誰も知らないドイツの町 Unbekannte deutsche Städte（20）：★★★プロープストツェラ Probstzella -5-

2021-2-20
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誰も知らないドイツの町 Unbekannte deutsche Städte（20）：★★★プロープストツェラ Probstzella -4-からの続きです

この小さな町に不釣り合いな、巨大な建物「HAUS DES VOLKES」の施主はフランツ・イッティング（Franz Itting）」という人物ですが、その生涯は波乱万丈などという陳腐な言葉では表しきれないかもしれません。

「フランツ・イッティング（Franz Itting、1875年9月11日 – ザールフェルト/ザール生まれ、†1967年5月21日ルートヴィヒスシュタット）は、テューリンゲンの産業界のパイオニア。

イッテングは早くも1909年にはプロープストツェラに発電所を建設し（1909年9月2日に試運転）、社会貢献活動で名を馳せました。彼は1925年から1927年まで、この地域の文化の中心地としてプロープストツェラに「民衆の家（Haus des Volkes」を建設しました。このようにして、イッティングは「普通の人」が質の高い文化の提供を受けることを可能にしたのです。

ナチス時代、社会民主主義者として知られていた彼は「レッド・イッテング」として政治的に攻撃され、投獄されました。終戦後、イッティングは逆に（建国前の東独当局から）「資本家」とみなされ、1948年に再び投獄されました。刑務所から釈放された後、彼の一家の財産は没収され、バイエルン州のルートヴィヒスシュタットに移住しました。」･･･とあります。

彼の生涯は、ジャーナリスト Roman Grafeによるドキュメンタリー的伝記映画「Mehr Licht」に纏められています。それによると、Franzが釈放された後、一家は西ベルリンに逃れ、そこから国境から数キロ南の西独バイエルン州ルートヴィヒスシュタットに移住して、そこで再び電気関連の事業を起こし、小さな町の雇用や文化事業などに貢献したそうです（この会社はその後、大手企業に買収されたとのこと）。また、こちらで書きましたが、1963年、プロープストツェラが見下ろせる国境近くの丘に展望台を建設しました。1967年に 81歳で亡くなる 4年前のことですが、亡くなるまで故郷への想いは断ち切れなかったようです。

イッティングに関する Wikipediaの続きですが「2002年、ジャーナリストのロマン・グラーフェ（Roman Grafe）は、両独裁政権下で迫害されたイッティングの話を取り上げ、『Die Grenze durch Deutschland』（ドイツを貫通する国境、Siedler 2005）という本の中で説明しています。その 3年後、彼はまたドキュメンタリー映画『Mehr Licht フランツ・イッテングの生涯』を制作し、2012年には同名の伝記本を出版しました。また彼は HAU DES VOLKESの一角にフランツ・イッテング博物館を作りました。」とあります。

この映画の中でもプロープストツェラがケーススタディとして重点的に描かれています。

彼はまた「ドイツの正義 Deutsche Gerechitigkeit」という著作の中で、ベルリンの壁の越境しようと試みて射殺された最後の犠牲者 Chris Gueffroyのケースの東独国境警備隊の司令官 Sven Hüberが、東西ドイツ統一後に連邦警察の組合幹部となっており、直接的に脱走者を狙撃した警備兵達がドイツ統一後に実行犯として裁判にかけられたのに、その司令官は責任を追及されていないことに言及したことでも知られています。このことで Grafeは Hüberから個人を特定できる表現の問題で 2006年に提訴され、「ドイツの正義 Deutsche Gerechitigkeit」は発禁となり、新聞メディアも本件の報道を禁じられる判決がでましたが、2007年に解除となりました。

CC BY-SA 4.0, Link

さて、最後に「お口直し」的な話題です。

ドイツで販売されているチョコレート（プラリーネ Pralineというタイプ）のブランドで広く知られている「LAUENSTEIN」の本社は、ルードヴィッヒスシュタット（Ludwigsstadt）に本社があり、そのブランドは、こことプロープストツェラの中間地点にあるお城（Burg Lauenstein）に由来しています。

私はドイツ出張から帰国する際、フランクフルトの JALの夜便に乗る前に市内の Galleria Kaufhofのデパ地下で、ドイツの食材の他にチョコレート売り場で Ritter Sportと、この LAUENSTEINのボックスを買い込みます。主なデパートで売っていると思いますのでお土産に是非！