英国人ジャーナリストから見た日本企業

先週、2月3~7日、英国人ジャーナリストの Nessan Clearyを連れて日本のインクジェット関連企業を時間の許す限り訪問してきました。目的は「1.欧州販売現法ではなく、日本の開発・生産・事業拠点を見たい」「2.普段コンタクトのある欧州販売現法の広報スタッフに加えて、本社の事業・開発責任者や広報スタッフとの人脈を構築したい」「3.DRUPAに向けて事前情報を収集したい」というものです。そしてその背景には「日本企業あるある」に対する海外ジャーナリストに共通するフラストレーションがあります。今回の訪問は、その解消に大いに寄与したと思います。

1.DRUPAで満を持してプレスコンファレンスを行い、情報を公開する愚

一般論ですが(と前置きをして(笑))、日系企業は DRUPAなどの大きなイベントのプレスコンファレンスで満を持して新製品情報やプレスリリースを公開しがちです。これ、大勢のジャーナリスト達にとって必ずしもウケはよくありません。また、効果的ではないのです。

DRUPAの初日や、最初の数日は有力企業のプレスコンファレンスが集中し、そこで大量のプレスキットがジャーナリスト達に供給されます。しかし、彼らの時間も有限なので、一日に何十本も記事を書くのは不可能で、やむなくプレスキットの電子データをコピペせざるを得なくなり、結果として殆どが同じ(ような)記事になってしまう・・・最悪は記事にもならないということが起こります。

まあ、企業広報が用意した通りの文面が流通するのは、ある意味で発表側のメーカーの思惑通りかもしれませんが、それではプレスコンファレンスなどする意味はなく、所謂「投げ込み」でいいわけです。やはり、読み手にとってインパクトのある記事を書いてもらいたいという意思があるなら、心あるジャーナリストには可能な限り早いタイミングでプレスキットを供給し、メールで質疑応答をするなどしっかり咀嚼してもらうことが、良質でインパクトある記事に繋がる要件ということです。

2.欧州の販売現地法人の広報担当との関係が不明

欧州の販売現地法人にも当然ながら広報担当が居ます。既存製品や既存ビジネスの話なら、そこが地理的にも一番近く、現地事情にも通じているので問題は少ないのですが、新製品や新規のビジネスに関しては往々にしてフラストの種となるようです。

上述のように、日本企業は新製品情報をギリギリまで温める(?)傾向があり、情報リークに対して必要以上に神経質になっているように見えているようです。現地販社に問い合わせても「緘口令で口止めされて言えないのか、それとも知らされていないので言うことがないのか」・・・いずれにしても、隔靴掻痒の感じだとのこと。

また、コミュニケーションが良好だった欧州企業が日本企業に買収された後、情報が出て来なくなるという現象もいくつか経験しているようです。

一方、日本の本社方面は、DRUPAなどの海外展示会は運営を実質的に現地販社に丸投げしていることも多く、そこへの忖度も有ってかあまり前面に出てこない傾向があり、結果としてイマイチ筋が通った感じがしない。

まあ一般論であって、個別には非常にコミュニケーションのいい日本企業もあるとのこと。ウチはそんなことない!というご意見もあるでしょうが、あくまで相手がどう受け取っているのかが大切という「★★ハラ」(違うか(笑))みたいな話なのでご参考に!

3.アメリカでは既に発表しているのに、欧州では秘密?・・・情報を出してくれない

・・・というようなこともあるようで、意味が解らないとのこと。

4.大野から Nessanに言ったこと

「情報を正しく早く伝えたい」というジャーナリストとしてはフラストもあるかもしれないが、ビジネスとジャーナリズムは違うよ!ということ。

「現行機種の在庫が現地販社にたんまり有って、日本本社では新製品の発表をしたくても、発表するとそれが売れなくなる」、「営業は早く発表したくても、ギリギリになって開発が遅れて展示に間に合わないこともあるので、ギリギリまで様子見せざるを得ない」・・・実際のビジネスはそういうオトナの事情もあるということは、ジャーナリストとしても理解しておいて欲しいと伝えました。

とはいえ、「現地販社と日本本社の両方を引っ張ってスジを通し、結果責任も負うというようなリーダーが居ない」、「日本の意思決定は何かと遅い・・・ハラを括って、批判も覚悟で決めるリーダーが居ない」・・・こういう側面はそろそろ日本企業もなんとかしたいところですね。

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