリントの技術向上や新しい設備の導入に集中してもらい、それを WEBに繋ぐことで世の中に出して、結果としてポジションが向上すればいいなと思ってます。
大野:この前から気になっているんだけど・・・プリントバイヤーの数は制限なくどんどん増やす一方で、プリント工場の方は「セレクトショップ」的に、堀江さんが選別して繋いでいくって方針なんだよね?その時、バイヤー側の発注したいもののアイテムと量は、工場側のアイテムとキャパと必ずしもバランスしないよね?そこはどうすんの?バイヤーが欲しいものが無いとか、あるんだけどキャパが足りなくて直ぐに対応できないとか?
堀江:スケーラビリティやバリエーションをふやすことはサイトの売り上げに応じて増やしていくつもりです。鶏が先か卵が先かでいくと、まずは印刷工場側の生産アイテムや生産能力を増やすところに数年間は注力しようと思っています。
僕は7年前にHappyPrintersというオープンな店舗型印刷工場を作ったことで、さまざまなプリンターメーカーや印刷工場がお店に寄ってくれたりしてつながっているネットワークがあるので、そこはいけるのではないかと思っています。
大野:あと、工場側でも紙による手作業とはいえ、一部はエクセルなんかを上手く使ってそれなりの受発注の仕組みを構築しているところが殆どだと思うんだけど、そういうところは既存の仕組みと併用・共存ってできるの?あるいは全面的に Printioに切り替えなければいけないの?
堀江:印刷工場のデジタル化を進めていくときに、基幹システムやエクセルに合流させようとするとすごく複雑になってしまいます。印刷工場がデジタル化で新規事業を作るときに一部分だけPrintioを導入してもらうのがスムーズだと思います。
大野:あ、そういうのもアリなわけね!
Mark:工場側をセレクトするのは比較的着手しやすいかと想像するけれど、一方でプリントバイヤーサイドは数多く獲得したい訳だよね?その営業はどういう風に進めるのかな?欧米の先行事例でもそこが一番努力の要るところだよ。
堀江:そこがこれからの悩み所だと思っています。印刷工場ごとに得意なアイテムが細分化され、印刷物を頼む企業を見つける手間がかかってしまっているので、1箇所でさまざまな印刷物を頼める場所へのニーズは強いと思っています。
また、働き方改革による仕事の効率化を実現したい企業や、SDGsを代表する持続可能なものづくりをしていきたい企業とご一緒できたらいいなと思っています。
大野・Mark:いやあ、これはワクワクするね~!応援しますよ!