上海TEX:総括 25 – 28, Nov, 2019


少し間が空いてしまいましたが、総括を書いておきます。海外の展示会に行くと大勢の外国人の知り合いに会います・・・というか、知り合いに会いに行くのです。そんなときのお決まりのご挨拶(合言葉かも(笑))は「何か目新しいものある?」「いやあ、オレも今日からだからまだあまり見てないんだよ」というところです。それが3日目くらいになると、それなりに自分が見てピンときたものの情報交換が始まります。今回は事情で2日しか視察できなかったので、その範囲での情報交換で掴んだ感触です。順不同に書いていきます。

1.リコーの水系顔料プリンター+マイクロファクトリー構想

ヨーロッパではトレンドになりつつある DTMF(Digital Textile Micro Factory)ですが、このキーワードを打ち出してテキスタイルプリンターに参入するのは日本メーカーとしてはリコーが初めてでしょう。プリンターやヘッドのスペックをアピールしがちな日本メーカーとしてはちょっと違った新しいアプローチです。

海外メーカーでは、例えば DTG(Tシャツプリンタ)で有名なイスラエルの Kornitが Allegroや Prestoといったロール機で、ZUNDのカッターやミシンを並べて、デザインの入稿からプリント・定着・カット・縫製まで最終製品まで一貫して仕上げるというコンセプトを打ち出しています。いずれも昇華転写機ではなく「水系顔料インク機」というのが共通項です。

これまでも昇華転写でこういう DTMFが推進されてきましたが、ポリエステルに限定されていたところ、顔料によって天然繊維への選択肢が広がり、市場の立ち上がりに寄与することが期待されます。

2.EPSONヘッド搭載機が中国大手ブランドから登場



上の動画は深圳の FLORA、下の動画は北京の JHFのものです。両社ともかなり高速でプリントしている様子が見えます。が、まあよく見ると、FLORAのはドラフトモードと呼ばれるようなもので、実用になる画像かどうかは分かりません。JHFの方はそこそこまともな画像をプリントしています。

いずれも EPSONのヘッドとの相性を確認済の EPSONから供給されたインクで、EPSON推奨の駆動波形でプリントしているものと想像されます。それならこの速度を出すのは問題ないでしょう。

とはいえ注目しておくべきは、FLORAや JHFといった、中国では老舗メーカーから出展されたことです。昨年の APPPEXPO時点では、あまり名前を聞いたことのないような新興ブランドばかりでしたが、大手が(本格採用かどうかは別として)出展したのはそれなりのインパクトはあると思われます。

ただ、ここまでは比較的容易です。いわば Robusteliで Monna Lisaを立ち上げた時の様に、EPSONの技術をそのまま移植すれば完成度の高いプリンタのプロトは比較的短時間に出来上がります。課題はここから先でしょう。

Monna Lisaとの内部競合・・・あればあったで誰がどうどう捌くか?無ければ無いで、大したインパクトがなかったことになり、それはそれで問題。EPSONインクをいつまでも供給するのか?しないとすれば、サードパーティインクに対しても波形を供給するのか?京セラは波形はクローズド(ブラックボックス化)だが、EPSONは完全オープンなのか?条件付きオープンなのか?とすれば、その条件とは?

また、既に市場に流通している、所謂「剥ぎ取りヘッド」(安価なプリンタから剥ぎ取ったヘッド)をどうするのか?EPSONが純正品を本格販売するとハラを決めた以上は、なんらかの手を打つのだろうとは思われますが、それが中国市場にどういうインパクトを与えるのか?3月4~7日の上海APPPEXPOの視察は必須ですね・・・

3.京セラがブースを設置

これまでヨーロッパの InPrintや TheIJCなど、インクジェット技術に特化した展示会やコンファレンスへの出展や講演の事例は多かったと思いますが、プリンターの展示会で京セラがブースを持ったのは記憶にありません。これは、これまでにも増して積極的に市場を開拓していくという意思表示なのか、逆に危機感の裏返しなのか?

少なくとも、これまで高価格路線で、かつ波形を完全クローズドとして来た基本方針に対し、比較的安価な価格設定で、かつ(少なくともプロト出展に際しては)波形を公開・指導して中国老舗企業に食い込んだ EPSONに危機感を抱いたとしても不思議ではありません。

とはいえ、京セラが安価路線・波形公開にシフトするとは考えらえず、また EPSONも安価路線・波形公開・顧客支援で得られる成果が一兆円企業にどのくらいのインパクトを与えるのかをレビューしてその路線を維持するのかどうか・・・このあたりが、2020年のヘッドビジネスの関心事の一つとなるように思います。

4.SENSIENTがインクを含む非コア事業を売却の報道

2019年11月の上海TEXにおける Sensientブース

これに関しては別記事をご参照ください。

5.東伸工業 GINGA

バルセロナの ITMA2019でお目見えした東伸工業の「靴下プリンター」GINGAですが、今回はシリンダをやや大きくしてTシャツプリンタとして展示。通常のTシャツ印刷とは異なり、円筒形のボディをグルっとプリントできることを訴求。

この写真は上海TEXではなく、その直前に訪問したドイツの Multiplot社(東伸の代理店)のデモルームですが、ここではビール醸造所の販促物を試作しています。大型案件も進みつつあるようです。

6.出展していない大手企業がかなり多かった

今年は ITMA2019(バルセロナ)に予算を注ぎこんだということでしょうか?ここに居てもおかしくない大手メーカーの幾つかが出展をしていませんでした。HP・EPSON・SPG・DURST・ミマキエンジニアリング・・・

7.飽和したセラミック業界からテキスタイルにシフト

スペインの ITACA(セラミックプリンタ向けインクの有力インクメーカー)は顔料インクを、中国のセラミックプリンタの二大巨頭である「美嘉 MEIJIA」と「希望 HOPE」はプリンタを出展。

8.番外

あれ?SPG?(笑)

おや?REGGIANI?(笑)

関連記事

ページ上部へ戻る