コンバーティングテクノロジー総合展2018 2月14~16日 ビッグサイト

15日・16日と二日間行きましたが、いずれも駆け足で回ったので、全貌を俯瞰するには至りませんでした。特に最近のバズワード「3Dプリンティング」を見る余裕が無かったのは残念です。やはり一日でもいいから他の用事と組み合わせることなく、じっくり回りたいですね。既に速報でお伝えした情報に16日に見た分を追加しておきます。駆け足ではありましたが、かなりの情報量はあると思います。

かつてはラベル印刷機やスクリーン印刷機などが出展される特殊印刷展(特印展)と塗布装置や様々な加工装置などを展示する加工技術展(コンバーテック)という展示会の合体だったように記憶していますが、現在はこれだけ多くの展示会の集合体となり、分野もかなり広がりを見せています。

【アルミ缶(下地処理なし)へのダイレクトプリント:KIT-CC・、花王、D.I.E.C.】

今回の一押し!…と、花王の森山部長のお言葉です。ご本人がおっしゃるので間違いないでしょう(笑)16日の金曜日が最終日なので、是非すぐにアップして欲しい、金曜日に是非見に来ていただきたい!とのご依頼です。確かに見る価値はあると思います。皆さん、金曜日です、是非見に行ってあげて下さい!そのまま呑みに行きましょう(笑)森山さんやKIT-CCの皆さん、D.I.E.C.の皆さんに「大野のサイトを見た!」とおお伝えください(笑)

追記:花王の森山部長からのメールです:大野様、いつもお世話になります。メルマガへの掲載ありがとうございました。さすがは大野様のメルマガ、この情報で多くの方がブースにお越しくださいました。遠くは新潟柏崎からトライテックさんがお越しくださいました。本日はプリンターメーカー、ヘッドメーカー、インテグレーターなどなどが入り乱れ、さながらIJ業界の打上げ状態でした。展示も隠すことなくオープンに見ていただいたので、みなさんとはなにかと和気あいあいお話できた気がします。久々に楽しいひとときでした。今後ともよろしくお願い申し上げます。

■大野註:海外のコンファレンスはまさしく「プリンターメーカー、ヘッドメーカー、インテグレーターなどなどが入り乱れ、さながらIJ業界の打上げ状態」なのです。こういうコミュニティ日本にも育てていくというのが大野の目指すところです。

KIT-CCがシステム周辺を、花王がインクを、D.I.E.C.が装置の組み上げをという分担のようです。インクは花王の「水系熱定着」インクで、既に発表されているシンクラボラトリー社のフィルムにプリントするタイプの応用・進化系と見えます。動画ではUVではなくランプの熱による定着をしているのが分かります。

下地無しアルミ缶の他に、同じインクで白PETフィルムにもプリントが可能という事例の展示です

各社のサイトへのリンクは下記にあります。
花王のプレス発表
KIT-CC
D.I.E.C.

【ヘッド駆動ボード】

上記の花王・KIT-CC・D.I.E.C.の展示ブースの片隅に「『ヘッド駆動の儀』お役目承り候」というキャッチコピーと、京セラヘッド向け、Panasonicヘッド向け、HPヘッド向けの駆動ボードが展示されていました。駆動ボードビジネスについては、特に全てのハードウエアを自社内で開発するのが基本の電子写真系のメーカーには分かり辛いビジネスと思いますので、別途改めて書きますが、ヘッドメーカーが供給するボードの他に、駆動ボード及びそれを走らせるアプリを供給するメーカーが存在します。ここに展示されていたということは、今回の試作機に搭載されたパナソニックヘッドの駆動ボードは上記のメーカーのものを採用したということでしょう。販売元はその住所から、長野県にあるプリンタメーカーの方がスピンアウトしてビジネスを始められたものと推察されます。ただ同社のサイトでは本社は福島県になっており、開発製造元の品川通信計装サービスに近いところにあるようです。
品川通信計装サービス
ニーズリンク技研

【ヘッド駆動ボード:ワイドライブ】

こちらも各社のヘッドの駆動基板や液滴観測装置、インク供給系などを供給する企業ですが、パナソニックのディスプレイ開発技術にルーツを持つということで、プリンテド・エレクトロニクス系の分野に強みを持つ様子。同社の配布資料もディスプレイ製造方面の情報が多くあります。ディスプレイ用途などや超高精度な要求に使われるDPN(Drive Per Nozzle:ノズルごとに個別に駆動する技術)の基板も開発していることからも、その方面に長く関わってきたことが伺えます。今年のIGASにも出展されるということで、業容拡大を目指しているようです。

ワイ・ドライブ

【インテグレーター:プレシード  技術開発:マイクロジェット】

プレシードは熊本が拠点ということで、パナソニックのインクジェット部門と繋がりが深いインテグレーターです。一方、マイクロジェットは長野県塩尻市という本社所在地からも推測できるように EPSON の OB 山口修一さんが立ち上げた産業用インクジェットの技術開発・インテグレーターです。今回は二社が提携して一つのブースで出展していました。

プレシード
マイクロジェット

【インテグレーター:トライテック】
出展はしていませんが、会場で高橋社長にお会いしたので、同社のサイトへのリンクを張っておきます。このレポート冒頭の花王の森山部長から頂いたメールにもありますが、新潟県柏崎市に拠点を置く、日本のインクジェットのインテグレーターとして存在感のある企業です。
トライテック

【曲面を持った陶器へのプリント:ノリタケ】

陶磁器・食器で有名なノリタケからの発表。インクジェットによるダイレクトプリントではなく、一度メディア(フィルム)にプリントし、それを焼く前の陶器に貼り付け、それを窯で焼いて飛ばし、顔料やガラス質は陶器表面に定着するというもの。現状の陶器へのプリントと同じ方式で、プリント部分をインクジェットで無版オンデマンド化したもの。食器のような不定形の対象物にはこういう方法はありと思います。

【インクジェットによるFPCプリント:エレファンテック】

従来法と比べインクジェットで簡便にFPCの製作がが可能とのこと。15,000円~とのキャッチコピー。東大発のベンチャー。
エレファンテック

【シンクラボラトリー】

drupa2016で発表された花王の水系熱定着インクを使ったシュリンクフィルムへのプリント。既に商品として市場で購入可能。
シンクラボラトリー

【東レエンジニアニング】

東レエンジニアリングは東レの社内工務部門から独立して分社し、幅広い分野のエンジニアリング事業を手掛けています。親会社の東レがかつて液晶のカラーフィルターを製品化していた経緯からディスプレイ製造装置・関連分野にも強みを持ち、インクジェット技術を取り入れて分野に発展中です。今回は大面積の塗布や、ターゲットメディアに親撥処理を施して、そこに金属インク(銀などの微粒子を分散させたインク)を撃って細線を形成する技術などを展示していました。
東レエンジニアリング

【山形大学】

山形大学には東京大学(染谷教授)・大阪大学(菅沼教授)などと同様に時任教授・熊木教授が核となって有機ELやプリンテッド・エレクトロニクス分野に特徴があります。同大学のプリンテッドエレクトロニクス技術を事業展開するベンチャー企業設立などユニークな動きもしています。最近ではEPSONの酒井教授やコニカミノルタ」の西教授など、インクジェット業界の OB も積極的に登用して益々そこに注力しているように見えます。既にご案内を致しましたが、酒井教授によるインクジェット開発センターもオープンされます。

山形大学のサイト
上記のサイトは山形大学のサイトですが、総合大学なので折角の特徴が表には出ていないようです。
プリンテッドエレクトロニクス技術を事業展開するベンチャー企業設立のニュースリリース
これも時間が経てば埋もれてしまうのでちょっと勿体ないように思います。
時任・熊木・関根研究室のページ
有機エレクトロニクス研究センター

【NODO・JAPERA】

国プロ(国家プロジェクト)として取り組んでいる技術開発の成果を発表するコーナーがあります。流石に「税金を投入して開発した成果」を見てみたいという人や、国が肩入れして開発した技術とはどういうものかを見たいという人も多いのか、かなりの賑わいでした。私ももっとゆっくり見たかったのですが、時間の関係で自分もコニカミノルタ役員時代に理事として関与した JAPERA ( Japan Printed Electronics Research Association:日本プリンテッドエレクトロニクス研究組合)の展示の一部を紹介しておきます。

JAPERA は、元々はディスプレイ製造工程におけるフォトリソ工程を印刷法(必ずしもインクジェットには拘らない)で置き換え、効率やコストダウンを追求するのが趣旨でしたが、途中から世の中の急速な変化に対応して IoT 時代に対応したセンサーを印刷法でと方針変更して JAPERA2 として継承されています。

今回の応用事例展示は、位置と圧力の強度を同時に検出できるセンサー(インクジェットのみではなく、各種の印刷法を組み合わせた技法で製作された)をペッパーに貼り付けたもの。軽く触れると「くすぐったい」と笑い出し、トントンと叩くと「えっ?」と叩いた肩の方に首を向け、強く叩くと「痛いっ!何すんの?」と悲鳴を上げるというものです。展示としては、こういうことが可能というのを分かりやすく訴えていて、面白いと思います。

国プロの課題は、開発した技術をどう民間企業が取り込んで、事業として成功させていくのか?ということでしょう。一般論ではありますが、民間企業でも中央研究所で開発された技術を、事業部が取り込んで製品化・事業化する際には様々な課題が露呈します。詳しくは別の機会に書きますが、その課題が国家レベルで起こっているという側面があるように思います。逆にいえば、問巻企業で「民間企業の中央研究所で開発された技術を、事業部が取り込んで製品化・事業家する」際の成功パターンや失敗パターンを検証し、それを学習することで、国プロの成功確率はグッと上がるように思います。

【スーパーマーケットの棚板センサー:NEC】

JAPERA の傘下企業の一つ NEC が、その「位置とタッチの強度を同時に検出できるセンサー」の応用事例として「スーパーマーケットの棚板センサー」の事例を発表していました。棚板に設置して、どこにあったものが、どう売れたか(棚から無くなったか)を検出できるというもので、在庫管理や補充のタイミングを知るのに使える可能性を感じさせる展示です。

一方で、最近話題の「Amazonのスーパーマーケット」(全てカメラで把握してレジを無くしてしまうというコンセプト)が実用になれば、少なくとも店舗でこういうセンサーは不要になるかもしれず、あるいは逆にカメラだけでは不十分な部分を補完する技術になるかも知れず…なかなか予測は難しいように思います。

【リコー:インクジェットを紹介】

電子写真メーカー群の中で、唯一リコーはインクジェットにフォーカスしたブースを出していました。ヘッドの他に DTG (Direct To Garment:Tシャツ向け)、建材用途、3Dプリンター、その他出展はしていませんがワイドフォーマットーやインクジェット連帳機(VC60000、VC40000)など広範囲なインクジェット関連製品を紹介していました。
リコーのインクジェット技術の紹介サイト

【ミマキエンジニアリング:3Dプリンター】

今回、時間が限られ3Dプリンターは殆ど見ることが出来なかったのですが、その中で目についたミマキエンジニアリングのブースを写真をアップしておきます。米国系メーカーの製品輸入・代理販売が多い中で、ミマキは自社開発の3Dプリンターで存在感を高めています。同社のサイトにも3Dプリンターの専用ページがあり、ストーリー性のある動画を主体に分かりやすく情報を伝えています。

ミマキの3Dプリンターの紹介サイト

以上、次回はもっと時間を取ってじっくりと回りたいと思っています。

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