山形大学:産学連携教授を拝命しました 2/4

酒井真理産学連携教授
インクジェット開発センター長

大野彰得

1/4からの続きです

うまく機能するんでしょうか?

大野:しかし、大学や学者さんって論文書いてナンボの世界でしょう?それを公開して引用される件数が多い方がエライ!みたいな(笑) 一方で、企業って技術を開発したら特許で守って、製品を開発して他社より優位に立って、雇用創出などで社会に貢献しつつも、最終的にはより多く利益を上げてナンボの世界ですよね?論文を公開したい大学と、特許を取得するまでは秘密にしたい私企業って、本質的に連携って出来るんですかね?
酒井:そこ、非常に重要なところなんです。大野さんが苦手な、先ほどの文科省の分厚い資料にも書いてあるんですが「オープンイノベーション機構は、大学における活動を、これまでの非競争領域から企業の事業戦略に深く関わる競争領域まで広げるものであり、企業から大学への投資3倍増を実現する上で必要不可欠な機能。」とあります。

大野:どういうこと?企業秘密の技術開発に、大学が論文も出さずに手を貸してくれると言ってますか?
酒井:一言で言い切ってしまえば、その通りです。そうじゃないと企業が本気で組んでくれないし、おカネも出してくれないでしょう?そこに踏み込んでやってもいいよ!やっていくんだよ!というのが趣旨なんです。

大野:ホンマですか?じゃ、それに関わった学者や学生って、何が成果になるんですか?論文を出せない枠組みに本気で協力しますかね?
酒井:シーズ志向とニーズ志向。企業の研究開発部門では、シーズ志向が否定されて短期的な成果が求められるテーマしか行えない、これが企業の閉塞感を生み出している一つの理由です。一方大学はシーズ志向で、興味本位の好き勝手な研究をしているとの批判もありますね。これらは、どちらも近視眼的であり、大局観が欠如しています。

大学は組織としてみた時に基礎から応用まで幅広い研究をしています。外部に公開できない企業との共同研究から新たなシーズテーマを見出して、それを大学内部で基礎研究として展開する、当り前のサイクルを行えば良いのです。

これまで企業は、このサイクルを自社の閉じた環境で進めることに拘ってきた例があります。わけの分からないノウハウを武器と勘違いして効率の悪い開発を進めてきました。価値の多様化した現代社会ではプロダクトライフサイクルの短期化による商品開発スピードが要求されます。内部リソースの活用だけでは対応が困難な開発をオープンイノベーションで進めましょうということです。

大野:論文数やその引用数で測れないとすると、学生や学者の業績評価を変えないと・・・なにか別のスケールも導入しないといけないですよね?企業では特許件数やその質に応じた報奨制度もありますし、技術屋さんでも新製品を世に出した貢献度などが評価されて出世にも結び付きますよね。大学関係者の場合は、そこはどうするんでしょう?論文を出さない研究者は評価されるんでしょうか?というのが、質問の趣旨です。当然、こらまでとは違うスケールも導入されるものと理解しますが、いかがですか?
酒井:形だけでなく、意識も変わることを求められているのですから、それは当然だと思います。既に山形大学では、外部資金の獲得数及び額、産業界からの研究費獲得数及び額、特許出願件数、研究成果の事業化の実績等を考慮した制度を運用してきています。

大野:なるほど。でも、「競争領域」は NDAとかをかなりしっかりやらんと企業は安心しませんよね?
酒井:勿論です。私もエプソンに長くいましたから、そこらへんの常識というか、企業が求めるだろうことについては十分理解しているつもりです。今回、大野さんに入って頂くのも、企業サイドでの経営経験を活かして頂くのを期待してのことです。

大野:企業では変人と見られていたと思いますよ(笑)そんなんで務まりますかね?(笑)
酒井:大丈夫です!Wikipediaのオープンイノベーションの項目に、まさしく「エプソンの花岡元社長によれば、イノベーションには変な人、尖った人、でしゃばる人が必要なのだという。このような、人材は異端児、未踏人材、とも呼ばれる」と書いてあります(笑)

大野:光栄です(爆笑)

3/4に続きます

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